道路構造物ジャーナルNET

東日本高速道路 維持管理リレー連載④

新潟支社管内の高速道路における橋梁の劣化と維持管理

東日本高速道路株式会社 新潟支社
技術部
上席構造物指導役

東田 典雅

公開日:2015.02.16

4.新技術・新材料による補修事例

4.1 プレキャスト埋設型枠(スマートウォール)による壁高欄の補修
 凍結防止剤による塩害で損傷した壁高欄の補修は、劣化部分のコンクリートをWJではつり、PCMや防錆剤混入モルタルによる断面修復後、コンクリート塗装等を行って補修するのが一般的である。新潟支社では、これに代わる工法として、表面に塗装を施した厚さ3㌢のプレキャスト製のRCパネル(スマートウォール)を設置し、内部にグラウトモルタルを充填して一体化を図る工法で補修を行っている(写真-10)。この工法は、工場製作のパネルを使用することから高品質で工期短縮、本線の車線規制期間の短縮、コストの縮減が可能な工法であり、トンネル監視員通路側壁の補修にも採用している。


                          写真-10 スマートウォールの施工状況

 4.2 桁端小遊間部、桁下狭小部の補修
 伸縮装置からの凍結防止剤の混入した漏水により桁端部の塩害が顕在化しており、これらの補修は、図-7に示すように止水対策、桁下、桁端遊間部の補修を可能な限りセットで行うようにしている。遊間が狭い場合や桁下空間が狭小な場合の補修は、困難を極め、これまでは補修できないケースも見受けられた。


                   図-7 桁端部の補修イメージ図

 桁端小遊間部の補修において、伸縮装置本体の交換と合わせて補修を行う場合は、東北支社で開発したNSRV工法(リレー連載③)による補修が効率的であるが、伸縮装置本体が健全で取替えの必要がない場合や長時間の車線規制が困難な場合もある。このため、新潟支社では、20㍉以上の狭小な遊間部の調査・補修を、車線規制を行わず橋梁側面から行う「桁端小遊間部調査・補修システム」をグループ会社と共同で開発し、実橋での試験施工を完了している。
 図-8に桁端小遊間部の調査・補修の流れ、写真-11、12に調査状況を示す。各種調査を行い補修範囲やはつり深さを決定した後、WJ工法により劣化部をはつり(写真-13)、鉄筋防錆剤(塩分吸着剤入りポリマーセメント系鉄筋防錆剤)を鉄筋およびコンクリート表面に吹付け、遊間部に型枠設置後、断面修復材を注入し、表面被覆(含侵材塗布)を行って補修が完了となる。本システムは、実橋試験施工において他橋への展開が可能であることを確認しており、今後、継続的な改良を行いながら、本格的展開を図っていく予定である。>


  図-8 桁端小遊間部の調査・補修の流れ         写真-11 小遊間部のカメラと撮影画像

      写真-12 小型照合電極による自然電位調査

                写真-13 桁端小遊間部のはつり状況(左)と断面修復材充填状況(右)

 桁下狭小部の補修は、「桁下狭小部補修システム」(写真-14)により補修を行っている。本システムは、最小12㌢まで対応可能な狭小部用XY2軸式のWJはつり装置により劣化部のコンクリートを除去し、ノズル角度が可変調整可能な狭小部用湿式吹付けノズルを用いてPCMを吹付けて断面修復を行う補修システムで、既に多くの補修実績がある。


                                   写真-14 桁下狭小部補修システム
 狭小遊間部の止水対策は、上記システムで補修を行った場合は、小遊間止水工(リレー連載①)により止水を行っている。ジョイント交換が必要な場合は、ノージョイント化、鋼製製品ジョイント(二重止水構造)への交換について検討し、現地条件に最適なものを採用している。管内のノージョイント化の実績としては、NEXCO中日本と中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋が開発した、RC連結部材(標準部材厚80㍉)で床版とパラペットを連結するRC連結ジョイント、NEXCO東日本が開発した、橋梁上部工の床版をパラペットまで延長して伸縮装置をなくしたミニ延長床版の採用実績がある。

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