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多角的な人材育成と“オールIHI”で事業環境変化に対応

IHIインフラシステム 上田和哉新社長インタビュー

株式会社IHIインフラシステム
代表取締役社長

上田 和哉 氏

公開日:2022.06.02

大規模更新事業では“オールIHI”で「人」「もの」「技術」を上手に活用
 社会的影響の大きい長大橋の補修・補強工事に取り組むことも使命

 ――大規模更新事業への取り組みについて
 上田 案件ありきと考えています。案件に対して、どのような体制で取り組むかはこれまでと同様に、工種や規模などを勘案しながら決定していきます。ただ、受注できるものをすべて受注してしまうと、人材や協力会社などで問題が出てきますので、案件を選択する必要があると思います。
 海外事業を継続してきて、例えば上下部一体工事などはそのノウハウを生かせます。先に挙げた山王JCTも上下部一体の拡幅工事でした。そのような工事にも取り組んでいきたいと考えています。また、大規模更新事業は規制期間や施工ヤードなどで条件的に厳しいものが多くなっていますので、社会的負担を減らすための架設工法なども提案していきます。
 重要なのは、当社だけという考え方はせずに、IHI、IIKなどの“オールIHI”で「人」「もの」「技術」を上手に活用して事業に取り組み、社会貢献を果たしていくことだと考えています。


国道2号淀川大橋床版取替工事

 ――施工中、もしくは施工予定の特徴的な現場を教えてください
 上田 バンガバンドゥPJグループ担当部長としてバングラデシュに赴任する前は建設部長でしたので、その頃の工事の思い入れが強いです。そのなかのひとつに現在施工中の高速大師橋更新事業があります。橋桁移動設備への大ブロック台船架設が先月と今月に無事完了し、桁上に組み立てるトラベラークレーンで1径間を架設後、2023年度には約2週間の通行止めを実施して既設橋の移動と新設橋の移動・架設を行います。施工には万全を期しますが、万一想定外のことが起きても、期間中に確実に終わらせることができる準備やリスクヘッジをしっかりと行っていきます。


高速大師橋更新事業。2径間の台船架設が無事完了した(弊サイト掲載済み)

 ――多々羅大橋や名港東大橋の耐震補強工事も受注していますね
 上田 長大橋の新設も重要ですが、社会的影響の大きい長大橋の補修・補強工事に取り組むことも当社の使命であると考えています。2012年の若戸大橋ケーブル関係補修工事から案件が増えてきて、主なものではコンゴ民主共和国のマタディ橋保全工事、トルコ共和国の第1・第2ボスポラス橋大規模補修工事に携わり、現在は第2ボスポラス橋ハンガー交換工事を行っています。


若戸大橋/マタディ橋

修繕中(左)と修繕後(中央)の第1ボスポラス橋/第2ボスポラス橋での弾性シール材施工状況(右)

 多々羅大橋や名港東大橋の工事においても、これまでのノウハウを生かして、社会貢献を果たしていきたいと思います。


多々羅大橋(左)/名港東大橋(右)

保全では鋼橋のみならずトータルエンジニアリングを目指す

 ――保全事業に対するお考えを聞かせてください
 上田 大規模更新事業と同様に、“オールIHI”で取り組んでいくことが重要です。劣化や損傷が発生するのは鋼橋だけではないので、PC橋で優れた技術を持つIIKと連携するとともに、川の流れの管理や基礎コンクリートの在り方などにも対応できるトータルエンジニアリングを目指していきたいと考えています。
 ――新技術・新製品の開発では
 上田 自社で開発を進める部分と協調領域で行っていく部分を判断しながら、世の中に対してベストなものを提供していきたいと考えています。
 IIKでは先月、水門設備の維持管理・整備の人材育成のための「防災・水門技術研修所」を開所しました。技術者の早期育成のために、IIKの社員のみならず、同業他社や協力会社、設備を管理・運営する方々など、水門設備に係るすべての方が活用できる場としています。橋梁も同じように、BMSSを地方自治体などの方々に維持管理の効率化のために有効活用してもらいと思います。
 ――自走式床版取替機「Sphinx(スフィンクス)」も開発しました
 上田 床版取替工事で、既設床版の引き剥がしから、撤去、運搬、積込み、新床版の荷取り、運搬、床版の水平旋回、架設におよぶ一連の作業をすべてこなすことのできるものです。立体交差部など、上空に障害物がある箇所でも施工可能で、全幅員の床版パネル(幅14m×長さ2m、最大吊重量17.5t)を撤去、架設できることが特徴となっています。


自走式床版取替機「Sphinx(スフィンクス)」

 施工にあたりさらなる自動化も検討していましたが、床版取替工事はさまざまな現場条件のなかで行わなければなりませんので、現在の形としました。各ニーズに応える形で、汎用品を活用する場合もあるでしょうし、工事単位で開発したほうがいいものもあると思います。ケースバイケースで計画、開発をしていければいいと考えています。
 現在、スフィンクスはIIKとのJVで進めている西湘バイパスのリニューアル工事で活用しています。
 ――海外事業については
 上田 昨年受注した第2ボスポラス橋ハンガー交換工事以降、入札も止まってしまっていますが、人を育てるという意味で、絶対に継続していかなければならない分野です。

若者がやりがいをもって仕事に没頭できる職場環境にしていく

 ――働き方改革については
 上田 私としても思いの強い分野です。土木工学は経験工学の部分が少なからずありますので、2024年から義務化される時間外労働の上限規制や完全週休2日制という観点から考えると、その意味での働き方改革の推進は悩ましいところですが、目標に向けて進めなければなりません。現在の若者は成長が遅いという声も聞かれますが、私はそのようには感じていません。彼ら彼女らは情報処理能力が優れており、今後起こりうる時代の変化に対応できる資質を備えています。そこで、時代にあわせて仕事を変化させていくような環境づくりをしながら、若者がやりがいをもって仕事に没頭できるような職場環境にすることが、私の重要な役割と考えています。
 経験工学の部分はやはりしっかりと腹を据えてやってもらいたいと思っていますので、国内だけでなく海外事業にも積極的に取り組んでいってもらいたいです。
 ――そのための制度整備などで考えていることはありますか
 上田 社員のスキルマップを整備し、ロールモデル・キャリアパスも策定して、一人ひとりとの面談を通じて計画的に人材育成していく動きも始めています。
 ――コロナにより、リモートワークの導入など働き方自体がかなり変わってきています
 上田 在宅勤務はコロナが終息しても、継続する予定です。私もバングラデシュに駐在していましたが、遠隔地にいながらリモートで仕事ができることは非常にプラスになると思いますので、進められる部分は合理化をしていきます。
 ――担い手の確保については
 上田 これまで一般職は大卒を中心に採用してきましたが、今後はその枠は外していきたいと考えています。現在でも、高等専門学校卒業の生徒さんが建設部に入っています。また、大卒も理系であればどの学部からも採用していきます。
 楽しく、やりがいのある仕事だと私は思っていますので、そのやりがいや楽しさを伝え、大事な部分に時間を割ける会社にしていかないと、人がついてきてくれませんので、合理化のためのICTなどへの投資も進めていきます。
 ――ご趣味は
 上田 自然の中に身を置くのが好きなので、キャンプや船釣り、ロードバイク、マラソンで休日を過ごしています。すべて年を取ってから始めたものですが。マラソンはまだ2回完走しただけですが、サブ4(4時間以内での完走)を目指しています。ただ、バングラデシュ駐在中は動画配信の視聴が趣味になってしまいました。
 ――ありがとうございました
(聞き手=大柴功治)

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