道路構造物ジャーナルNET

3カ所で実曝、10年間追跡調査

実環境でのシラン系表面含浸材の効果の持続性について考える

独立行政法人※土木研究所 
(※)2015年4月1日より国立研究開発法人へ移行
寒地土木研究所 耐寒材料チーム
研究員

遠藤 裕丈 氏

公開日:2015.03.01

 無塗布区間では隅角部付近に大きなスケーリング
 シラン系表面含浸材がスケーリングを抑制

 次に、構造物で行っている調査の結果について示します。
 写真-4は塗布から4年目、10年目に撮影した美幌の一般国道道路橋の地覆の外観です。4年目の写真をみますと、シラン系表面含浸材の効果によってスケーリングが抑制されていることが明らかにわかります。10年目の写真をみますと、無塗布区間では隅角部付近に大きなスケーリングが発生・進行していることが確認できます。一方、塗布区間については、隅角部ではこのような劣化は確認されませんでしたが、軽微なスケーリングが部分的にみられます。


 図-3 塩化物イオン量測定結果(美幌、地覆)

 

 塩害にも効果
 10年経過しても抑制効果を維持

 図-3は塗布後6、10年目に調べた美幌の道路橋地覆の塩化物イオン量です。無塗布区間では塩化物イオン量が経年増加しており、10年目の段階では深さ約3㌢まで浸透していることがわかります。これに対して塗布区間では、10年目の調査において軽微なスケーリングの発生が確認されましたが(写真-4)、塩化物イオン量については6年目、10年目のいずれも極めて少なく、10年経過した現在も塩化物イオン浸透抑制効果が続いていることがわかります。


写真-5 塗布後10年目の美幌の地覆から採取したコアの側面に水を噴霧した様子
(表面付近に厚さ1cmの吸水防止層が見える)

 

 吸水防止層は約10年間消失せずに残存

 写真-5は、塗布後10年目の美幌の地覆から採取したコアの側面に水を噴霧した様子を撮影したものです。表面から厚さ1㌢の範囲が撥水しています。このことから、塗布によってコンクリートの表層に形成された吸水防止層は約10年間、消失せずに残存し、塩化物イオンの浸透抑制に大きく貢献したと評価できます。

 

          
      図-4 ライフサイクルコストの試算(美幌の地覆)

 

 図-4は本稿で示した結果をもとに、鉄筋の保護に着目して試算した美幌の地覆のライフサイクルコストです。部材の供用年数は100年としています。無塗布の場合は供用の途中で塩化物イオン量が発錆限界に到達し、部材の打換えが必要となります。一方、塗布した場合、スケーリングの進行を抑制および吸水防止機能を保持するための再塗布のインターバルを例えば10年以上に設定しますと、供用当初は塗布作業に要するイニシャルコストがかかりますので無塗布をやや上回りますが、長期的には無塗布を下回り、100年後には無塗布に比べると3.5~6割のライフサイクルコストの縮減が期待されます。

 


            写真-6 むかわの道路橋剛性防護柵の外観

 

 写真-6は供用開始から8.5年が経過したむかわの高規格幹線道道路橋の剛性防護柵の外観です。無塗布区間の剛性防護柵をみますと、下方の斜面部分にはスケーリングが広範に発生しています。また、上方部分には薄皮の剥げ落ちによる荒れや水垂れによると思われる黒っぽい汚れがみられます。これに対して塗布区間の剛性防護柵は、無塗布区間に比べますと表面の荒れは小さく、全体的に美観が保持されていることがわかります。なお、コアを採取した後の孔穴を調べたところ、厚さ約5㍉の吸水防止層が観察され(写真-7)、むかわにおいても吸水防止層の残存が確認されました。

 


    写真-7 むかわの塗布区間からコアを採取した後の孔穴の様子(8.5年目)

  図-5 塩化物イオン量測定結果(むかわ、剛性防護柵)

 

 図-5は8.5年目に調べたむかわの道路橋剛性防護柵の塩化物イオン量です。増毛、美幌の結果と同様に塗布区間の方が極めて小さく、効果が持続していることがわかります。なお、前述したように、本橋は直線橋で融雪水が滞留しにくく、また、塩化物イオンの供給時期が冬期に限られることもあって、無塗布区間の塩化物イオン量は増毛、美幌に比べると小さくなっています。しかし、増毛、美幌で得た結果に鑑みますと、塩化物イオンの供給が多い高規格幹線道におきましても、吸水防止層が残存していれば効果は期待できると考えられます。

 

 -20℃の極寒地でも効果持続
 塩化物イオン量はきわめて少なく、凍害も遅い傾向

 以上の内容を整理しますと、水中に浸かることはないものの海塩の飛来もしくは凍結防止剤を含む融雪水の飛沫を受け、冬期は約-20℃まで低下するような寒冷地に立地する部材(道路橋の地覆や剛性防護柵など)においては、劣化が発生していない段階で北海道開発局道路設計要領の仕様[3]を満足する製品を正しく選定・塗布することにより、吸水防止層の残存が前提となりますが、少なくとも約10年間の効果の持続が現実的に期待できると言えます。また、本稿で紹介した調査箇所では、約10年経過した現在においても塗布した方が塩化物イオン量は極めて少ない上、外見上の凍害の進行も遅い傾向を示しており、効果はさらに長く続くことが期待されます(これについては、今後も追跡を続ける予定です)。
 もちろん、シラン系表面含浸材の効果は、製品の種類、コンクリートの品質、構造物の形状、部材が曝される環境など、種々の条件に依存します。本稿で紹介した内容はあくまでも一例ですが、置かれる環境が本稿の事例に近い部材への適用を検討されている管理者の方が効果の持続性を考える上で少しでも参考になれば幸いです。

 

【参考文献】
[1]遠藤裕丈、島多昭典:寒冷環境下における約10年間のシラン系表面含浸材の効果に関する追跡調査、第58回(平成26年度)北海道開発技術研究発表会発表概要集、2014.2
[2] 気象庁アメダス、2013.11~2014.3
[3]北海道開発局道路設計要領、第3集橋梁、第2編コンクリート、参考資料B

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