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-分かってますか?何が問題なのか- ⑩「橋梁形式選定についての私見と担当技術者への願い」

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター 
上席研究員

髙木 千太郎

公開日:2016.02.01

1)鋼桁形式

 鋼桁橋で採用する床版は、費用算定を容易にするために非合成形式とし、橋長30mの場合は、支間長も30㍍、橋長100㍍の場合は、支間数を1~3とし、100㍍、50㍍、40㍍を条件に100㍍のみ鋼床版を採用、支間長別にI桁、箱桁として算出した。同様に、橋長400㍍の場合は、鋼桁の適用支間を考え、支間数を3~8とし、150㍍、110㍍、90㍍、50㍍の4パターンで工事費を算出グラフ化した。400㍍クラスの橋長で鋼桁方式となると、支間長が2番目に短い90㍍が単位面積当たり工事費が一番経済的となったが、径間数が増加するほど工事費が右肩上がりの傾向とはならなかったのは自分の予想とは反する結果となった。

2)PC桁形式
 PC桁については、短支間の場合はポストテンションT桁、50㍍を超える場合は、構造上箱桁とし架設方式を固定式支保工、若しくは片持ち架設とした。
 PC桁の場合、地盤条件が悪い(支持地盤が河床より40㍍下と仮定)こともあって、橋長30㍍では、鋼桁形式と比較して約6.1%単位面積当たりの工事費が増加する結果となった。同様に橋長100㍍では、3径間では僅かであるがPC桁形式が鋼桁形式と比較して安価となるが、支間長が長くなり箱桁での比較となると支間長50㍍で約21.3%PC桁が高価となる。橋長400㍍となると4径間のみ鋼桁形式と比較してPC桁が経済的となるが、他はいずれも鋼桁形式が経済的となる結果となった。これは、従来から言われているように支持層が河床から40㍍と深くなることで上部工の重量増が影響していることが明らかで、鋼桁形式を採用することが経済的であるとの結果となった。支持層が40㍍と深くなければ、当然PC桁が経済的となる。

3)鋼トラス形式

 鋼トラス形式の場合、橋長30㍍でトラス形式を採用することは不経済であり、一般的でないので除外し、橋長100㍍と400㍍を対象とした。100㍍では1径間で渡ると鋼桁形式より約3.0%、支間長50㍍で2径間となると10.5%高価となった。橋長400㍍では、最大支間長80㍍の5径間がトラス形式の中では一番経済的な支間割りとなった。トラス形式を採用する大きな理由がない限り、一般的には鋼桁形式の方が経済的となった。

4)鋼アーチ形式

 鋼アーチ形式の場合、橋長100㍍では2径間の場合トラス形式と比較して約16.0%ほど高価になるが、1径間の場合は0.1%と僅差となる。また、橋長400㍍では、トラス形式と同様に5径間が一番経済的となり、2径間の場合僅かではあるがアーチ形式の方が経済的となる結果となった。鋼トラスも鋼アーチも下路橋での検討であることから路面上に主構造が目立つ形式であり、ランドマークとして存在は大きいことを第一にすれば採用となるが、当初私が想定していたように一般的な鋼桁形式で河川を渡河する方が経済的な結果となった。

5)鋼斜張橋形式

 鋼斜張橋形式は、橋長100㍍では、支間割りから支間長50㍍で算出したがトラス形式の約80.7%増し、アーチ形式の約55.7%増しの結果となった。また、橋長400㍍の場合は、支間割りから斜張橋形式では5径間が一番経済的となるが、トラス形式より約30.4%、アーチ形式より21.3%割高となった。しかし、径間数が少なるとその際は僅かとなり、2径間では逆にトラス形式より約9.8%、アーチ形式より約9.3%経済的となり、斜張橋のような吊り構造形式が支間長が長くなることで優位となることが明らかとなった。
 以上が、橋長30㍍、100㍍、400㍍において鋼桁形式、鋼トラス形式、鋼アーチ形式、鋼斜張橋形式及びPC桁形式を想定した仮定条件の範囲で工事費を算出、単位面積当たりの工事費を比較した結果である。ここで明らかとなったことは、当然ではあるが、橋長30㍍程度では、支持層が深い場合は鋼桁、支持層が浅い場合位はPC桁が優位である。橋長100㍍となると、3径間でPC桁、2径間で鋼桁、鋼トラス、1径間となると鋼桁、鋼トラス、鋼アーチの順となる。荒川と中川を跨ぐような橋長400㍍の場合、径間数が多くなると当然桁形式が優位となるが、2径間と大きく支間長を取る必要のある場合は、鋼斜張橋が優位となる。ここで示すように、あくまで想定した条件ではあるが、かなりの精度で橋梁形式の絞り込みが可能となる。

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