道路構造物ジャーナルNET

鉄道・道路が寸断される中、いち早く応急復旧にこぎつける

NEXCO東日本北海道支社 リダンダンシーを見事に発揮した道東自動車道

東日本高速道路
北海道支社
道路事業部長

加納 正志

公開日:2017.05.31

凍結防止剤による塩害が発生
 伸縮装置と排水管の損傷から漏水

 ――塩害やASRなどによる橋梁の劣化状況とその補修補強対策について教えてください
 加納 まずASRに関しては当社管内も例外ではなく、小樽~札幌西IC間の朝里IC付近にある朝里川橋で顕著な損傷が生じていました。損傷部位は下部工および壁高欄です。補修は既に完了しています。それ以外ではASRによる顕著な損傷は現在のところはありません。
 一方、全線で凍結防止剤を散布するため、損傷が発生しています。特に、スパイクタイヤが禁止になった以降は、凍結防止剤の散布量が増えているため、塩害の損傷が増えていると思います。
 伸縮装置と排水管が損傷し、凍結防止剤を含んだ水が漏れ、漏水が起きてきる箇所及びその近傍で発生しています。伸縮装置については、非排水構造の破損で漏水が発生します。伸縮装置の非排水構造の破損は、フェイスプレートに設置されるシーリング等の経年劣化や砂塵や冬季の圧雪塊による目詰まりを走行車両のタイヤで押込まれることが原因と考えられます。
 また、排水管については、冬季に排水管内の水が凍結膨張しジョイント部に隙間が生じたり、排水管が腐食し漏水が発生します。伸縮装置と排水管継手からの漏水を浴びる箇所で損傷が確認されたものについては、コンクリートの場合は損傷部を除去したのちにコンクリートの断面修復を行っています。
 鋼部材の場合は損傷(さび)箇所をケレンし塗装を行いますし、鋼部材の板厚が減少している時は当て板補強で補修を行うことになると思います。
 よって、点検等において漏水箇所が発見された場合は、漏水箇所の特定や漏水に対する応急処置を行っています。

排水管のジョイントを如何に直すか
 漏水補修テープを試験採用 

 ――ジョイントというのは橋梁のジョイント(伸縮装置)ではなく?
 加納 排水管の継手部分です。
 ――これはどうやって直すのですか
 加納 排水管は1本あたり概ね4m~6mですので、排水管どおしを繋ぐ継手が必要になります。
 この継手の構造に多く使われているのは「差込み式」と「機械式」です。この二つの継手は、冬季に排水管内の水の凍結膨張により継手に隙間が生じ、この隙間から水漏れが発生するため、漏水防止として継手部周りに漏水防止テープを巻き付ける補修方法を試験的に採用します。
 ちなみに新設橋では高密度ポリエチレン管を採用し、継手部が冬季の凍結により隙間が発生しないように、EF継手(熱溶着継手)を用いることで継手部の耐久性向上に配慮しています。
 ――個別の塩害により損傷した構造物としては去年取材した深川大橋が印象に残っています。同橋は冬季の仕様を考え中央分離帯に排水溝を設けていましたが、ジョイントの劣化などもあり、桁端部に塩分を含む水が供給されて、桁断面全体をWJではつって塩分吸着剤入りの断面修復材で補修されていました。こうした個所への対策も必要ではないでしょうか
 加納 深川大橋は伸縮装置の非排水構造が破損して漏水が発生したことで桁端部に損傷が発生しました。
 伸縮装置の非排水構造の破損による漏水は今後も起きると思いますので、漏水の有無を注意して確認(点検)する必要があると思います。
 また、中央分離帯にある排水溝は、中央分離帯に残った雪が日中に解けて路面を湿らせた状態で気温が下がると路面が凍結するという事象が起きるため、中央分離帯に残った雪の融水を受ける構造として採用されていました。
 現在、この中央分離帯にある排水溝から床版へ水が浸透し、床版を損傷させる状況が確認されていますので、今後は橋梁部の舗装補修時に排水溝を撤去し床版への浸透を防ぐことを考えています。


深川大橋の損傷状況①

深川大橋の損傷状況②

補修時には中央部の排水溝を撤去している/端部をWJではつる

端部の断面修復工の施工

 ――ところで、地覆や高欄の一部まで損傷が広がり、下から見ると床版と高欄・地覆(ハンチ部など)が傷んでいるケースも散見されます。既設でこうした排水溝を採用している箇所への対応はどのように行いますか
 加納 まずは舗装を剥がして、コンクリートが損傷していれば脆弱部をWJで撤去し、次いで塩分吸着剤入りの断面修復材で補修を行い、その後に床版防水工を施工します。
 特に床版防水をきちんと施工することは、床版の耐久性を考えると重要です。

大野橋、島松川橋で床版取替
 勇払川橋なども床版取替発注へ

 ――大規模更新・大規模修繕計画の支社管内の実施状況は
 加納 現在契約しているのは、札樽自動車道の大野橋床版取替工事(朝里IC~銭函IC) と道央自動車道 島松川橋床版取替工事(恵庭IC~北広島IC)です。  
 大野橋の床版取替工事は同橋の上下線が対象です。上り線が鋼4径間連続鈑桁×1連(A1~A2橋長162.55m)で供用後46年を経過 、下り線が鋼4径間連続版桁×1連(A1~A2橋長165.28m)で供用後43年経過しています。施工面積は約3,000㎡で上り線を今年度の第3四半期、下り線を30年度の第1四半期にそれぞれ床版取替を実施する予定です。工期は平成28年8月20日~平成31年2月5日までの900日間を予定しています。 
 島松川橋の床版取替工事(恵庭IC~北広島IC)は同橋の上り線のみを対象としています。 鋼4径間連続鈑桁×2連(A1~P4:153.33m、P4~A2:153.33m)で供用後46年が経過しています。施工面積は約3,500㎡で平成30年度の第1四半期に床版取替を実施する予定です。工期は平成29年1月24日~平成31年1月13日の720日間です、両橋はいずれもドーピー建設工業株式会社と契約しています。


 島松川橋の床版損傷状況

 基本的には既設床版を撤去してプレキャストPC床版に取り替えるものです。壁高欄もプレキャスト製品を用いる予定です。これらの施工は交通規制の日数を少しでも短くして、高速道路を利用するお客様への影響を少なくすることを考えて採用するものです。 
 ――両橋は直橋ですか
 加納 90°とまでは行きませんがほぼ直橋です。床版に斜角が無いため、取替時の現場打ちは非常に少なくできると考えています。
 ――プレキャストPC床版の厚さと継手構造は
 加納 プレキャストPC床版の厚さは220mmを基本としています。
継手はループ構造を採用する予定です。
 ――これから発注予定の大規模更新事業は
 加納 道央自動車道の勇払川橋床版取替工事(苫小牧西IC~苫小牧東IC)と同道の千歳川大橋床版取替工事(江別西IC~江別東IC)があります。
 勇払川橋床版取替工事の対象橋梁は勇払川橋の上下線と高丘橋の下り線です。勇払川橋は上下線とも鋼2径間連続鈑桁(A1~P2橋長  39.35m)+鋼4径間連続鈑桁(P2~A2橋長106.55m)で、供用後36年経過しており約1,800㎡ずつの床版を取り替えます。また、高丘橋下り線は橋長81.0mの鋼2径間連続鈑桁で供用後36年経過しています。床版取替面積は約900㎡を予定しています。 


勇払川橋の床版損傷状況

 千歳川大橋床版取替工事(江別西IC~江別東IC)は同橋の下り線P7~P15間約3,400㎡の床版を取り替える工事です。同径間は鋼2(P7~P9、123.45m)+3(P9~P12、108.55m)+3(P12~P15、96.16m)径間連続鈑桁という構造です。
 ――大規模修繕事業は
 加納 高性能床版防水工の施工を主に苫小牧方面で6,500㎡予定しています。
 管内のトンネルについては小樽IC~札幌西ICで6チューブある在来工法で施工した区間も含め、健全性に問題は無く、今すぐ大規模補修に該当するようなものはありません。
 のり面はグラウンドアンカーで顕著に補修が必要なものは該当ありません。但しPC鋼棒でグラウンドアンカーを施工している古いタイプのものについては、破断などの恐れがありますので状況を見ながら大規模修繕を実施することになろうかと考えています。

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