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2024新年特集② 中部地方整備局 東海環状、三遠南信、中部縦貫などの事業進む

国土交通省
中部地方整備局
道路部長

望月 拓郎

公開日:2024.01.01

五三川橋 橋面防水や伸縮装置の補修を行う

 ――橋梁の定期点検結果にもとづいた対策の進捗状況についてお答えください。また具体的な橋梁について、損傷状況と対策工の内容についても例を挙げてお教えください
 望月 Ⅲ判定橋梁を中心とした補修を計画的に進めており、点検の結果から鋼部材の水に起因する腐食が多く、損傷原因を絶つ対策にも取り組んでいます。
 具体例として、五三川橋(ごさんがわばし・国道258号・岐阜国道)では、桁の再塗装および支承の防錆処理と併せて、橋面防水や伸縮装置の補修を行っています。


五三川橋(橋面防水前/後)/同橋(当て板補強前/後)

五三川橋(支承補修前/後)/同橋(伸縮装置補修前/後)

 ――上部工補修・補強の2023年度の施工済み(予定)数量をお答えください。また、今後の施工計画についても教えてください
 望月 施工予定を含む橋梁数は、95橋です。補修メニューとしては、桁補修・断面補修・床版補修・ジョイント補修などを実施します。
 2018年度に法定定期点検が1巡目を終え、2019年度から2巡目点検を開始しています。
橋梁点検において確認された橋の損傷程度を評価した対策区分をもとに実施し、予防保全への転換を目指して、Ⅲ判定橋梁の補修を計画的に進めています。

 ――また、管理する橋梁における床版防水の施工状況(コンクリート床版を有する全橋梁に占める施工済み割合などが分かれば)、今後の施工方針、採用する工法などをお教えください
 望月 床版防水については、平成14年3月の道路橋示方書改定で床版防水が義務付けられ、それ以降の橋梁は新設時より床版防水を施工しています。既設橋についても、舗装打換えなどの補修に合わせて床版防水を施工するなど随時対応しています。

由比川橋 断面修復や表面被覆で塩害対策
 萱の橋 床版取替えを実施予定

 ――塩害、アルカリ骨材反応などによる劣化の有無について。劣化があればどのような形で出ているか、またその対策例などを具体的な橋梁などを挙げてお答えください
 望月 塩害による劣化では内部鉄筋膨張に伴う『ひび割れ』や『剥離・鉄筋露出』が確認され、積雪寒冷地においては『床版の土砂化』も確認されています。一方、アルカリ骨材反応による劣化では『ひび割れ』が確認されています。
 塩害の具体例として、由比川橋(ゆいがわばし・国道1号・静岡国道)では、主桁を中心に塩害に起因したものと思われる『剥離・鉄筋露出』『うき』が確認されていたため、『断面修復工法』および『表面被覆工法』を施工しました。また、萱の橋(かやのばし・国道153号・飯田国道)では、床版が塩害および凍害により損傷を受けたため、今年度、『床版取替え』を予定しています。


由比川橋の塩害対策(左:補修前/右:補修後)

萱の橋の床版損傷状況

 ――損傷状況をもう少し詳しく教えてください
 望月 床版にうき(300×300mm)、錆汁を含む遊離石灰、変色及び角落ちを伴う二方向ひび割れ(幅0.2mm)が見られます。
 乾燥収縮および活荷重による疲労が原因のひび割れに、凍結防止剤を含む路面水が浸透した結果、損傷が拡大したと考えられます。
 また、最新の点検では前回の点検から進行が見られ、損傷が進行する可能性が考えられます。内部鉄筋の腐食による錆汁の滲出や凍結防止剤を含む広範囲な水染みおよび角落ちを伴うひび割れが見られ、部材耐荷力が低下しているため、構造安定性の観点より取替えるものとました。
 ――ASRによる損傷は
 望月 アルカリ骨材反応の具体例として、子野川橋(このがわばし・国道19号・多治見)では、橋台にアルカリ骨材反応に起因したものと思われる『ひび割れ』が確認されていたため、『ひび割れ注入工法』を施工しました。


子野川橋ASR対策前/同対策後状況

橋梁耐震補強 92%が対策済み
 長大橋 木曽川大橋と揖斐長良大橋で上部工補強を実施中

 ――橋梁の耐震補強の進捗状況、あわせて施工中もしくは施工予定の長大・特殊橋の耐震補強事例がありましたら、お教えください
 望月 緊急輸送道路上の橋長15m以上の橋梁の耐震補強進捗率(R5.3末現在)は、約92%対策済みです。今年度は、37橋を対策予定です。
 耐震補強は、大規模地震の発生確率等を踏まえ、緊急輸送道路の耐震補強を推進しています。ネットワーク機能を確保(1Way)することを優先し、また今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が26%以上の地域の橋梁を重点的に、落橋・倒壊の防止対策に加え、路面に大きな段差が生じないよう、支承の補強や交換などを行い、耐震性能Ⅱを確保します。
 長大橋の耐震補強事例としては、国道23号木曽川大橋(下り)(858m)と揖斐長良大橋(下り)(1,032m)があり、現在上部工の補強を実施中です。
 国道23号木曽川大橋(下り)は、これまでに 落橋防止装置(橋脚部11箇所)、縁端拡幅を実施しています。現在は支承取替え(48基 [橋台4基(1橋台当り2基)、橋脚44基(1橋脚当り4基)])、及び落橋防止装置(橋台2箇所)を実施中です。耐震補強工事にあわせて、伸縮装置補修、床版補修、剥落防止、亀裂補修、部分塗装の橋梁補修も行っています。


国道23号木曽川大橋(下り)の施工状況

 国道23号揖斐長良大橋(下り)は、これまでに支承取替え(56基)、縁端拡幅を実施しました。現在は落橋防止装置(橋台2箇所)を実施中です。耐震補強工事にあわせて、伸縮装置補修、床版補修、剥落防止、亀裂補修、部分塗装の橋梁補修も行っています。


揖斐長良大橋(下り)支承取替え状況

 ――支承取替えおよびジョイント取替えについて、2023年度の施工(予定)個所数について
 望月 支承取替えについては、2023年度の橋梁補修において、8橋34箇所の取替えを実施(予定含む)し、耐震補強において、は2橋56個の取替えを実施しており、合計10橋、90箇所を施工する予定です。
 ジョイント(伸縮装置)取替えについては、2023年度の橋梁補修において21橋44箇所の取替えを実施(予定含む)しています。

耐候性鋼材橋 健全度Ⅲは18橋 ブラストをかけて塗装
 有害物質含有塗膜対策 基本は湿式

 ――鋼橋では耐候性鋼材で保護性錆ではなく悪性錆の発生が生じるケースも散見されていますが、そうした損傷はありますか
 望月 耐候性鋼材を採用した橋梁は、228橋あり、健全性Ⅰ:145橋(64%),健全性Ⅱ:65橋(28%)、健全性Ⅲ:18橋(8%)となっており、健全性Ⅲのうち、15橋が耐候性鋼材の腐食を主な要因としています。

耐候性鋼材損傷状況及び対策状況

 ――耐候性鋼材橋梁の損傷に対してどのように補修していますか
 望月 基本的にはブラストをかけて塗装しています。また、スラブドレーンが損傷して、破損個所から桁などに凍結防止剤を含んだ水がかかり、損傷を招いているケースが散見されるため、補修の際はドレーンなど水回りの取替えなども行っています。

 ――2023年度の鋼橋塗替え(予定)橋梁(橋数と面積、具体的な橋梁名)と、塗替えの際の塗膜処理および全体的・部分的な用途でもいいので溶射など新しい重防食の採用などについてもお答えください。また、PCBや鉛など有害物を含有する既存塗膜の処理についてどのような方策をとっているのか教えてください。
 望月 2022年度は23橋約9,000㎡の塗替えを実施しました。2023年度は予定も含めて50橋約18,000m2の塗替えを実施します。


鋼橋塗装塗替え前/同塗替え後

 塗装処理について、基本的には1種ケレン(ブラスト処理)を行っています。有害物質を含む既存塗膜の除去は塗膜剥離剤が基本ですが、循環式ブラストを使用している箇所もあります。
 溶射など新しい重防食の採用については、2022年度は8橋、2023年度は9橋で金属溶射を採用(支承防錆で採用予定)しています。

防災対策が必要な斜面 363箇所が該当
 今年度は37箇所で防災対策を実施

 ――全国的に異常気象による土砂災害が相次いでいるなかで、具体的な防災対策の要対策箇所と進捗状況およびその事例を教えてください
 望月 363箇所の要対策箇所(2022年度末時点)があり、今年度は37箇所の防災対策を実施(継続工事や設計含む)します。
 対策としてはのり面の崩落を防止するのり枠工をはじめ、落石を防止する落石防止ネットや根固工等の発生源対策、また、道路上への落石の侵入を防ぐ落石防止柵等の待受け対策を実施します。

 ――補修関係で新技術、新材料の活用は
 望月 2022年度からの直轄における点検支援技術の活用原則化に伴い、橋梁においては、『橋梁点検支援ロボット』、『橋梁点検ロボットカメラ』、『全方向衝突回避センサーを有する小型ドローン技術』『全方向水面移動式ボート型ドローンを用いた橋梁点検支援技術』を用いた点検を行っています。また、トンネルにおいては、『走行型画像計測技術』を用いた点検を行っています。


新技術例 橋梁点検支援ロボット/橋梁点検ロボットカメラ

新技術例 ドローン点検/ボート型ドローン点検/走行型高速3Dトンネル点検システム

 ――ありがとうございました

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