道路構造物ジャーナルNET

―忍び寄るインフラの崩落の危機―

道路橋の現状と課題

公益財団法人 東京都道路整備保全公社
一般財団法人 首都高速道路技術センター

髙木 千太郎

公開日:2014.09.29

腐食と塗装劣化
漏水箇所付近で損傷

3.鋼道路橋の腐食

 国内の鋼道路橋に発生する最も多い損傷は、腐食と塗装劣化(防食機能の劣化)である。腐食で安全性に影響の多い断面欠損につながる損傷箇所は、伸縮装置や支承周辺の桁端部、床版損傷部および排水装置損傷部からの漏水箇所付近である。東京都の定期点検結果を分析してみると、Cランク(やや注意:5段階評価の中位)の損傷内訳は鋼材の腐食が最も多く、全体の約50%と約半数を占めている。
 次に、Dランク(注意:5段階評価の下から2番目)の損傷内訳となると、やはり最も多い損傷が腐食で約60%占める割合が10%増加する。腐食の原因はある程度限定され、当然飛来する海塩粒子の影響もあるが、重大な断面欠損につながる腐食となると、付着した塩分や融雪剤および塵埃などが雨水で洗い流されにくく堆積するような部位の腐食が著しい結果となっている。ここに示すように、鋼道路橋に発生している代表的な損傷である腐食は、原因も損傷程度も明らかとなっていることから適切な対策は容易である。対策を具体的に示すと、水はけが良く、塵埃等の堆積しない水はけの良い構造の採用、周辺環境に対応する適切な防食法の適用、環境変化と現況を把握する適切な頻度の点検・診断そして損傷を未然に防ぐ日々の維持管理である。

修繕計画策定で満足してはならない
計画の実行と知見に基づいた見直しが必要

4.放置型管理になっているのでは

 道路橋は、道路ネットワークの要であり、重要な都市基盤施設として種々の機能を果たすとともに、地域のランドマークともなっている。橋梁は、人間と同じように専門医による適切な診察、診察結果を基に行われる診断、そしてその後の処置によって、その寿命は大きく変わることとなる。橋梁の場合も同様である。供用している橋梁の健全性を適切に評価するための点検・診断、診断の結果必要となる塗膜の塗り替えなど防食機能回復、疲労損傷を防止するための構造の改善、環境の変化に対処する補修・補強などを効果的に行うことで、橋梁の寿命を限りなく延ばすことが可能となる。
 しかし、適切な点検を行わない、実態を無視した不適切な対策を行うなどすれば、橋は予想もしないような短命でその一生を終えることになる。これまで国内で発見された重大な橋梁の損傷と発生した状況を確認すると、いずれも点検もしくは住民等の通報で損傷が発見され、幸いにも事故を未然防止でき海外のような崩落事故には至っていいない。しかし、橋梁長寿命化修繕計画策定事業が平成19年以降にスタートして以降の状態は、果たして以前より良くなっているのであろうか?私は、一抹の不安を抱いている。

端部は鋼、コンクリート部材とも損傷を被りやすい

 それは、橋梁の修繕計画を策定したことで多くの管理者は満足し、計画で示した対策も行わずに義務を果たしたような考え方になっているのではないだろうか。もしそうであれば、最悪の放置型管理である。「インフラ崩落の危機」となる最悪の事態を避けるにも、今まさにインハウスエンジニアを中心とした適切な維持管理に向けた体制づくりと計画の着実な実行だけでなく、新たな近接目視で明らかとなった判断を加味した計画の見直しを行うことがわれわれ専門技術者の責務である。(続く)

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