道路構造物ジャーナルNET

「何があってもこの鉄道を残す」鉄道マンの志

南阿蘇鉄道 2023年の完全復旧めざし工事は最終盤

南阿蘇鉄道株式会社
専務取締役

津留 恒誉

公開日:2022.05.25

戸下トンネル 立野側の被害が大きく、同部分を中心に補修補強
 バサルト帯版による補修を広範囲で施工

 ――戸下トンネルの損傷状況は
 津留 同トンネルは全長904mという長大トンネルです。
立野側(第一白川橋りょうに隣接している側)坑口上部にクラックが入っており、入口から40m付近は内壁のはらみ出し、大きな輪切り状のひび割れが生じていたほか、全長に渡ってひび割れや剥落、排水不良、路盤湛水などが生じていました。ただし、損傷のひどさは犀角山トンネルより小さく、補修で済ますことが出来ました。


戸下トンネル及びその付近の被災状況


戸下トンネル補修状況(南阿蘇鉄道提供)

 ――補修補強工事に着手したのは
 津留 2018年10月に開始し、2020年3月末に補修補強を完了しました。ひび割れ注入や空洞部への裏込め注入、酷い損傷箇所へのロックボルト打ち込みによる補強などを行いました。2021年度から排水溝の施工や漏水対策(フィルム工)などを引き続いて行い、これも2021年末に完成しました。また、バサルト帯版による補修を広範囲で行っています。これらは立野側坑口から60mまでに集中しています。

第一白川橋りょう 損傷が大きく上部工は架替え
 下部工の補強も行う

 ――第一白川橋りょうは
 津留 1A橋台(以下1A)および1P橋脚(以下1P)側の損傷がひどいことなど損傷が極めて大きく出ていました。損傷は1Aが先行して移動し、1Pが追従するように変位した可能性があります。変位量は最大で鉛直方向に495mm(1A橋台上流側)、白川下流方向に250mm(1A橋台)、支点間距離縮小方向に230mm移動していました。それに伴い部材も1A橋台~1P橋脚間の部材が破断や著しい変形を示し、1A橋台と3P橋脚のローラー沓の逸脱、1P下流橋脚基礎のせん断破壊、2P橋脚ピン支承の台座コンクリートからの浮きあがりが確認されました。


第一白川橋りょうの損傷状況(南阿蘇鉄道提供)

 加えて基礎も起点側(犀角山トンネル出口)の下方斜面(橋りょう基礎部の斜面)は風化した凝灰角礫岩で構成され、割れ目が多く入っており、脆弱な岩質であることが確認されました。終点方(戸下トンネル入口)斜面では、沢の上流側では不安定な浮き石が多く、下流域では橋脚基礎周辺が表流水による浸食が進んでいることなどから、架け替えに際して下部工の補強も必要と判断しました。
 ――いつから第一白川橋りょうに施工に着手したのですか
 津留 設計に2年ほどかかり、2020年1月から開始しました。最初は基礎のための仮設構台の設置などから始めねばなりませんが、河川部局や環境省など様々なセクションの認可を受ける必要がありました。その後、旧橋の撤去、基礎の補強を行い、現在は新橋の架設を進めています。


旧橋の撤去、新橋の架設状況(南阿蘇鉄道提供)

 ――第一白川橋りょうの撤去・架設・基礎補強のために必要な設備は多岐にわたります。犀角山トンネルは早期に崩し、そこをヤードにできますが、戸下側はどのようにタワークレーンや設備を運んだのですか
 津留 戸下トンネルを直しながら、工事を調整してそれらの設備を運んでいきました。
 ――現状は
 津留 中央支間が終わって、側径間を施工中です。
 ――上部工が終わるのは
 津留 10月くらいを予定しています。そこから仮設構造物の撤去が始まります。それまでに軌道工事もラップして施工していきます。戸下トンネルの軌道も撤去と同時に施工していきます。
来年の2月末までには軌道工事も終わらせます。それから信号通信などの設置や検査を行い、年度末に試運転までやる予定で、完全復旧して営業を開始するのは2023年夏を予定しています。
 ――その際は家族で乗車させていただきます。完全復旧を心待ちにしています。本日はありがとうございました

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