道路構造物ジャーナルNET

奉職から43年余り 現役ラストメッセージ

2022年新春インタビュー① 土木研究所 西川理事長インタビュー

国立研究開発法人
土木研究所
理事長

西川 和廣

公開日:2022.01.01

グリーンレーザーを1台購入
 橋梁や河川構造物あるいは河川の河道の変遷を3次元で管理

 ――国土交通省から2025年度までに、直轄109水系でグリーンレーザーとドローンを活用した3D管内図を作成することが発表されました。あわせて土研では橋梁下部工の洗掘状況の調査など、河川とCAESARの基礎チームなどの共同も行うという話を以前されていましたね
 西川 きっかけは今夏の水害で木曽川と黄瀬川のふたつの橋梁が洗掘により被災したことです。土研の河川環境を担当している部署はグリーンレーザーを前から使用していました。環境のみでなぜ治水に活用しないのかと尋ねたら、200mごとの断面計測は直轄でも以前から行っている、との答えでした。そのデータで、木曽川の橋梁の洗掘状況がわかるのではないかと言ったら、2時間くらいでデータを出してくれました。直近ではなく、少し離れている箇所のデータでしたが、傾いた当該橋梁の上流側に澪筋が固定されていて、橋脚の延長線上の河床の低下がわずかながら速いように見えました。3次元で5年ごとにデータを取得しておけば、特異な掘れ方がしている箇所は分かります。出水したときの洗掘深が分からないと40年来言っていますが、わかったとしても手遅れで、3次元で定期的に見ていれば、いずれ問題になるところは一目で分かる用になるという話です。

黄瀬川大橋の損傷(井手迫瑞樹撮影)


木曽川渡河部に架かる川島大橋の損傷状況(読者提供)
 ――つくづくセクションの壁を感じますね
 西川 研究でも、実際に、一緒に動けと言ったら、最初は反発がありました。ユーザーにとっては、河川管理者も道路管理者も関係ないのですが。
 今年は中長期計画の期末に相当する年なので、余った予算でグリーンレーザーを土研で1台購入することにしました。直轄での測量はそれぞれの機関に任せて、土研は自分たちに必要なデータを必要なときに、また地方自治体管理の橋梁周辺のデータ取得も考えています。どのくらいの精度で、どのくらいの範囲のデータがあれば役に立つか、を調べるとともに、河川管理者としても横断構造物として堰、段差工、根固め工などさまざまなものがあり、それにも当然使おうと考えています。橋梁がスタートですが、河川構造物あるいは河川の河道の変化を3次元で管理するとしたら、どのくらいの間隔、精度で何を撮るべきかという研究を土研で行うことで、河川管理のDXにつなげていけばいいと考えています。何よりも河川構造物に予防保全という考え方が出てきたことが大きいと思っています。
 ――土研としてグリーンレーザーでの計測は地方自治体の要望に応じて行うのですか
 西川 現時点では、土研から声をかけて、場所を提供してもらうかわりに土研がいろいろと対応して、結果を戻す形になると思います。茨城県と富山市がAIの共同研究パートナーになっていますので、声をかけやすいです。河川も普段から付き合いのある、頼みやすい自治体から進めていくことになると思います。まずは、使うことの利点を見せることが大事だと思います。

DX実験フィールドとDXルーム
 災害現場で撮影した画像を土研に転送、3DCIMを作成して技術支援

 ――DXルームを用いた災害および保全への対応について
 西川 地滑りチームはコロナでリモートになったこともあり、DXを活用した対応が標準になりつつあります。災害現場から送られてきた点群データを用いて3DCIMを作成すると、現地で見る以上に地すべりの全体像から、末端の人家との位置関係まで、鳥の目虫の目で詳しく見ることが出来、地滑り起点や規模、原因など、十分に検討をした上で現地に赴くことも出来ますし、そのまま土研から技術指導を行なうことも出来ます。大規模で広域な災害があった場合など、同時に複数の現場の対応が可能になることが期待されています。このための装置を常置した部屋を現在整備していて、他の分野、例えば橋の損傷に対する技術指導などにも使用する予定です。
 キーワードは3次元です。ドローンで撮影した画像データも加工して3Dで見られるようにすると、2次元の写真ではよく分からないものを判断できるようになる可能性があります。もう一歩進めばAIに学習させることもできるかもしれません。先ほど述べた診断AIでは、当面人力点検が前提ですが、現在近接目視が必要なことをひとつひとつドローンに置き換えていって、最終的には足場をかけないで済むようにしたい。究極的には自律飛行で点検してくれることを夢見ています。

DX実験フィールドの開場
 建設機械の制御信号をルール化したミドルウェアを共同構築

 ――DX実験フィールドについて
 西川 DX実験フィールドでは、広い敷地とローカル5G環境の整備で、自律施工の研究を行います。現在、大手ゼネコン各社それぞれ特定の建機メーカーと組んで、無人化施工から自律施工への技術開発を進めています。会社ごとに建機メーカーが決まっているのは運用面での柔軟性がありませんし、中小規模のゼネコンにまで普及させないと、生産性向上が期待通りには進みません。そこで土研が場を提供し旗を振ることで制御信号の共通化を図り、ハードウェアや高度なソフトウェアは民間が進めるということを呼びかけています。


協調領域の提案例(土木研究所発表資料より)

⾃律施⼯技術開発促進に向けた⼟⽊研究所内でのデモンストレーション状況。両車両とも無人だ。(井手迫瑞樹撮影)

 共通する部分を協調領域、競い合う部分を競争領域と称して議論を続けていますが、先行している会社もあり、利害もあるので慎重に進めています。少しずつ理解は進みつつあるようで、その辺の調整ができたら、一気に進むと思います。仮称OPERA( Open Platform for Earthwork with Robotics and Autonomy)として展開しています。
 ――調整役としての土研の役割は重要ですね
 西川 土研が調整役やレフリーになれば現場への実装がスムーズになります。各社は機器や工法の開発に注力してもらい、それを評価し証明するするフィールドをつくるというスタンスです。土研が評価のための実験方法や試験装置を提供すれば、複数の会社が競争できる環境が整います。これは私が炭素繊維シートをRC床版の補強に使えるようにしたときの手法です。土研はそのような仕事を積極的にすべきだと考えています。
 ――DXは2,3年で終わる話ではないと言われています
 西川 これがどのように発展するのか。種を撒いたか、耕しただけなのかわかりませんが、すでに動き出しています。

 ――最後に業界的には西川ロスが懸念されます。今後はどのようにされますか
 西川 体力的に責任のある立場はこれでおわりにしたいと思っています。ただ橋の診断AIシステムについては、私の思いつきから始めたものなので、CAESARで困ったことがあれば、いつでも力になろうと考えています。
 ――ありがとうございました。今後もお願いします!

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