道路構造物ジャーナルNET

東日本高速道路 維持管理リレー連載②

北海道の高速道路における橋梁の劣化と維持管理

東日本高速道路㈱ 
北海道支社 
技術部 上席構造物指導役

村山 陽

公開日:2014.12.16

3.北海道支社管内の橋梁の変状・損傷状況と対応

3.1. 変状の状況
 北海道支社管内における平成25年度の橋梁の変状判定区分がA1(変状が進行しており構造物等の性能低下の影響が高い)以上の箇所数の部位別割合を図-6に示す。上下部工の変状が50%を超えている。上下部工の変状の大きな要因は漏水である。この漏水の原因となっている伸縮装置及び排水管の変状がそれぞれ25及び9%であり全体の34%を占めている。

 

 


                          図-6 変状発生部位の割合

 

3.2. 桁端部の損傷と対応
 伸縮装置、排水管の変状の大部分が漏水を伴っている。凍結防止剤の漏水により上部工、下部工、支承周辺、検査路等の塩害が著しくなっている。また、これらの漏水に加え、壁高欄の隙間、上下線の隙間からの漏水や排水管流末不備により橋梁が塩害を受けている。
 更に、漏水により、下部工天端に滞水し、これが原因で凍害も発生している。
 桁端部における伸縮装置や排水管からの漏水イメージを図-7に示す。これらによる損傷状況写真を図-8に示す。

 

                図-7 桁端部(橋台部)付近の漏水



          (a)排水管の損傷                             (b)支承の損傷



        (c)上部工桁端部の損傷                         (d)下部工の損傷
                              図-8 損傷状況写真

 

 一般には、損傷したコンクリートについては、内部塩分量調査を行い、調査結果に基づき断面修復等の補修を行う。断面修復に使用する材料は、亜硝酸リチウムや塩分吸着材を混入させたモルタルである。一方、パラペットと上部工の隙間のように補修する部位が非常に狭い箇所は、補修することが難しく、或いは現状の機材では補修出来ない場合もあり、今後、狭小部の補修方法の更なる開発が望まれる。
 鋼桁については塗替塗装するが、減肉が著しい場合には、部材の取替えや補強を行う。
 ところで、桁端の劣化対策として、損傷した橋梁の各部位を補修することも重要であるが、漏水を徹底的に防止することが最も効果的で重要と考える。劣化の原因となる漏水を放置すると、補修した部位が再劣化することにもなる。
 具体的な漏水対策としては、伸縮装置からの漏水に対して、非排水構造とするため、損傷している止水材や樋を再施工する。この際、樋からの水が橋梁の各部位に当たらないよう、流末を確実に整備する必要があり、図-9に示すように近傍にある排水管に接続するか、下部工下にある用排水工まで導いている。また、壁高欄の隙間、上下線の隙間からも水が回り、張り出し床版等に損傷をあたえるので、この隙間も止水対策をする必要がある。図-10に上下線の隙間からの漏水、図-11に壁高欄の隙間の漏水対策を示す。

 


            図-9 伸縮装置排水樋の流末            図-10 上下線の隙間からの漏水

           図-11 壁高欄の漏水対策

 

3.3. 鋼橋RC床版の損傷と対応

 凍結防止剤による塩害は、伸縮装置等からの漏水ばかりでなく、舗装からの浸透により床版においても発生している。従来、RC床版の劣化現象としては,主に交通荷重の作用による一種の疲労劣化が問題となっていた。この劣化現象は比較的建設年次が古く、概ね昭和45年以前に建設された橋梁で頻発するようであった2)。北海道支社においては、そのように古い橋梁は無いものの、凍結防止剤による床版上面のかぶりコンクリートの剥離やこれに起因した舗装のポットホールが多数発生する傾向にある。この劣化現象は,従来の交通荷重の作用による疲労劣化形態とは異なり、劣化の発生が床版上面に限られている。このため、床版下面にひび割れや遊離石灰が析出しない場合でも、上面からの劣化は進行している可能性がある。
 このような床版の内部塩分量を調査すると、鉄筋の発錆限界イオン濃度以上であることが確認できる。舗装補修の際に、舗装をはがして初めて発見されることもあり、従来の対応では維持・管理上の問題が生じている。舗装上から、床版上面の損傷状況を高精度で把握できる手法の開発が望まれる。
 図-12は、道央自動車道 江別東IC~岩見沢IC間に位置する千歳川大橋(鈑桁)において舗装を切削した後のRC床版上面の写真である。床版上面のコンクリートが土砂化している。本橋は、累積凍結防止剤散布量が1,000t/㌔を超えている区間に位置している。舗装にポットホールが頻発したことから、パッチング等により応急的な部分補修を行っていた。平成25年に舗装補修工事より舗装を切削した際、広範囲に床版の損傷が確認され、床版の各種調査を行った後、仮舗装で舗装を復旧した。調査は床版上面の目視、打音調査、塩分量調査、鉄筋腐食調査等を行い、床版補修方法を決定するための資料とした。このとき舗装切削したのは、走行車線であるが、ポットホールの発生状況、床版塩分量、舗装面から実施した電磁波レーダ等による調査結果から、追越し車線も損傷が大きいと判断し、両車線とも補修を行うこととした。平成26年に再度舗装を切削し、床版の補修を実施した。本橋の補修は、床版下面の劣化が小さかったことから、上面をウォータージェットではつり、断面修復することとした。はつり面より下の床版内には塩化物イオンが残留していることから、再拡散により、鉄筋付近の塩分イオン濃度が、鋼材腐食発生限界イオン濃度を超えることも予想された。塩分を完全に除去するため、より深くウォータジェットで床版をはつることも考えられるが、補修費用が大きくなること、交通規制時間が長くなることなどが予想された。よって、床版のはつり深さは、新旧コンクリートを一体化させることを目的とし、断面修復材の骨材が主鉄筋下面まで回る位置とした。残留する塩化物イオン対策は、断面修復材や鉄筋防錆に塩分吸着材(SSI工法)を採用した。

 


                     図-12 床版上面損傷状況

 

 また、鉄筋も腐食していたことから、腐食している鉄筋の横に同径の鉄筋を配置し補強した。床版修復後、グレードⅠの床版防水工3)を実施し、舗装を施工している。図-13に床版上面補修の断面、図-14に施工状況写真を示す。

 

                              図-13 床版上面補修断面図

        (a)新コンクリート打設状況                      (b)床版防水工施工状況
                             図-14 床版上面補修施工写真

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム