道路構造物ジャーナルNET

中京圏におけるリニューアル工事が本格化

NEXCO中日本名古屋支社 大規模更新、耐震補強が進捗

中日本高速道路株式会社
名古屋支社
保全・サービス事業部長

末吉 寿明

公開日:2023.07.31

トンネル大規模更新 14チューブで調査・計画が進む
 恵那山トンネルについては現地調査を実施中

 ――トンネルの大規模更新は何箇所で施工中ですか
 末吉 施工中のものはなく、14チューブで調査・計画中となっています。
 ――規模が大きいトンネルは
 末吉 中央道 恵那山トンネル・網掛トンネルです。インバート設置工と覆工補強を行う計画です。トンネルの延長が長いので、最も対策規模が大きいトンネルです。現在は、施工範囲の特定や調査を実施しており、施工方法の検討も行っています。延長が長いため、対面通行規制で施工するか、車線規制で半断面施工とするのか、インバートをどのように設置するのか、がこれからの検討課題です。


恵那山トンネルの損傷① タイルの損傷、一部ではひび割れ箇所から漏水も

恵那山トンネルの損傷② 覆工コンクリートの損傷/網掛トンネルの損傷① 坑口部の損傷

網掛トンネルの損傷② ひび割れから生じた漏水が寒さで氷柱と化した状態

 ――最近、敦賀で取材した在来矢板トンネルを対象とした覆工再生工法がありますが、恵那山トンネルでも採用しますか? インバート設置工も大変なようですね
 末吉 恵那山は延長が長い((上り線)8,649m、(下り線)8,489m)ため、半断面や通行止めで施工している事例を収集しながら、どのような方法が選択肢としてあるかを検討していきたいと考えています。現在は施工の対象箇所を絞り込んでいる段階です。それが特定できれば設計に着手できます。
 ――NEXCO東日本はインバートをプレキャスト化できないかを検討しているようです
 末吉 先行的な事例を収集しながら、恵那山トンネルの工事計画の具体化を図らなければならないと考えています。

伊勢湾岸道の大型ジョイント取替 今後3~4年で完了予定

 ――支承および伸縮装置取替えについて、ノージョイント化も含めて今年度の施工箇所や工法を教えてください
 末吉 伊勢湾岸道のジョイント取替えを中心に進めています。同道は約10万台の交通量がありますので、ビーム型ジョイント(マウラ―ジョイント、マゲバジョイント)の損傷が過去においてもかなり発生しています。また、大型鋼製フィンガージョイントも疲労亀裂が発生しているということで、ビーム型とフィンガーの取替えを2015年度から計画的に進めています。取替え全数量は144基で83基が完了しています。残り61基も年2~3回の集中工事で取替えていく予定で進めています。
ジョイントは1基で約20t、幅16m、取替は連続3週間程度に渡る車線規制が必要なため、車線幅員を3.5mから3.25mに縮小させることで、暫定4車線としたうえで2車線ずつ規制を行い、工事を実施しています。


伸縮装置取替実績/ビーム型ジョイントの構造

伊勢湾岸道の伸縮装置取替工事例① 朝日東高架橋(井手迫瑞樹撮影)

 ――全数取替え完了予定は
 末吉 3~4年を予定しています。
 ――以前、夜間施工時に取材をしましたが、通行車両の速度が速く怖かったです。ジョイント部施工箇所は仮設防護柵でなくて木で覆っていて、危険性を感じました
 末吉 伊勢湾岸道は交通量が多いことから、渋滞等に伴う社会的影響の低減を図りつつ施工することも必要で、工事期間中においても可能な限り2車線を確保するため、現行の幅員の中で暫定4車線を確保し、半分(2車線)ずつ取替工事を行うことを基本としています。しかし、暫定4車線としていることで施工箇所と供用車線との離隔がほとんど確保できない状況となっています。
 そのため、供用車線に近接する部分を作業する際及びコンクリートカッター工など供用車線部分にはみ出して作業を行う工種については、通行するお客さまおよび作業員の安全を考慮し、交通量が少なくなる夜間に限定して施工を行っています。
 これらの作業において、2019年度以前は、夜間1車線供用(3/4車線規制)にて施工を行っていましたが、夜間であっても1車線にすると大きな渋滞を発生させる可能性があるとともに、過年度の作業状況を勘案して、2020年度からは夜間通行止めとしました。名二環などの迂回路があるので、トラブルなく通行止めができています。
 夜間通行止めを実施していない夜間や昼間においては、セーフティ―カー(ペースカー)を定期的に走行させ速度抑制を促すであるとか、仮設情報版や光る矢印版などの光物による注意喚起や交通監視員による監視など、安全対策を施し工事を実施しています。



伊勢湾岸道での伸縮装置取替工事例②

鋼橋塗替え 22年度は10橋76,000㎡、23年度は4橋35,000㎡
 弥富高架橋、神領橋で常設足場を設置

 ――それは安全ですね。次に鋼橋塗替えについて
 末吉 計画的に進めています。PCBの処分のために、優先的に塗替え塗装を進めています。2022年度は10橋(76,000㎡)で、2023年度は4橋(35,000㎡)を予定しています。

 ――35,000㎡と76,000㎡は大規模更新も含む面積ですか
 末吉 大規模更新は含まない面積です。いま挙げているのは、PCBを含む単独工事となります。大規模更新として実施する数量を含むと、2022年度は12橋(85,500㎡)で、2023年度は7橋(51,800㎡)を予定しています。
 ――重防食以外の新技術の採用は
 末吉 特段採用はありません。
 ――ランプ橋などでは常設足場を設置するケースが増えていますが、管内では
 末吉 塗装工事は行っていませんが、リニューアルで鉄道と交差している箇所については常設足場を設置する計画としています。
 ――具体的な橋梁は
 末吉 現在施工している現場では弥富高架橋、神領橋となります。
 ――既設塗膜にPCBなど有害物資が含有している塗替えでは。最近、循環式ブラストの採用も増えていますが
 末吉 基本は塗膜剥離剤です。施工条件やコストなどを勘案してブラストやIHを採用するケースもあります。
 ――水洗いしても鋼材表面にかなりの塩分が残置する箇所での施工はどのように考えていますか
 末吉 残置塩分が多いという事例はこれまでありません。
 ――PCB含有の橋梁は
 末吉 7橋の塗替えを現在進めていて、終わりつつあります。残り10橋が未対策となっています。
 ――低濃度PCB含有廃棄物についても撤去期限が迫っています
 末吉 撤去期限の1年前に塗膜除去は終わる状況です。その後、処分を1年かけて行います。
 ――耐候性鋼材が採用されている橋梁は
 末吉 60橋で、おもに国土交通省との合併施工区間の橋梁になります。現在は、特段の顕著な変状は出ていません。長期的には対策を検討していかなければならないと考えています。

異常気象 22年度は東名阪の四日市東~鈴鹿間で数箇所被災
 風化のり面対策、表面を保護していくことが基本

 ――異常気象の多発による管内の影響は
 末吉 2022年度は東名阪の四日市東~鈴鹿間で数箇所被災がありました。2020年度と2021年度は中央道の園原~中津川間の数箇所でのり面が崩落しました。大規模崩落というよりも表層的な崩落がほとんどでした。社内にのり面検討会を設置して、中央道も東名阪も議論・検討をしています。比較的風化しやすいのり面の地質(東名阪は奄芸層群/中央道は瀬戸層群)で、そこで表層が流出するのり面災害が発生しているのが最近の傾向です。


のり面の損傷状況および復旧状況①

のり面の損傷状況および復旧状況②

 ――対策はどのように行いますか
 末吉 風化のり面対策となりますので、表面を保護していくことが基本になります。東名阪や新名神では、のり枠+鉄筋挿入工と水抜き工で優先度をつけて補修を進めています。中央道もそのような対策を実施していきたいと考えていますが、これから優先度をつけながら計画を立てていく予定です。
 ――民地からのもらい災害もありますが、管内では
 末吉 最近はありません。

新技術・新製品 裏面吸音板点検ロボットを開発
 床版下面を高解像度カメラで点検する技術も活用

 ――新技術・新製品について
 末吉 施工方法の工夫として挙げられるものとして、弥富高架橋での揚重機による資材の搬入・搬出です。これは先ほど述べた通り、効率的な工事の実施、工期短縮に大きく寄与しています。また、同橋ではジョイントと床版や壁高欄・床版を一体化したプレキャスト化しており、伸縮装置部の後打ちコンクリートが不要になるなど現場を大きく省力化しています。


弥富高架橋での揚重機による資材の搬入・搬出

 ――点検技術の高度化とは
 末吉 斜張橋のケーブル点検ロボット(エンジ東京)などがあります。さらに、名二環に裏面吸音板が設置されていて、それと床版下面の間が狭くて、点検が困難になっています。そのための裏面吸音板点検ロボットを開発しています。床版下面に付けているアンカーも点検していくもので、試行的に活用していきたいと考えています。エンジ名古屋が開発を進めています。


点検支援技術の活用

 ――他には
 末吉 排水管のなかを点検する技術として、高解像度カメラの活用も広げています。また、高解像度カメラで床版下面から点検(エンジ名古屋)する技術も活用しており、桁高が高くて、主桁の部材数が少なければ点検で活用できることが分かってきています。
 ――床版では電磁波レーダーを用いて損傷を調査することも行っていますね
 末吉 現在、集中工事前にはほぼ電磁波レーダーで調査しています。そのデータを基に床版の補修規模をあらかじめ想定することにより、施工の効率性を高めています。


集中工事前にはほぼ電磁波レーダーで調査

 ――最近では名二環集中工事も行いましたね
 末吉 2023年4月~5月の名二環集中工事では、昼夜連続の通行止め方式を初めて導入し、名古屋西JCT~清州西ICで床版の補修、高性能床版防水およびBLGによる防水工の施工、高機能舗装の打ち替えを行いました。


端部防水工(左のみ)及び、BLG施工状況①

BLG施工状況②

高性能舗装の設置状況

 ――同箇所ではウォータージェット(WJ)による床版のはつりも行ったと聞きますが、どのような点(水対策や音対策など)に注意してWJを使用しましたか。またWJを使用した箇所および使用理由についても教えてください
 末吉 WJ施工に際しては、飛散、騒音、水処理に十分注意しております。
具体的には、斫ったコンクリート塊が車線に飛散し、通行車両にあたることがないよう、飛散養生(シート養生)をしながらの施工を行っております。また、環境対策の観点から、夜間施工時に低騒音・低振動の機械選定を行い試行運用しました。施工中に発生した汚水については、バキューム車で吸引しておりますが、ジョイント部付近では、ジョイントから高架橋下に流れでる可能性も否定できないので、土のうを設置しジョイントまで流れないよう工夫しております。


WJ施工状況

断面修復工施工後の状況

 WJの使用範囲は、舗装切削後床版上面の打音確認を行い、コンクリートの浮きが確認された範囲としております。使用理由としては、手斫り(チッピング等)では、微細なクラックが残存してしまうため、再劣化防止の観点からWJ工法を採用しております。
 ――ありがとうございました

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