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橋梁312橋とトンネル62箇所を管理

北海道開発局小樽開発建設部 倶知安余市道路 仁木IC(仮)~余市IC間は2024年度の開通を目指す

国土交通省 北海道開発局
小樽開発建設部
部長

遠藤 達哉

公開日:2022.06.28

橋梁321橋のうち約半数が高度経済成長期に建設
 トンネルは国道229号が約4分の3を占める

 ――保全事業について。管理橋梁の内訳は
 遠藤 321橋を管理していて、橋種別では鋼橋が116橋、コンクリート橋が205橋です。コンクリート橋にはボックスカルバート60箇所が含まれます。
 完成年次別では1930年代2橋、50年代12橋、60年代96橋、70年代73橋、80年代47橋、90年代34橋、2000年代44橋、10年代12橋、20年代1橋で、高度経済成長期に約半数の橋梁が建設されています。
 延長別は、10m以下が86橋、11m~30mが125橋、31m~50mが38橋、51m~100mが44橋、101m~200mが17橋、201m~300mが10橋、301m~400mが1橋となり、11m~30mが全体の約3分の1を占めています。現在管理している橋梁では、鋼橋最長が国道229号の銭函高架橋(Bランプ)(小樽市)で383m、コンクリート橋最長が国道229号の尾根内大橋(神恵内村)で300m(全体2位)となります。
 路線別では、国道5号104橋、国道229号137橋、国道230号16橋、国道276号36橋、国道337号4橋、国道393号24橋です。
 ――トンネルについても
 遠藤 管理トンネルは62箇所です。工種別は、在来工法が20トンネル、NATMが37トンネル、NATM+在来工法が3トンネル、開削工法が2トンネルとなります。
 完成年次別では、1950年代2トンネル、60年代5トンネル、70年代3トンネル、80年代10トンネル、90年代14トンネル、2000年代23トンネル、10年代4トンネル、20年代1トンネルとなります。90年代と2000年代完成のトンネルが多いのは、国道229号の豊浜トンネルの崩落事故以降に、整備したトンネルが多いためです。路線別でも国道229号が約4分の3を占めています。管内の最も古いトンネルは、1952年完成の畚部(ふごっぺ)トンネル(46m)、次いで1962年完成の稲穂トンネル(1,230m)となります。
 延長別では、100m以下が3トンネル、101m~500mが23トンネル、501m~1,000mが14トンネル、1,001m~2,000mが15トンネル、2,001m~3,000mが6トンネル、3,001m~4,000mが1トンネルで、最長は、3,570mの国道229号の雷電トンネル(岩内町)です。
 路線別では、国道5号16トンネル、国道229号45トンネル、国道393号1トンネルとなっています。

橋梁 Ⅲ判定が46橋、Ⅱ判定が68橋
 トンネル Ⅲ判定が15トンネル、Ⅱ判定が41トンネル

 ――橋梁とトンネルの定期点検結果を教えてください
 遠藤 2021年度末時点で、橋梁はⅠ判定が207橋、Ⅱ判定が68橋、Ⅲ判定が46橋、トンネルはⅠ判定が6トンネル、Ⅱ判定が41トンネル、Ⅲ判定が15トンネルです。
 ――点検を進めてみての橋梁の劣化状況について詳しく教えてください
 遠藤 主な損傷として、鋼橋では漏水に起因する腐食・防食機能の劣化、PC橋は塩害や漏水による剥離・鉄筋露出、ひび割れが多く確認されています。
 部位ごとの損傷では、桁は前述の損傷が非常に多く、床版は防水機能の未施工や劣化にともない、侵入した水の凍結融解が原因とみられるコンクリートの土砂化、下部工では剥離・鉄筋露出、ひび割れ、地覆については塩害および車両の衝突などによる剥離・鉄筋露出、ひび割れ、高欄は塩害による腐食が確認されています。


鋼橋の損傷事例(国道229号岩野橋 )

PC橋の損傷事例(左:国道229号当別橋/右:国道229号 木巻橋)

床版下面の損傷事例(左:国道5号銭函高架橋 Bランプ/右:国道229号磯谷橋)

 ――同様にトンネルの劣化状況についても
 遠藤 在来工法で建設されたトンネルは供用から30~70年が経過し、老朽化による劣化が顕著になっています。
 主な劣化としては、目地部の温度伸縮や貧配合コンクリートの集中などによる覆工の目地部の浮き・剥離、乾燥収縮などによる覆工のひび割れ、水環境の変化や排水設備の経年劣化や遊離石灰などによる排水機能低下などによる覆工の目地部またはひび割れ箇所からの漏水、塩害による附属物の腐食が発生しています。


在来工法トンネルの損傷事例。覆工面のうき・はく離(左:国道5号稲穂トンネル/右:国道229号江の島トンネル)

 NATM工法のトンネルは供用開始から10~30年が経過していますが、供用開始から20年程度経過したトンネルの劣化箇所が増加傾向にあります。
 主な劣化としては、横断目地部の温度伸縮などによる覆工の横断目地部の浮き・剥離、乾燥収縮などによる覆工のひび割れが確認されています。また、覆工の横断目地部またはひび割れ箇所からの漏水も生じており、これは、ロックボルト頭部や吹付コンクリートの凹凸、上半支保工の底板突出部の保護処理不足などによる防水シートの損傷や、排水工などの施工時や覆工コンクリートの打設作業時の排水工の破損、排水設備の経年劣化や遊離石灰などによる排水機能低下などが原因として考えられます。在来工法と同様に塩害による附属物の腐食も見られています。


NATM工法トンネルの損傷事例。覆工面のうき・はく離(左:国道229号キナウシトンネル/右:国道229号来岸トンネル)

2022年度は23橋で橋梁補修工事を実施
 床版防水の施工状況は55%

 ――橋梁の定期点検結果にもとづいた対策の進捗状況は。また、具体的な橋梁について、損傷状況と対策内容を教えてください
 遠藤 2021年度末時点でⅢ判定は46橋で5橋減となりました。2022年度は23橋で補修を実施しています。
 2021年度の具体例としては、鋼橋では国道5号の大浜中橋で、橋面からの漏水による主桁の端部や支承の腐食、床版上面の剥離・鉄筋露出が発生していたため、腐食箇所の塗替塗装や床版の断面修復と床版防水などを実施しました。


国道5号大浜中橋

 コンクリート橋では、国道229号の神泊大橋で主桁や床版下面、橋台などに凍害による剥離が見られたため、左官による断面修復などを行っています。


国道229号神泊大橋

 ――経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強のここ3年間の実績は。また、床版防水の施工状況は
 遠藤 2021年度に18橋、2020年度に23橋、2019年度に20橋と、毎年20橋程度の補修工事を実施していて、2022年度以降も同程度の補修工事を行っていく見込みです。
 床版防水の施工状況は、コンクリート床板を有する全255橋中140橋で施工済みとなっていて、割合は55%となっています。今後、補修工事施工時において橋面舗装に損傷が確認された場合は、舗装補修と合わせて塗膜系の防水を施工する予定です。
 ――塩害による損傷対策事例についてお願いします
 遠藤 2021年度は、国道229号の厳倉橋(ボックスカルバート)で側壁の損傷箇所(剥離・鉄筋露出)を除去し、塩分吸着型断面修復工法(N-SSI工法)による鉄筋の防錆処理と断面修復を施工しました。


国道229号厳倉橋

 ――アルカリ骨材反応による劣化事例は
 遠藤 明確にASRが劣化原因と特定された橋梁はありません。

耐震補強 緊急輸送道路上の対象橋梁は152橋
 対策が必要な橋梁は28橋

 ――耐震補強の進捗状況は
 遠藤 落橋・倒壊等の致命的な損傷に至らないレベルの耐震対策は全橋対応済みです。
  緊急輸送道路上の対象橋梁152橋のうち、平成24年以降道路橋示方書の性能を満たしている、もしくは対策不要としている単径間の橋梁が124橋で、残り28橋は対策が必要になっています。管内は、耐震補強の加速化が求められる地域(今後30年間に震度6弱以上の発生確率が26%以上の地域)に含まれていませんが、状況に応じて早期に対策に取り組んでいきたいと考えています。
 ――支承および伸縮装置の取替えについて2021年度と2022年度の施工(予定)箇所数は
 遠藤 定期点検により要補修とされていた支承について、2021年度に1橋で取替えを実施しました。2022年度も1橋を予定しています。
 伸縮装置についても同じく2021年度は9橋で取替えを実施しており、2022年度は10橋を予定しております。
 ――2021年度および2022年度の鋼橋の塗替え実績・予定を教えてください。また、塗替え時に金属溶射などの新しい重防食の採用事例はありますか
 遠藤 2021年度に橋梁全体の塗装塗替えを実施した橋梁はありません。2022年度も予定はありませんが、橋梁点検結果を受けて部分塗替等を実施しています。また、ここ数年で塗替え時に金属溶射などの重防食の採用事例はありません。
 ――PCBや鉛など有害物を含む既存塗膜の処理はどのように考えていますか
 遠藤 有害物を含有する塗膜の処理は、囲いやクリーンルームの設置による防塵処理を行い、塗膜剥離剤を使用して施工しています。廃棄する既存塗膜は処分場にて適正に処理しています。PCBについては道路橋ではありませんが、横断歩道橋において低濃度の含有が確認されている施設がありますので、処理期限までに適正に処理する予定です。
 ――耐候性鋼材を採用した橋梁の健全度について
 遠藤 耐候性鋼材を採用した橋梁は国道393号に7橋あります。このうち、Ⅱ判定が1橋ありますが、鋼材の劣化・損傷によるものではありません。残りの6橋はⅠ判定で、劣化はないか非常に軽微なものとなっています。

防災対策 2022年度に国道5号の小樽市見晴地区でのり面対策などを実施

 ――全国的に異常気象による土砂災害が相次いでいるなかで、のり面などの防災対策でどのような取組みを行っていますか
 遠藤 2018年からの「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」にもとづき、「法面」「冠水」を含む6項目について13市町村で対策を実施しました。一般国道393号の朝里川温泉地区での落石防護柵設置などとなります。


一般国道393号の朝里川温泉地区での防災対策

 また、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」にもとづき、「法面」「高台避難」「改築」を含む9項目について、「倶知安余市道路」「余市駅前電線共同溝」のほか、19市町村で現地調査と並行して防災・減災、国土強靱化の取組みの加速化・深化を推進しています。2022年度には、国道5号の小樽市見晴地区で法面対策などを実施します。

倶知安余市道路を対象にi-Constructionの取組みを進める
 2022年度のICT活用工事は同道路37工事のうち、19工事で実施

 ――i-Constructionの取組みについて
 遠藤 当部は全国で10箇所選定された「i-Constructionモデル事務所」のひとつになっていて、倶知安余市道路を対象に取組みを進めています。2022年度のICT活用工事は同道路37工事のうち、19工事での実施となっています。また、当部の業務においても2020年度からは橋梁詳細設計業務を発注者指定型のCIM対象業務として取り組んでおり、2020年度は6本(7橋)の橋梁詳細設計業務で実施しました。2021年度は設計段階でのCIM活用を15本(17橋)で実施して、関係機関や調査職員との協議時の説明資料として使用しました。3次元データでわかりやすい資料のため、円滑な合意形成が図られたと考えています。
 先に説明したように同事業は橋梁60橋と2つの長大トンネルがあり、CIMの対象となる構造物が多くあります。また、土工や切り盛りの延長も相当数あります。大構造物は全国規模の建設会社が行いますが、一般土工や橋梁下部工は地場の建設会社が主に施工します。とくに、地場の建設会社がi-Conに取組むことが働き方改革につながると考えていて、力を入れて取り組んでいます。
 北海道開発局では、i-Conの普及促進のために「北海道開発局i-con奨励賞」を創設し、2020年から表彰を行っています。管内の道路事業では、2020年は「銀山大橋P6橋脚外一連工事」(協成建設工業)、「登町改良工事」(長組)、2021年は「町道2番地通橋下部工事」(阿部建設)、「仁木北改良工事」(協成建設工業)、「宝川橋詳細設計業務」(構研エンジニアリング)が受賞しました。
「銀山大橋P6橋脚外一連工事」では、CIMを活用してコンクリート打設のシミュレーションを行うことで打設時の予期せぬトラブルを防止するともに、コンクリートの品質向上を図りました。3DモデルやVRを用いた安全教育も実施しています。


「銀山大橋P6橋脚外一連工事」での取組み

「登町改良工事」はボックスカルバートの施工にあたり、3次元設計データから鉄筋干渉のチェックや組立て手順の確認を行っています。
「町道2番地通橋下部工事」では、スマートフォンとビデオ会議システムをして遠隔臨場を実施したほか、現場確認でもAR活用して配筋などを可視化することで検査の簡略化を図りました。
「仁木北改良工事」は10mを超える軟弱層に400本あまりの深層混合処理工を実施する工事でしたが、あらかじめ作成した地盤改良機の位置や施工情報を管理モニターに表示し、機械オペレーターが操作することで施工の簡略化を実現するとともに、施工履歴データを用いた出来形・品質管理を行いました。


「仁木北改良工事」での取組み

「宝川橋詳細設計業務」では、UAV撮影による地形モデルと構造物モデルを統合することで、より正確で適切な施工検討が可能となり、品質の高い成果が得られました。また、設計内容を容易に把握することにも役立ちました。
 ――ありがとうございました
(聞き手:大柴功治)

 

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