道路構造物ジャーナルNET

3カ所で実曝、10年間追跡調査

実環境でのシラン系表面含浸材の効果の持続性について考える

独立行政法人※土木研究所 
(※)2015年4月1日より国立研究開発法人へ移行
寒地土木研究所 耐寒材料チーム
研究員

遠藤 裕丈

公開日:2015.03.01

 美幌では道路橋の地覆を調査
 むかわでは剛性防護柵を調査

 美幌では、一般国道の道路橋の地覆において調査を行っています。冬期は路面に凍結防止剤が散布されています。2004年10月に実施された地覆の打換え工事にあわせて、打換えられた地覆(水セメント比57%、普通ポルトランドセメント使用)にシラン系表面含浸材を塗布しました(写真-2)。コンクリートの養生終了から塗布までの期間は約2週間です。
この橋は緩やかな曲線橋で、横断方向には塗布した地覆に向かって約4%の片勾配がついています。このため、道路側の垂直面の下方に雨水や融雪水が集まりやすい環境にあります。
 むかわでは、高規格幹線道の道路橋の剛性防護柵において調査を行っています。美幌と同様、冬期は路面に凍結防止剤が散布されています。剛性防護柵は道路建設期間中の2003年10月に新設されました(水セメント比53%、高炉セメントB種使用)。それから2年後の2005年10月にシラン系表面含浸材を塗布しました(写真-3)。そして2006年3月に高規格幹線道の供用が開始され、現在に至っています。
 この橋は直線橋で、横断勾配は中央部を頂点とする2%勾配となっています。なお、剛性防護柵と路面との間には幅100㍉、深さ40㍉の排水用の溝が延長方向に設けられています。そのため融雪水は滞留しにくく、主に車両通過時に発生する凍結防止剤を含む融雪水の飛散を受ける環境にあります。


      写真-2 美幌の一般国道道路橋地覆での塗布の様子

   写真-3 むかわの高規格幹線道道路橋剛性防護柵での塗布の様子

本稿では、この3箇所において約10年目までの塩化物イオン浸透抑制効果を調べた結果について主に示します。調査は、北海道開発局道路設計要領の仕様(水セメント比55%のコンクリートにおいて、シラン系表面含浸材が6㍉以上含浸し、かつ、塗布したコンクリートを濃度3%の塩化ナトリウム水溶液に63日間漬けた際の塩化物イオンの浸透深さが3㍉以下にとどまること)[3]を満足するシラン系表面含浸材(無溶剤系、有効成分量90%、塗布量400㌘/平方㍍)を塗布した区間と、比較対象である無塗布の区間において行いました。


  図-2 塩化物イオン量測定結果(増毛、暴露供試体)

 はじめに、増毛で行っている暴露実験の結果について示します。
 図-2は暴露開始から2、4、8年目に調べた塩化物イオン量です。無塗布をみますと、深さ0.5㌢の塩化物イオン量は暴露開始から2年目にかけて急速に増加し、2年目から8年目にかけて微増傾向を示しています。深さ1.5㌢の塩化物イオン量は2年目から4年目にかけてやや多く増加しています。一方、塗布した供試体の塩化物イオン量は、2年目は深さ0.5㌢が1㌔㌘/立方㍍程度、深さ1.5㌢以降は極めて少なく、この傾向は8年経過した現在も続いていることがわかります。


       写真-4 美幌の道路橋地覆の外観

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