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26年ぶりに「積算基準(案)」を改定

日本建設あと施工アンカー協会 創立30周年 「安全」「安心」の提供を使命に活動

一般社団法人日本建設あと施工アンカー協会
代表理事 会長

安永 裕信

公開日:2023.08.31

認定試験は毎年約1万人が受験
 2021年度に注入式施工士と点検士の資格を新設 現在は7資格

 ――3つの基本事業について。資格認定事業の概要からお願いします
 安永 1995年の阪神・淡路大震災以降、安全な避難所の確保のために学校の耐震補強が本格化しました。協会では、あと施工アンカーの施工・管理に携わっている技術者の知識・技術の向上を図り、安心・安全な施工を提供することを目的に、1997年から資格試験を開始しました。
 資格認定は一般技術講習(初級および上級A・Bの3種類)を受講後、認定試験を受験する流れとなっており、毎年約1万人が受験しています。資格取得後は5年ごとの更新が必要です。民間資格ですが、大学の先生方による第三者委員会で講習内容や試験問題を検討し、採点を行うことで公正性を保っています。


資格試験の申込み状況

 ――資格の種類について教えてください
 安永 現在、7つの資格があります。第2種施工士、特2種施工士、第1種施工士、技術管理士、主任技士に加え、2021年度には接着系注入方式カートリッジ型あと施工アンカー施工士、あと施工アンカー点検士を新設しました。
 第2種施工士はねじ径12mm以下、特2種施工士はねじ径22mm以下のあと施工アンカーを決められた施工計画により、通常の用法に従って適切に施工できる技術的能力を有することを認定しています。ただし、あと施工アンカーの選択、母材の判断を伴うもの等は対象外です。第1種施工士はねじ径の制限なく施工できる技術的能力を有するとともに、あと施工アンカーの耐力結果に関する評価、あと施工アンカーの選択、母材の判断等ができることを認めたものです。
 技術管理士は、工事の施工計画および施工図の作成、工程管理、品質管理、安全管理等工事の施工管理を的確に行なうために必要な技術的能力(あと施工アンカーの耐力試験結果に関する評価を含む)を有します。主任技士は、協会の最上位の資格で、第1種施工士と技術管理士の技術的能力を有しています。


資格の詳細①

 新設の注入式施工士は、注入方式カートリッジ型のミキシングノズル方式(有機系)とプレ混合式(無機系)の施工を適切に行うことができる技術的能力を有する資格で、点検士は、施工アンカーの施工と母材を含む取付状態を定められた点検要領に基づき点検し、管理者に報告書をもって報告できる能力を有する資格です。


資格の詳細②

 2022年度末時点で有資格者のうち、約61%が第2種施工士で、第1種施工士が約18%、最上位の主任技士は5%です。注入式施工士と点検士は400人以上が資格を取得しています。
 ――資格認定によるメリットは
 安永 基本的には資格を取得したから施工できるものではありません。しかし、確実で安全な施工のための資格認定ですので、発注者などから有資格者による施工が望まれる場合がありますし、信頼にもつながります。協会にとっても、このような資格認定を行っていることはアピールポイントになります。
【編集部注】同協会では、新資格として「あと施工アンカー登録基幹技能者」と「あと施工アンカー診断士」を創設する。登録基幹技能者は、3月に国土交通大臣により同協会が第43号の登録基幹技能者講習機関として登録されたことから、建設業法施工規則に基づき、熟練した作業能力やマネジメント能力を備えた技能者を認定するもの。9月上旬から協会ホームページで受講者の募集を行い、10月に講習・試験を実施する。「診断士」はあと施工アンカーの健全性の診断および判断を行う資格で、2023年度中の創設を予定している。

211製品、1,516品番を認証 第三者の有識者が審査
 発注者等への認証製品の認知度向上を図る

 ――製品認証事業は
 安永 個社の製品について所定の品質性能が確保されているかを審査し、認証する事業です。製品認証は5年更新で、5年ごとの審査となっています。
 品質管理は個社の当然の責務だと考えています。海外からの輸入品も増えていますが、個社が扱う製品すべてについて形状・寸法・材質確認や各種性能試験を行い、合格したものを販売する。これが個社の対応です。協会では、それらをさらに安心して使ってもらえるように、品質・性能試験成績証明書などの品質性能に関する申請資料を提出してもらい、公正性を保つために第三者の有識者に審査をしてもらっています。
 なお、協会では個社が行う試験について、その方法案を提案して統一を図っています。会員はその試験方法で実施しますが、会員以外にも安心、安全を実現するための案として提案しています。それに準じたほうが使用者にもわかりやすいという観点からです。
 ――製品認証は1,500品番に達しているとのことですが、詳細は
 安永 2022年度末時点で、金属系アンカー149製品935品番、接着系アンカー62製品581品番(合計211製品、1,516品番)です。


認証製品の推移

 ――市場全体に占める認証製品の割合は
 安永 最近は海外から輸入され、ホームセンターなどで販売されている製品も多いので、協会では把握が難しくなっています。出荷金額で言うとその他のアンカーを除いた30~40%程度が認証製品だと思います。全製品の認証を取ることは前提ですが、どのメーカーも出荷本数が多いものから取っているのが現状です。今後も増える方向だとは思いますが、認証を取得するためには結構な手間と費用が掛かります。市場で認証製品の指定化が進めばさらに加速するものと考えます。
 ――認証製品の認知度は
 安永 NEXCOでは材質証明などとともに認証製品であるかを確認していますが、他の発注者にはそこまで意識してもらっていません。協会としてもさらなる認証製品の普及のために、アピールをしていきます。

年間約3大学に助成を実施
 年に1回、「技術講演会」を開催して成果を発表

 ――調査・研究事業については
 安永 協会では、あと施工アンカーの設計や施工技術を研究している大学に助成金を出しています。基本的に年間約3校の助成を行って、1年間研究してもらい、毎年開催する「技術講演会」(今年は8月21日開催)で成果を発表してもらっています。


8月21日に東京・一橋大学一橋講堂で開催された「技術講演会」には約250人が出席した

 ――他機関との共同研究はいかがですか
 安永 継続研究となっていますが、国立研究開発法人建築研究所とPRISMの一環として、あと施工アンカーの要求性能の検討を行っています。その延長として、2022年度はエポキシ樹脂を用いた長尺アンカーの施工を行い、「接着系あと施工アンカーを用いた露出柱脚の構造性能に関する研究Ver.2」とする実験を実施しました。
 また、同研究所とはクリープ試験機の小型化にも取組んでいます。
 ――新たに取組むべき調査・研究がありましたらお教えください
 安永 2022年3月に「平成13年国土交通省告示第1024号」の一部改正が行われました。外階段などの軽微な構造体であればあと施工アンカーで固定可能とするものです。しかし、その固定を行うには、あと施工アンカーの単体試験と構造体の試験が必要で、両方を満足しなければ採用できませんので、今後、対応を行っていきます。
 ――ありがとうございました
(聞き手=大柴功治)

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