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インタビュー詳細

鉄道・道路が寸断される中、いち早く応急復旧にこぎつける

NEXCO東日本北海道支社 リダンダンシーを見事に発揮した道東自動車道

東日本高速道路
北海道支社
道路事業部長
加納 正志 氏

 道東自動車道がなかったらどうなっていただろう? 帯広や釧路など道東に住む市民にとって、道東自動車道の素早い復旧は文字通り「孤立化を防ぐ命の道」の再開であった。前半ではその困難な応急復旧への対応について、とりわけ被害の大きかった狩勝第二トンネルと十勝清水ICBランプに焦点を当てて、また、後半では大規模更新・大規模修繕事業などの進捗状況について、東日本高速道路北海道支社の加納正志道路事業部長に聞いた。(井手迫瑞樹)


東側坑口が半分埋まった狩勝第二トンネル

 トンネル内部の土砂は除雪車で除去

 ――台風10号などによる昨夏の被害について

 加納道路事業部長 当支社管内で大きな被害を受けた構造物の一つが狩勝第二トンネル(道東自動車道、北海道空知郡南富良野町落合~上川郡新得町新得、2,576m)です。

 大雨による土石流のため、東側(帯広側)の坑口がほぼ半分ぐらい埋まりました。

 トンネル内部には水と土砂が流れ込み、これらを除去するのに苦労しました。とりわけ水を多量に含んだ泥が取り切れず、最後には除雪車を使用して、そうした泥を除去しました。

 坑口付近には土石流により運ばれて来た花崗岩質で非常に硬い2m以上の巨大な転石が点々としており、それを除去するのにも苦労しました。

 また、土石流により立木も流れてきており、土砂と立木が混在した状態で坑口付近に堆積していたので、土砂の除去に支障となる立木の取除きに時間がかかっていました。


狩勝第二トンネル東坑口付近の被災状況①

 この時、国道や市町村道にも被害がでており、通行できないという情報が入っていました。このため、道東自動車道の通行止めを早期に解除するために土砂の除去を急がなければなりませんでした。


狩勝第二トンネル東坑口付近の被災状況②


 先ほどお話しました転石や立木の除去作業にかなりの時間が掛ると想定されましたので、大型土のうを設置し本線への土砂流入を防ぎ、本線の土砂除去作業を最優先で進め車両通行部分を確保することにしました。


大型土のうを設置し、本線への土砂流入を防いだ


 このため、一部の路肩に大型土のうを存置したままで車両通行部分の確保を行い、8月31日の7時20分からの災害に伴う道東自動車道の占冠IC~十勝清水IC間の通行止めを9月1日の8時に解除しました。


9月1日8時には通行止めが解除された

 なお、坑口付近の路肩の一部に大型土のうや土砂及び転石が残っているため、高速道路の走行中の安全確保を目的に除去作業を9月4日から5日の夜間通行止めで行いました。その後、今後の降雨や融雪期により、土石流が発生することが想定されるため応急対応を行いました。

応急対策一覧


親杭横矢板および排土工

 応急対策は、土石流入側である東坑口の南側に土石流の高速道路への流入を防止する為応急的な柵として親杭横矢板(高さ4m、距離62m)を設置しました。また、土石流が発生した沢の上流には高エネルギー吸収柵(高さ5m、幅21m)を2か所設置しました。しかし、これはあくまでも(昨)冬を乗りきるための対策です。また、JRが運休し、国道274号(日勝道路)が通行止めとなっていました。


高エネルギー吸収柵/貯砂ポケット(写真は施工状況)

 冬は道東自動車道が道央と道東を結ぶ重要な路線であることから占冠IC~十勝清水IC間の雪による通行止めを最小限にする為、トマムICの雪氷作業基地に除雪車を重点的に配置しました。

 ――本格的な復旧のための施策は

 加納 今回、土砂、転石、立木を含んだ土石流が発生し、沢の下流にある狩勝第二トンネル東坑口付近へ流入し堆積したため、土石流の対策が必要になります。

 対策のポイントは、土石流から高速道路をどのように守るかです。土石流への対策としては、狩勝第二トンネル東坑口から新得沢川橋までの約70m間の土工区間をトンネル等の構造にすることで、高速道路へ向かってくる土石流を防げると思います。

 トンネルとした場合だとトンネルの幅員(9.5m)を確保した形での構造になりますし、また、土工幅員や施工を考えると幅員が10mを超えますので、幅員10mを超える構造を考えなければなりません。幅員や施工性から適用できそうな構造を考えると、ロックシェッドのような構造が案として考えられるかも知れません。

 現在、構造について検討を進めています。

 ――トンネル等の構造の施工方法は? 工事方法としてはプレキャストアーチカルバートを設置していくような感じですか

 加納 施工方法の前提としては、道東自動車道を利用されるお客様への影響を最小限にすることを考えて、施工方法や規制計画(車線規制、通行止め)を検討します。

 構造検討では、土石流が直接トンネル等の構造に当たらないように土で覆うため編土圧や土石流の荷重が作用するため構造の検討が必要になると思います。

 また、施工における規制日数の短縮としてプレキャスト部材の検討やプレキャスト部材の継手構造の検討も必要になります。トンネル等の構造の例としては、プレキャストアーチカルバート構造、ロックシェッド構造が考えられます。

 どのような構造を採用したとしても、側壁を路肩規制を行いながら施工して、頂版部は道東自動車道の上に支保工を設置して施工するような形になると思います。また、トンネル構造の場合、トンネル本体と走行車両の建築限界が近接するため施工時の安全性の心配もあります。

 プレキャストアーチカルバート構造とした場合は、架設機械に大型クレーンが必要になること、架設作業においては通行止めが必要になります。また、トンネルと同様に施工時の安全性の心配もあります。

 ロックシェッド構造の場合も、屋根部分の架設を行うためにクレーンが必要になり、架設作業時は通行止めが必要になります。なお、ロックシェッド構造は落石対策を参考に、コンクリート製と鋼製の比較検討が必要になると思います。

 ――東日本高速道路では長野道でそうした危険性の高い切土部分に、カルバートチックにトンネルを作って最後に土砂で覆う工事を発注していますが、あのような感じですか

 加納 蓬平ですね。その通りです。狩勝第二トンネル東坑口の延伸トンネル構造も同様に最後は土砂で覆うことを考えています。

 施工上異なる点は、蓬平では地盤が悪いため、トンネル工を行う前に杭を打つ必要がありますが、狩勝第二トンネルの延伸を考えている部分の地質調査を行ったところ、地盤が良いため、直接基礎で十分いけそうな感触を得ています。但し、基礎形式については、詳細設計を行い決めることになります。

 ――トンネル上面に覆う土砂量や厚さは

 加納 採用する構造によって、必要な土量や厚さは変わると思います。現在、構造について検討を行っているところですので未定です。

 なお、盛りすぎると土石流が止まりますし、薄いと衝撃が躯体への影響も考えられるので設計が難しいと思います。


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