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インタビュー詳細

1カ月で900mmの降雨 66箇所が災害復旧対象に

北海道開発局 28区間440kmが通行止めに

国土交通省北海道開発局
建設部
道路維持課長
坂場 武彦 氏

 北海道開発局は昨夏の豪雨水害により大きな被害を蒙った。最大19路線で28区間約440kmが通行止めになった。災害復旧を行う箇所は66箇所にものぼり、橋梁も17橋が被災した。特に被害が大きかったのが国道274号日勝峠道路で、被災した橋梁のうち10橋がここに集中した。今回は、国道273号高原大橋の被災および仮橋設置、本復旧対応も含めて、現場の指揮を執った北海道開発局建設部の坂場武彦道路維持課長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)


極短期間に3つの台風が上陸

 中小河川中心に大きな被害

 ――昨年夏の台風10号を中心とした水害は大きな被害を北海道に与えました 

 坂場課長 元々、北海道は台風や梅雨が来ないと言われていました。しかし、昨年度は台風9、10、11号と台風が8月17~23日の極短期間に3つも上陸しました。台風の勢力が弱まった後、熱帯性低気圧に変わってからも降雨が続きました。北海道の平均降雨量は年間1,000mm程度ですが、昨年8月の1カ月間降雨量は800~900mmに達しました。気候変動という現象は本州ではずっと言われていましたが、改めてその影響が北海道にも波及してきたのかな、と感じています。

 また、水防災対策検討委員会の議論で指摘されたのですが、中小河川が氾濫し、構造物や宅地、農地に大きな損傷を与えています。これらの中には河川計画が策定されておらず、河川区域も明確になっていなかった中小河川も多く、古い澪筋に水が流れていった可能性も指摘されています。


日勝峠道路で3橋が落橋

 現地調査に手間取る

 ――道路構造物の損傷状況は

 坂場 直轄の国道だけで行きますと、最大19路線で28区間約440kmが通行止めになりました。最大の被害を被ったのは国道274号日勝峠道路です。延長がことのほか長く、約40kmに至る通行止めを行いました。災害復旧を行う箇所は66箇所に上ります。そのうち橋梁で損傷を受けたのは10橋です。3橋が落橋して、残りは橋台洗掘や沈下などが生じました。


落橋した千呂露橋(左)およびA2橋台背面が洗掘したニセクシュマナイ橋(右)

(以降、注釈なきは北海道開発局発表資料)


同様に落橋した岩瀬橋

 ちなみに今次災害の直轄道路の道路構造物の損傷は橋梁が17橋であり、その日勝峠道路で過半に達しています。(下表、拡大して見てください


 日勝峠道路の通行止めにより、食糧生産基地である道東が孤立しかかりました。道東と道央を結ぶ道路は国道38号、同274号と道東自動車道ですが、38号と274号が寸断され、物流に多大な影響を及ぼしました。道東に至る道路は冬場の吹雪の際に事故などが生じて止まることがあり、「(道東自動車道以外の)リダンダンシーの確保を望む声があり、早く復旧して欲しい」と道東の経済団体や物流事業者から非常に要望がありました。

 日勝峠道路は現地調査にかなり手間がかかりました。40kmも通行止めになっており、災害箇所までの距離が遠いということと、橋の落橋があり、踏査出来なかったためです。ヘリも飛ばしましたが届けられた画像を災害本部で見たときとても衝撃的でした。空撮で概要把握が出来ましたので、その後は地上から詳細調査をしようということになりました。(落橋した河川を渡るために)ラフティングの専門家に(渡河を)助けてもらったり、移動用の自転車を担いで行ったりしました。現場の生態系に詳しい先生の助言では、車が通らなくなると、熊がすぐに出現するようになるという指摘も頂きました。そのため各調査班にはハンターを付けて移動してもらいました。そのような装備で1カ月ぐらい現地を調査しました。現在は現地調査やドローンで得た画像情報をもとに3Dモデリングを構築して点検、解析し、200日の作業を30日に短縮し、昨年11月に今秋をめどに仮復旧するというアナウンスを行うことができました。


命綱を張って対岸に渡り調査

 熊対策のためハンターを付けて踏破

 ――北海道大学の磯部公一准教授から聞きましたが、本当に現場はひどい状況だったそうですね

 坂場 文字通り道路が消失してしまっている個所やトンネルの中も水が走ってしまって舗装をきれいさっぱり流してしまっていました。千呂露橋なども落橋しており想像以上の被災状況でした。調査も(仮橋がかかっていない状況では)命綱を張っていくしかありませんが、橋の向こう側は電気も切れていますし、電話もつながりません。そういう所にいってもらうという事で、現場にはかなりの負担をかけました。


落橋した箇所はラフティングで渡河した/自転車を担いで進む


抉られた道路/清水町側の日勝峠頂上付近


国道274号 日高町 三国の沢覆道の損傷状況

 ――現場はどのように調査したのですか

 坂場 パーティーを何個も組んで、各パーティーにハンターを付けて、それで綱を渡しながら一個一個、被災現場を調査していきました。ただ、朝に行って夕方までに帰ってこなくてはいけません。下りは自転車とかを使用しながら、熊が出没するので日帰りは徹底しました。最初は被災状況がなかなかわからなくて、先生方に来てもらい助けていただきました。

 ――トンネルの損傷状況は

 坂場 舗装はすべて流されましたが、躯体そのものは大きな損傷がありませんでした。水が走ったところは土工、トンネル問わず全て舗装は流されています。3箇所ほどが損傷を受けています。

 ――法面や自然斜面は

 坂場 損傷を被っています。何万立米も崩れ、大きく損傷したところが6箇所、小規模な損傷が47箇所となっています。

 ――これだけ被害が大きくなった理由をどのように考えますか

 坂場 17~23日に全道的に雨が降って、その後8月29日から一気に日高山脈上に長く雨雲が停滞して大量の雨を降らせました(地形性降雨)。被害は同山脈を分水嶺として、清水町側、日高町側の河川に雨水が大量に流れ込んで行きました。それが大きな豪雨水害を日勝峠や清水町だけでなく流域の各地にもたらしました。


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