道路構造物ジャーナルNET

東日本高速道路 維持管理リレー連載⑤

関東支社管内の高速道路における橋梁の劣化と維持管理

東日本高速道路株式会社
関東支社
技術部 構造物指導担当専任役

鈴木 裕二

公開日:2015.03.20

 3.長大橋の補修補強・耐震補強

 関東支社管内における橋梁においても、これまでに震災対策を実施し、下部工の耐震補強が完了したところである。
 その中で、高橋脚かつ鋼トラス形式である片品川橋(写真―9参照)については、その構造特性から橋梁全体の耐震性を確保する必要があり、下部構造の耐震補強工事に引き続き上部構造に対する耐震補強工事に着手している。特殊橋梁や長大橋梁は一般に橋梁規模が大きく、地震による被害を受けた場合の応急復旧や本復旧が容易ではないことが考えられるためである。
 片品川橋は、上部構造は上下線一体の2主構で主構間隔が16㍍、主構高は14㍍から最大25㍍のトラス形式であり、下部構造はほとんどの橋脚が60㍍を超える高橋脚を有する大規模な橋梁である。支承構造を鋼製支承からすべり支承(鉛直支持)と免震支承(水平支持)に交換して作用地震力を低減させるとともに、一次部材は部材補強、二次部材に制震部材を組み込むことで耐震性能を確保する構造とした。二次部材に使用する制震部材には採用実績の多い座屈拘束ブレースではなく、新たな制震装置(摩擦履歴型制振装置:ブレーキダンパー)を採用している。図-10に示すように、ブレーキダンパーは制震部材となる摺動部を検査路の近くに配置することが可能であり、常時および地震時の点検性に優れること、塑性変形が生じた場合は揺動部の位置修正で対応可能であり、制震部材の交換が不要であること等の維持管理の容易さ・確実性においてメリットがあったためである。

 


            写真―9 片品川橋遠景                 図―10 ブレーキダンパー取付図

 

  4.おわりに

 点検、調査、設計及び工事の実施、管理には十分な技術力が求められるが、損傷のある構造物の診断をする際は特に重要である。例えばコンクリートのひび割れを発見した時、おかれた環境条件を理解し、その原因を推定し、構造物の安全性に直結するような重大な損傷なのか、それとも、長期的には補修が必要であるが緊急性がないものかを判断する必要がある。それらを判断できる技術者を育てていかなければならない。また、補修・補強を行うには建設の設計や品質管理についての知識が必要であり、そういった側面からも新規建設担当の若手職員が現場で十分に知識が得られるような研修・指導も行っていく必要がある。
 一方、保全に関する技術開発も推進していかなければならない。水をうまく処理することは長期耐久性に重要なテーマであるため、今後とも継続して地道な技術開発をしていきたい。そして、お客様が安心して高速道路をご利用していただくために、橋梁構造物を健全な状態に保つのは我々の使命であり、今後ともそういった努力を続けていきたいと考えている。

 

【参考文献】
・既設小遊間橋梁に対する遊間部止水工の開発と施工について  鈴木裕二 上楽知史 蔭山知 片島大志 佐伯浩二 清水尚志 土木学会年次学術講演会講演概要集2010年
・床版連結工法によるノージョイント化の検討  鈴木裕二 東田典雅 元木修 宇山友理 土木学会年次学術講演会講演概要集2010年
・新型埋設ジョイントの開発について 鈴木裕二 東田典雅 細矢淳 末光功冶 土木学会年次学術講演会講演概要集2012年
・鋼単純桁連続区間における床版連結工法の適用 ―東関東自動車道 寒風高架橋における連結部の応力測定結果― 鈴木裕二 東田典雅 伊藤淳之介 細矢淳 土木学会年次学術講演会講演概要集2012年
・鋼単純桁連続区間における床版連結工法の適用 ―東関東自動車道 寒風高架橋における施工― 鈴木裕二 東田典雅 伊藤淳之介 細矢淳 土木学会年次学術講演会講演概要集2012年
・既設橋の桁端漏水対策について 鈴木裕二 東田典雅 清水尚志 土木学会年次学術講演会講演概要集2012年
・新型埋設ジョイントの耐久性試験結果について 鈴木裕二 細矢淳 保木浩幸  土木学会年次学術講演会講演概要集2013年
・関越自動車道 片品川橋 鋼トラス上部工の耐震補強 塩畑英俊 山口恭平 鈴木雄吾 金田和夫 土木学会年次学術講演会講演概要集2013年
・ファイバーモデルを用いた鋼トラス上部工の動的解析手法(関越自動車道片品川橋) 高久英彰 鈴木雄吾 金田和夫 松下裕明 樫本修二 土木学会年次学術講演会講演概要集2014年

 

・鋼単純桁連続区間における床版連結工法の適用 ―東関東自動車道寒風高架橋―  鈴木裕二 東田典雅  伊藤 淳之介 細矢 淳 橋梁と基礎2012.7
・既設橋の桁端漏水対策  鈴木裕二 東田典雅 清水尚志 橋梁と基礎2012.11
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