道路構造物ジャーナルNET

高度な点検技術を活用して社会貢献を

首都高技術 鶴田和久新社長インタビュー

首都高技術株式会社
代表取締役社長

鶴田 和久

公開日:2022.11.11

鉄道版インフラドクターも実導入
 道路施設などの維持管理業務の効率化・省力化を図るウェーブドクター

 ――御社が開発した技術・製品について
 鶴田 先に挙げたインフラドクター、インフラパトロールは国道事務所のほかNEXCOでも活用いただいております。インフラドクターは、当社、朝日航洋、エリジオンが共同開発したもので、GISと3次元点群データを活用した維持管理システムです。取得した3次元点群データと映像をクラウド上で一元管理することにより、現地に行かなくても机上で現場状況の確認ができることが特徴です。オプションとして、路面性状調査やコンクリート構造物などの変状検出機能も用意されており、点検業務の省力化、高度化が図れます。
 鉄道版のインフラドクターも当社、東急、首都高速道路で開発し、現在は東急電鉄の保守点検や管理作業に導入されています。


インフラドクター

3次元点群データ計測(左)/鉄道建築限界判定(中央)/路面性状調査(右)

 インフラパトロールは、車両に搭載したカメラで取得した映像に時刻や位置情報などが紐づいた映像データを作成し、そのデータをクラウドに保存することにより、いつでもどこでも閲覧・情報共有することができるシステムです。道路全体及び構造物の映像を撮影し撮影映像を用いた損傷の自動検知も可能です。撮影映像を蓄積することにより、経年劣化の確認や補修の前後比較などもできますし、関係者との情報共有も容易となります。


インフラパトロールと映像・解析画面

 道路施設での活用を期待しているのは、ウェーブドクターです。道路施設に関わる各種測定機器を一括搭載することにより、交通規制を行わずに「道路照明の明るさ(照度)」やETCや管理用無線などの「電波の電界強度」「トンネル内の温度・湿度・路面温度」を高速走行しながら精度の高い測定が可能となっています。インフラドクター、インフラパトロールは多くの箇所で活用いただいておりますので、ウェーブドクターもさまざまな箇所で活用いただけると考えています。


ウェーブドクター

車両に搭載されているETCアンテナ(左)と照度計(中央・右)

 ――橋梁用点検ドローンは
 鶴田 大型ドローンと小型ドローンの2種類を開発しています。非GPS環境下でも安定した飛行ができるとともに、小型ドローンでは狭隘部(約90cm)への進入も可能です。12月からはドローンの操縦免許が国家資格になりますので、当社では10人以上が資格取得を目指しています。


狭隘部への進入が可能な小型ドローン(撮影=*)

 ――「こんこん」と「あいあい」は
 鶴田 「こんこん」は、高所作業車のバケットが進入できないような狭隘な場所や高所作業車が設置できない場所での高所の点検に活用するための連続打音検査装置です。高さ8mまで点検が可能で、操作性を考えて小型軽量化をしました。
「あいあい」は小型軽量なポール等に取り付けるカメラで、「こんこん」と同様に狭隘な場所や高所の状況確認に有効となります。ポール先端に設置したカメラはタブレットPCの電源を入れるだけで使用でき、遠隔操作も可能で、高さ8mまで対応できます。


こんこん(左・中央)とあいあい(右)(撮影=*)

 そのほかに、トラス橋点検ロボットや昇降式全方位カメラなどの製品も開発しています。


トラス橋点検ロボットと昇降式全方位カメラ

人財育成には働きやすい職場環境が不可欠
 「伝える」ではなく「伝わるコミュニケーション」を

 ――人財育成での取り組みとお考えは
 鶴田 技術開発と技術者開発、すなわち人財育成は密接に絡み合っていますので、その連携をとっていくことが重要です。そのため、各種研修制度の充実を図っています。
 入社後4、5年目の社員に対しては技術的な面も含めたOJTとOff-JTを行い、自己研鑽のために技術士や一級土木施工管理技士などの試験に対する補助も行っています。これは金銭面だけでなく、OJTのなかでのコーチングも含みます。


OJTの様子

 私は、若いときに一つのテーマに対して集中的に取り組むことが重要だと考えています。太い幹を持った“I太型”人間を育て、徐々に枝葉を拡げてマネジメントができる“T型”人間となれるような育成を目指していきます。
 人財育成には働きやすい職場環境も不可欠です。情報の共有とひらめき、創造力、クリエイティブな発想をもてる環境です。その際に最も重要になるのが、コミュニケーションです。アイデアをどんどん出し合い、その強みや弱みをみんなで検討していくことが新技術や新製品の開発につながる。そのようなコミュニケーションを図れる職場環境が人財育成にもつながってくると考えています。


コミュニケーションを図れる職場環境が人財育成につながる

 ――コミュニケーションの活性化では
 鶴田 特に意識しているのは「伝わるコミュニケーション」です。「伝わる」と「伝える」は違います。私自身も伝えたことが、相手に本当に伝わっているのか、不安になる時があります。また、自分の方向性がすべて正しいと思っていません。意見やアイデアを出し合い、聞く耳をしっかりと持つ(忍耐強く傾聴する)ことで、自分の言ったことを確認でき、相手の思いや考えを理解できるようになります。社員にも「伝わるコミュニケーション」の徹底をお願いしています。
 ――今後の展開は
 鶴田 これまで培った技術力をさらに深化・高度化させるとともに人財育成にも注力し、社会インフラマネジメントのフロントランナーとして、変化するニーズに柔軟に対応し、想像力とチャレンジ精神を持って、社員とともに取り組んでまいります。
 ――ありがとうございました
(聞き手=大柴功治)
*公開時にタイトル部分の会社名に誤りがありましたので、訂正いたしました。読者の皆様、関係者の方々に深くお詫び申し上げます。

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