―忍び寄るインフラの崩落の危機―
道路橋の現状と課題
公益財団法人 東京都道路整備保全公社
一般財団法人 首都高速道路技術センター
髙木 千太郎 氏
市町村(政令市含む)が全体の4分の3
国内橋梁の管理割合
2.道路橋の現状と通行規制橋の増加
国内で管理されている供用中の道路橋は、約69万9千橋(平成25年4月現在)であるが、管理者別の割合としては、国、高速道路会社が43,660橋の6.2%、都道府県が129、916橋の18.6%、技術者不足が大きな問題となっている政令市と市町村が525,661橋の75.2%である。これら道路橋の建設後経過年の平均は、高速道路会社の管理橋が約29年、国が35年、都道府県・政令市が38年、市町村が35年と都道府県の平均年齢が一番高くなっている。
次に、私が疑問に感じ始めた道路橋の老朽化である。国内の道路橋において建設後50年を超える橋梁の割合は、建設年次不明の40%を除くと、現在16%であるが、10年後には40%、20年後には65%と急速に老朽化が進むとしている。確かに、物が朽ち果てる現象である老朽化が道路橋の現状を示すのであるならば、致命的な劣化による変状が種々な部材に起こり、安全性や使用性が危惧される事態となるのは当たり前である。しかし、専門技術者が知恵を絞って設計し、愛情を持って施工した橋梁が人間の平均寿命(2013年国内の平均寿命:女性が86.61歳、男性が80.21歳)の6割程度で朽ち果てる状況と果たしてなるのであろうか? はなはだ疑問が残る。
致命的な損傷が生じている橋梁
通行規制以上その措置橋梁は2,104橋
しかし、起こっている現象は問題の多い致命的な損傷が多い。具体的には、著しい腐食による鋼部材の大きな断面欠損、ひび割れ、剥離が著しいコンクリートと真っ赤に錆びて露出する鉄筋やシース、自立も不可能なほど欠損が著しい基礎杭など機能回復の措置が全くできそうもない橋梁の存在である。
鋼材の腐食
コンクリート剥離などが目立つ橋梁
国の公表資料によると、地方公共団体において通行車両の重量等の通行規制や通行止めとなっている道路橋は、平成20年4月に977橋であったのが、5年後の平成25年4月には2.15倍の2,104橋である。車両の通行を規制する影響は、当該橋梁の修繕費用よりも周辺に与える影響の方が大きくなることを忘れてはならない。道路橋の鋼斜材破断事故の代表事例としてよく取り上げられる木曽川大橋の場合は、復旧作業による車線規制が19週間にもおよび、約7km上流の東名阪自動車道、約5㎞上流に国道1号および約3㎞下流に伊勢湾岸自動車道が代替路線として機能したにもかかわらず、交通渋滞によって当該地区の社会経済活動に大きな影響を及ぼす結果となった。車線規制でなく通行止めともなるとその影響は計り知れない。世界に衝撃が走ったアメリカ合衆国のミネソタ州・ミネアポリスの橋梁崩落事故の場合、約16ヶ月通行止めとなったことで崩落した橋梁のバイパスとして他のインターステート道路が機能したにも関わらず、社会的損失額が6,000万ドルにも及ぶ結果となった。ここに事例としてあげた道路橋はいずれも鋼橋であるが、鋼橋は耐久性に乏しいとの誤解のないようにこれから示す内容を確認され、趣旨を理解していただきたい。鋼橋に発生する主な損傷、腐食、疲労亀裂、変形、高力ボルト等の抜け落ち等損傷は、いずれも原因が明らかであり、確実な対策も示されていることから措置方法と時期さえ誤らなければ重大損傷に至ることはありえない。ここで、道路橋の抱えるもっとも数の多い損傷である腐食について考えてみる。