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奉職から43年余り 現役ラストメッセージ

2022年新春インタビュー① 土木研究所 西川理事長インタビュー

国立研究開発法人
土木研究所
理事長

西川 和廣

公開日:2022.01.01

電磁波レーダーの現場実装の検討が着々と進む
 すべての橋について5年に1度、床版のデータを取得したい

 ――床版の損傷を点検する際に使う電磁波レーダーの開発状況はどこまで進んでいますか
 西川 現在RC床版の損傷の大半は土砂化と考えられます。土砂化は水の侵入がなければ発生しないので、まずは床版上面に水があることを見つけられればいいという考えで進めています。特異なケースもなくはないですが、おおかた適用可能だと思っていますので、スクリーニングとして、十分に適用可能だと思っています。
 一方で床版の断面の解析をすると、床版と舗装の間の線が明確に確認できます。はっきりとした線になっていれば健全、それが乱れているところは土砂化しているというように判断ができます。土砂化の深さは分からなくても、土砂化の判断が出たところだけ、孔を開けるか、舗装を剥いで詳細に調査すればいい、ということになります。
 ――全国の床版を全て点検するというのはなかなか大変そうですが
 西川 予防保全のためのスクリーニングに用いるには、すべての橋面に対し5年に一度は電磁波レーダーを積んだ車を走らせなければなりません。そのためには我々が使用してきた機器と同等の性能を持つ車両を、まずは各地整に1台ずつは欲しいと私は思っていますが、本省道路局の理解も進んでいるので、期待できるのではないかと思っています。

過去の国交省管轄の橋梁を使った電磁波レーダー搭載車両による床版調査実施例(当サイト既掲載)

土砂化(輪荷重)のメカニズムの各状態と電磁波レーダ調査結果の関係

グースアスファルト防水 橋面だけでなく土工部も
 業際的な検討が必要

 ――橋面グースアスファルト防水の実装状況は
 西川 舗装チームの藪上席研究員が私の考え方を理解してくれて、開発を進めてくれました。都市高速の現場などでも実装が進んでいるようです。

グースアスファルト防水の施工状況(福岡北九州高速道路公社提供)

 ――土工部における防水層の必要性についても、西川さんは言及されていますね。床版の場合、薄い部材、かつ土砂化現象が起きるということで、防水工を行います。ただ、従来の床版防水のような薄い膜ではすぐに損傷するので、グースアスファルトの水密性を活かして、さらに国内で生産できる改質グースを用いて床版防水をしていく、ということは分かりますが、土工部における防水層とは何ですか
 西川 従来の考え方では、土工部への防水層の必要性は発想できないと思います。しかし、舗装の壊れ方を注視していると、舗装本体が先行して壊れたのではなく、路盤や路床が水の影響で壊れ、それにより舗装にポットホールが生じている可能性があります。そもそも損傷を招いている水はどこから入っているのか、という問題提起を最近舗装業者自身が言い出しています。防水工の必要性について気づいてくれた人も出てきています。
 ――舗装の下の路床などから考えないといけないということですね
 西川 最終的に表に見えるのは、ひび割れなどですが、それがどのようなメカニズムで出てくるか、何も考えていなくて、表層と基層の舗装だけで解決しようとしています。舗装の技術の世界が少し変わる刺激になったならば良かったと思っています。
 ――西川さんとしては、土工の防水層はグースを念頭に置いているのですか
 西川 もっといいものがあれば、それでもいいと思っています。現在、排水性舗装を行っているところは、当然下に水がいかないようにしているはずです。それをどうするかは舗装チームや舗装関係者で考えたらいいと思います。私としては、表面だけ見るのではなく、下のことも考えなければならないということです。舗装は本来路面から速やかに水を排除するためのものです。しかし、排水先の土工部や、山間部の斜面からの水の処理など、斜面と舗装の専門家が一緒に考える必要があります。
 ――橋梁の場合の、床版まで打つ業者と、防水層と舗装を行う舗装業者とのせめぎあいの記憶が甦りますね
 西川 私が土研の理事長を5年間やらせてもらって良かったことは、多数ある分野が境界を接する分野となぜ一緒にやらないのか、と他分野との協力を強く言えるようになったことです。最近は、それぞれの分野が他部門との関係や劣化・損傷メカニズムについて少しずつ考えてくれるようになりました。

CoolLaserの現場実装をバックアップ
 土研が行う融資事業?

 ――次に防食分野ですが、新技術としてのレーザーブラストの開発にもかかわっておられますね
 西川 土研が自ら開発する技術というわけではなくて、鋼橋の腐食に興味を持っていた関係で、レーザーで錆や塗膜を除去する技術のJIS化のための委員会に頼まれて入った経緯があり、その時にトヨコーさんとの付き合いができました。
 2年前くらいから土研が「革新的社会資本整備研究開発推進事業」という、現場実装と収益化への最後の一歩に対する無利子融資業務を担うことになりました。もちろん官邸発の無茶振りです。興味のある方は、是非土研のホームページをご覧ください。
 この事業を引き受けることになったとき、真っ先に思いついたのがトヨコーの『CoolLaser』でした。ほとんど技術開発は出来ていて、塗装の除去まではできていましたが、熱による塗装に有害な酸化皮膜が残るため、そのまま塗装することはできませんでした。下地処理として使えるまでの、最後の一歩を開発するための融資を行うものです。
 先日、開発状況の中間審査を行うため、土研でデモをやってもらいました(下写真)。

 ――CoolLaserの下地処理を見ましたが、レーザーブラストである程度の下地処理ができるとは思いませんでした
 西川 出力も上げたので、スピードも速くなりました。酸化被膜についても工夫次第で無害化する可能性が見えてきました。
 ――耐候性鋼材は普通のブラストでは硬くて除去できませんが、レーザーブラストではかなりの部分、除去できますね
 西川 もともと工場での錆の清掃や有害物質を含む塗膜の除去が期待されていました。レーザーで瞬時に蒸発させ、バキュームで集塵してしまうので、ヒュームだけでなく余分な廃棄物もほとんど出ません。錆だけでなく塩分も同時に蒸発させて除去できることが、何よりも魅力でした。
 耐候性鋼材の異常錆の除去については大きな期待を寄せています。また狭隘部で施工できるヘッドの開発も同時に進めているので、それができると、腐食が進んだ鋼橋の維持管理に強力な武器が加わります。診断AIを全国展開するときにも、この工法を組み込むことができると思います。
もう一つ、耐候性鋼材の錆の良し悪しを判断する技術として、日鉄防食が開発したRST(イオン透過抵抗測定装置)も組み込んで、錆の状況を定量的、客観的に判断し、CoolLaserにより異常錆を除去して即塗装を行うという、耐候性橋梁の維持管理システムを完成出来るのではないかと期待しています。
 ――レーザーブラストについては厚生労働省も関心があるようですが
 西川 安全性の面で対応が必要ですが、比較的簡単な養生で済みます。
 トヨコーが施工するグループ(一般社団法人レーザー施工研究会)をつくって、講習会を行ったり、施工者や監督者に資格を与えたりしています。このような形ができていて、その中に厚労省の人も入っているので、しっかりした安全対策ができるようになると思います。
 ――実装に近いですね
 西川 もう使用してもいい段階です。最後に軽くブラストを行う、あるいはカップワイヤーで1種ケレン相当の下地形成ができる見込みも立っています。さらに高出力化した装置をうまく使うことで、さらに効率化することも視野に入っているようです。
 ――次期防食便覧に入れる形ですか
 西川 扱うことになるでしょうね。

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