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弾性合成桁という考え方を取り入れ連続合成桁の床版取替えを容易にする

「連続合成桁橋における床版取替え技術の現状と展開」を発刊

土木学会 複合構造委員会
床版取替えにおける既設合成桁橋の設計・施工技術に関する研究小委員会
委員長

大垣 賀津雄

公開日:2021.10.18

Hydro-Jet RD工法やサブマリンスライサーなど最新の知見も提示
 桁補強は当て板よりもCFRP貼り付け補強のほうが適切ではないか

 ――既設合成桁の床版取替えに関しては桁と床版との接合部が何であるかが、取替えの際のクリティカルになります。とりわけ馬蹄型ジベルの根元の肉厚なコの字プレートがある箇所では、みな苦しんでいます。そうした除去方法については、何か提案していますか
 大垣 本委員会では54橋の実績調査を行っていますが、既設桁・床版間の接合方法は、合成桁の場合、馬蹄型ジベルを使っていたのは15橋、スタッドが19橋でした。巻末には調査橋梁の詳細なデータを付属しているので、それを紐解いていけば、整理はできると思います。
撤去方法は、標準的な例のほかに、中央道落合川橋で使用されたサブマリンスライサーや、阪神高速道路で使用されたHydro-Jet RD工法などを最近の新技術実施例として紹介しています。馬蹄型ジベルの撤去については今後の課題です。

Hydro-Jet RD工法の概要/工法設備(当サイト既掲載)
Hydro-Jet RD工法の施工状況①(当サイト既掲載)

Hydro-Jet RD工法の施工状況②(当サイト既掲載)

馬蹄型ジベル例(当サイト既掲載)

サブマリンスライサー概要図(当サイト既掲載)

サブマリンスライサー設備概要(当サイト既掲載)

サブマリンスライサー施工状況(当サイト既掲載)

 ――第5章の「床版取替え時の主桁の補強法」では,各種補強方法が示されているが、その内容と対象、補強選択優先順位を具体的に示してほしいのですが
 大垣 第5章は補修方法とそのタイミングについて書かれています。現状は当て板が多いわけですが、当て板をする場合の添接事例やFRP、外ケーブル補強などの事例を紹介しています。実際の補修補強方法の優先順位は橋梁によって変わってくると思いますので、それぞれの検討材料を提示しているのがその内容です。ただし個人的には、ただでさえ単独では弱い合成桁に穴をあけるのは好ましくないと考えています。その意味では定着部が必要な外ケーブルや添接孔が必要な当て板よりもCFRP貼り付け補強のほうが適切ではないかと感じています。

(日鉄ケミカル&マテリアル提供)

 とりわけ合成桁にとってのリスクは床版を撤去する際にリスクが生じます。合成桁は鋼桁単独になった時、構造的に弱いですから。その際に行われている対策を実績で示し、さらに取替えの際の留意点を示しました。

連続合成桁橋の補強における課題と補強方法の提案も行う
 床版を撤去した状態で桁補強を行うタイミングを推奨

 ――主桁の補強量の適正化は、大規模更新において重要な項目です。こうした点について報告書では書かれていますか
 大垣 まず、合成桁橋一般の床版取替え時の鋼桁の補強方法として、補強のタイミングと効果、添接による鋼桁の補強、CFRP接合を用いた鋼桁の補強、鋼桁の座屈防止対策 、ケーブルによる鋼桁の補強、CFRP外ケーブルによる鋼桁の補強、特殊な補強方法について内容を示しました。
 連続合成桁橋の補強における課題と補強方法の提案も行っており、連続合成桁橋の補強における課題、連続合成桁橋の補強方法および特殊な補強方法の提案も示しています。

 ――補強のタイミングと効果とは何ですか
 大垣 桁補強時の床版の有無によって補強効果が変わる点を考慮し、本書では床版を撤去した状態で桁補強を行うことで、上部工死荷重の大部分を占める床版死荷重に対して補強効果が得られるため有効であると判断して推奨しています。ただし、床版撤去状態で桁補強を行う場合、通行規制が必要となるため、床版撤去前に補強材を仮止めしておき、床版撤去後にボルトを本締めすることで、規制期間の短縮を可能にできる解決策を示しています。

合成桁の補強例(当サイト既掲載)
 ――連続合成桁の補強に関する課題や提案は
 大垣 合成桁全体としては、上フランジなど圧縮力がかかる個所の座屈、ウエブの座屈や横倒れ座屈などを重点的に補強しなくてはなりません。中間支点部の下フランジもそうですが、圧縮側のフランジ座屈などにも気を付ける必要があります。既往の補強実績だけでなく、できればそうした座屈のシミュレーションを行い、その結果を纏められればいいのですが、そこまでまとめることはできませんでした。
 連続合成桁特有の課題としては、中間支点の上フランジの引張応力、下フランジの圧縮応力などへの対応、支点上横桁を跨いだ補強部材の追加、中間支点の支承部など部材追加が困難な場合の補強方法が課題としてあります。
 ――連続合成桁の補強方法の提案はどんな具体的手法がありますか
 大垣 補強効果を高めるためには、上フランジに直接補強材を設置するのが理想ですが、床版撤去前では通常のボルト接合は困難です。そのため、片側からの接合方法としてワンサイドボルトやスタッドボルトによる施工を紹介しています。

実績調査も紹介

 ――床版取替えも実績のある会社とこれから参画していく会社があります。実績のある会社は、試行錯誤を経て、撤去方法や補強方法、補強量の適正化など施工精度は上がっていますが、これから参画する会社はそうはいきません。補強方法や補強量を適正化するための道筋のようなものがこの本に書かれていれば、みな重宝すると思うのですが
 大垣 現在、合成桁を含む床版取替えで先行して実績を積んでいるグループはその多くが、PC専業でありながら鋼橋ファブがグループ内にあるか、半ば協業関係が常態化しています。しかし、今後はそうでない業者や地方のゼネコンが施工することが考えられます。そうした場合、補強方法として優先順位が高いのは炭素繊維補強(CFRP)材でしょう。鋼橋ファブが参画していれば当て板でもいいのですが、CFRPの方が施工は簡単です。また、母材に孔をあけなくて済みますし、補強材の精度を気にせず済みます。補強量の計算さえ間違いなくできれば、大丈夫です。これは報告書とは別に私自身の研究テーマとしてまとめる予定です。
 ――CFRPで補強する場合、既設桁の塗膜は除去する必要がありますか
 大垣 CFRP補強材を母材とうまく接着させるためには塗膜を除去して、下地を出すことは必須です。
 ――本書では実績調査も行っていますが、それによって得られた知見は
 大垣 項目としては橋梁名、発注者、所在地、橋梁施工年度、床版取替え施工年度、上部構造形式(取替え前)、橋梁諸元、設計活荷重、主桁諸元、床版支間割、合成・非合成区分、床版の諸元、桁と床版の接合方法、中間支点部での設計、主桁の補強、床版取替え時の架設機材、担当した会社、参考文献、備考などを調査しています。
 設計活荷重、桁と床版の接合方法は取替え前後で記載しています。主桁の補強は施工時と完成系両方共を載せています。床版の諸元については、取替え前後の床版構造、取替え後の床版の材料諸元、取替え前後の床版厚、床版パネル同士の接合方法まで細かく記しました。
プレキャストパネル同士の接合方法はループ継手が一般的ですが、最近開発が進んでいる合理的な継手方法の紹介も行っています。そのほか、中間支点上の設計・施工の留意点などについて記しています。
 第2章ではその内容をさらに分析的にわかりやすく載せています。分析項目や橋梁構造による分類は、下図の通りです。
分析項目

橋梁構造による分類


合成桁の床版取替事例①(横河ブリッジ提供)

合成桁の床版取替事例②(ショーボンド建設提供)

 ――ありがとうございました

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