道路構造物ジャーナルNET

【オピニオン】特殊高所技術について③

点検に必要な技術とは何か? 特殊高所技術は最後の切り札

一般社団法人特殊高所技術協会
代表理事

和田 聖司 氏

公開日:2015.07.01

点検に必要な資格やスキルは、実は曖昧
 技術者の囲い込みを始める高速道路各社

3.点検に必要なスキル
 10年程前のことになるが、補修時に損傷の発見が出来れば、維持管理に有効なのではないだろうか?ということで、足場鳶、塗装工に簡単な講習を実施することによって、点検補助を期待する声が上がった。 首都高速道路なども協力し、かなり大々的に行われていたと記憶しているが、今では噂すら聞かない。 例えば、国が管理する橋梁の維持管理では、点検→詳細調査→補修設計→補修という流れが一般的だろう。
 当時は、点検は、導入部分であり、求められる技術力や知識はそれ程高くないという判断だったのかもしれない。 しかしながら、現実はそれ程甘くない。国の橋梁定期点検では、1巡目において、点検精度があまりにもバラバラであったため、点検する側のスキルについて、問題視する声が今でも聞こえてくる。 昨年6月、10年ぶりに改訂された橋梁定期点検要領(平成26年6月)においても、点検に必要な資格やスキルは、実は曖昧だ。
 以前は財団法人海洋架橋・橋梁調査会(現在の一般財団法人橋梁調査会)が実施していた、橋梁点検技術研修の修了証が、あたかも橋梁点検者資格のような役割を果たしていたのは記憶に新しい。要するに明確な基準が存在しなかったということになる。では、今、点検に必要なスキルとはどういうものなのだろうか?
 各高速道路会社などは、自社の点検に必要な点検員に対して、資格制度を強化するなど、技術者の囲い込みを始めている。 国土交通省は、民間資格の登録制度を検討するなどの方向性について検討を始めた。一方で、岐阜県などは、昨年から、15メートル未満の小規模橋梁について、点検から補修計画、工事までを一括委託する事業を試行している。これらの試みに見られるように、点検する目的が、「点検したという事実を作ること」というような時代は終わったのだと思う。
 例えば、阪神高速道路や、首都高速道路の点検では、鋼製橋梁の塗膜割れ箇所に対して、点検時に渦流探傷試験や、磁粉探傷試験など、非破壊検査が実施されている。 民間事業者の維持管理は、導入部分から、明らかに補修に直結する情報を持ち帰ることを目的として実施されているということだ。 点検員はもちろん非破壊検査資格を有していなければ話にならない。 
 現実的には、道路構造物の維持管理において、特殊高所技術者に求められているスキルも近接さえ出来れば良い、写真が撮れたらそれで良いというような低いオーダーではないということになる。 

写真-1 渦流探傷試験状況

人不足、技術力不足、予算不足
 地方公共団体を覆う三つの課題

4.最後の切り札
 工期の問題、安全性の問題、法律的な問題、実は、様々な問題が、維持管理には付きまとっている。 とはいえ、現実的な問題として、社会インフラの老朽化は止まらない。上記のような問題に加え、地方公共団体では、更に、三つの課題が指摘されている。
 人不足、技術力不足、予算不足だ。これら三つの課題によって、点検が進まない、点検結果の妥当性が確認出来ない、適切な修繕等が実施出来ないという現状がある。 昨年より、地方公共団体のこれら3つの課題(人不足・技術力不足・予算不足)に対して、国が各都道府県と連携して、支援方策を検討するとともに、それらを活用・調整するため、「道路メンテナンス会議」を設置することとなった。 「道路メンテナンス会議」は、下部組織に「跨道橋連絡部会」を設置し、鉄道線路を跨ぐ跨線橋については、各地方公共団体が個別に実施していた鉄道事業者との協議などを整備局がまとめて窓口となるなど、これまで点検が困難であった、跨線橋、跨道橋についても支援方策を模索している。
 しかし、これらの維持管理について、ハードルは決して低くはない。 問題は山積みだが、跨道橋、跨線橋も、5年に1度の近接目視を実施する対象となっており、現実的に、跨道橋、跨線橋の点検は徐々に増加している。 鉄道線路を跨ぐ跨線橋の場合、終電が通過した直後から始発までの間に点検を実施する必要がある為、短時間で作業を終えなければいけないわけだが、「特殊高所技術」が活用される以前は、この短い時間で足場の仮設を行い、点検し、その日のうちに撤去するということを行っていたと聞く。 この方法で実施した場合、一夜間の中で、点検に費やせる時間は僅かであることは想像に難くない。

特殊高所技術は最後の切り札

 橋梁点検を1橋完了する為には、何夜間も必要となるため、橋梁の規模の割に費用は膨大になる。 軌陸車と呼ばれる線路上で使用可能な高所作業車が使用されることもあるが、過去に転倒事故が多発したこともあり、跨線橋点検での使用を鉄道事業者が認めないことが多い。 東海道本線など夜間も貨物列車が通過するような路線の場合、作業可能時間が1時間程度しかない区間もあるため、従来技術では点検が出来ないという場所も少なくはない。 このように従来技術では近接が不可能であった対象構造物への近接が「特殊高所技術」を活用することで可能となる。 以前、ある国道事務所の職員の方から、「国土交通省にとって、特殊高所技術は、最後の切り札です。」と言っていただいた。 大変嬉しかったため、この言葉は、今でも忘れることが出来ない。 

写真-2 超音波ひび割れ深さ測定状況

5.維持管理費の急激な増加
 我が国の橋梁(橋長2㍍以上)は現在約70万橋存在すると言われており、その大半は高度経済成長以降に建設されている。 平成25年時点で建設後50年を超えた橋梁(橋長2m以上)の割合は18%、これが、10年後には43%、20年後には67%と急激に増加する。 維持管理及び更新にかかる費用も莫大な金額になることは容易に想像出来るだろう。 平成23年度国土交通白書によると「2037年時点で維持管理・更新費すら賄えなくなる可能性がある。」と発表していた。これは古いデータによる試算であり、現時点で国交省が同じ見解を示しているわけではないことを付け加えておく。 しかしながら、それほどに維持管理及び更新費用は莫大だということになる。
 今年の5月28日、国土交通省国土審議会計画部会において、第5次国土利用計画の原案が提示された。 本格的な人口減少下において、初めて策定された計画であり、人口減少社会における国土の適切な管理のあり方を構築するということが基本方針の一つにあげられている。この計画案の中で、以下の表の通り、平成37年時点の利用区分別面積の目標値が記載されている。 

表-1 第五次計画目標値(案)

 人口減少下においても、道路面積は増加するという方向性だ。これら道路構造物の莫大な維持管理費の一部についてではあるが、「特殊高所技術」を活用することによってコストの縮減が可能となるだろう。

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