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三井住友建設グループ入りのシナジー……大規模更新、複合橋梁などで発揮目指す

三井住友建設鉄構エンジニアリング 松田篤社長インタビュー

三井住友建設鉄構エンジニアリング株式会社
代表取締役社長

松田 篤 氏

公開日:2021.02.10

中長期的には売上高200億円を目指す
 内訳は新設75億円、保全75億円、沿岸50億円

 ――過去2年の売上・利益及び、部門別売上・利益率の推移とその要因、今年度売上・利益見込み、鋼橋t数について教えてください
 松田 2018年度が売上168億円、経常利益12.7億円、19年度が売上179億円、経常利益7.2億円となっています。今年度は、昨年度における鋼橋発注の大幅な減少が響いて、売上高は150億円を割る見込みで、経常利益も苦戦している状況ですが、年度末まで引き続き少しでも受注を確保するようチャレンジしていきます。
 ――18年度と比べて19年度は増収減益となっていますが要因は
 松田 19年度が減少したわけでなく、むしろこの数字が常態です。18年度は採算の良い工事に恵まれたことが寄与し、利益が伸びました。
 ――来年度以降は
 松田 劇的に回復させるためには、母数となる発注量の増加が無ければ難しいと思います。三井住友建設の傘下に入り、JVを組むことによって単独の状態より受注機会は増加すると考えています。また、来年度以降、数年間は大阪湾岸道路西伸部もあり、多少は落ち着くないし増加すると考えています。但し、「その後」を見据えていく必要は強く感じています。
 ――部門別売上は
 松田 現在は新設橋梁6割、保全2割、沿岸構造物2割となっています。
 ――今後の中期的な経営目標は
 松田 橋梁事業は新設に代わり保全が拡大していくであろうことや、沿岸構造物事業においては、従来の浮体構造物だけでなく拡大の余地があると考えています。例えば環境省などと取り組んできたものとして沿岸波力発電があります。

沿岸構造物事業にも秀でている

 こうした動きを考慮して、中期的には新設75億円、保全75億円、沿岸構造物50億円の約200億円の売上を目指します。鋼橋t数的には、現在千葉と大分工場合わせて年最大1万tの鋼橋製作能力を有しますが、この8割に当たる年8千t程度の生産量は継続的に確保したいと考えています。
 ――現在施工中、今後施工予定の魅力的な現場について
 松田 やはり愛媛県発注の事業で、現在鋼桁の架設が進められている鋼・コンクリート複合斜張橋である岩城橋建設工事(その2)です。ここは先ほど話した通り、親会社となった三井住友建設とJVを組んでいることもあり、象徴的な現場と言えます。現在、架設桁先端のエレクションノーズにて、順次海上より吊上げ架設しているところです。

愛媛県発注:岩城橋(当JV工区:生名島側(右))
 NEXCO西日本の佐世保工事では、西九州道の4車線化工事の一部である沖新高架橋の鋼橋部(鋼3+4径間連続鋼床版箱桁、鋼重約3,000t、送り出し架設が中心)を横河ブリッジとのJVで受注し、詳細設計中です。
 ――既設の補修補強ではどうですか
 松田 少し前になりますが、熊本地震で大きな被害を受けたNEXCO西日本の白滝川橋、並柳橋では、当社の総力を結集して、短期間での補修補強、復旧を成し遂げました。

復旧工事を行った並柳橋

橋桁の撤去・架設を行った、兵庫県発注の鳴尾浜橋

 最近では東京都を中心に受注しており、青山墓地の近くに架かる青山橋や、蔵前橋通りやJR総武線などを跨ぐ箇所にある総武陸橋で支承取替などを中心とした長寿命化および耐震補強工事を行っています。総武陸橋では、入社3年目の女性社員が活躍しています。
 ――新設のみならず、大規模更新事業も含めた保全や海外事業も考慮して、どのように組織や人員体制、工場を配置していこうと考えていますか
 松田 現在、橋梁工場としては、千葉、大分の2工場体制となっています。ただし、両工場ともそれほど生産能力は高く無く、1工場年間最大5千t程度です。今後、大阪湾岸道路西伸部などがあり、一時的に生産能力を超える場合もありますが、その場合はブロック外注などにより凌いでいく予定で、工場を拡張するということは考えていません。
 ――橋梁の発注t数が40万tを切った時期のことですが、ある鋼橋ファブの社長が、これからはファブレスだ、海外の子会社工場で製作して輸入して事足りると宣っていました。発注量の減少と、国外に目を向けざるを得ない現状は、そういう時代が目前に来ているという兆しかもしれませんね
 松田 三井E&Sグループには海外にMTSCという合弁会社があり、年産4千tの生産能力を有します。ベトナム国内で24年の実績があり、鉄道のトラス橋や鋼道路橋(スリランカやベトナム国内の橋梁など)を実際に生産しており、製品の品質は国内とそれほど遜色がありません。鋼材輸送や製作部材の輸送費を考慮しても、生産コストを考えればトントンか少し安いくらいです。工期に余裕があり輸送に要する時間を見込むことができれば技術的には十分対応可能ですね。俄かに切り替えるということは考えていませんが。
 ――組織や人員の再配置は
 松田 橋梁保全に関しては、短中期的にはスキルを有した人材の中途採用の強化です。ただ、そうした人材は争奪戦の様相が濃く、なかなか当社が欲しいと考える人材は確保できてないのが現状です。中長期を見据え若い人材の確保に努めています。バブル崩壊以降、新卒の雇用を抑制していた結果、年齢構成が非常に歪になっています。ここ数年は8~10人程度の新卒雇用を行っています。若い人材に対してマルチスキル化を目的に、適性を見極めながら配置転換を実施し、新設、保全、沿岸すべての技術に対応できるようにしていきたいと考えています。海外についても自社のみならず三井住友建設グループとの人材交流を促進し、経験を積ませていきたいと考えています。
 ――新卒者に占める女性の割合は
 松田 1~2人ですが、今後は増やしていきたいと考えています。
 ――covid-19(新型コロナウィルス)の蔓延もありリモートワークが進んでいます。働き方改革をどのように考えていますか
 松田 新型コロナによる影響は1年以上に及んでいます。最初は不便さも感じましたが、最近は慣れてきた感もあります。考え方を変えれば、この状況も悪くありません。
職種にもよりますが、在宅勤務が可能な職種については、ポストコロナであっても継続実施することにより通勤時間ロスが解消され、自由な時間が増えるメリットは大きいと考えます。
 問題は現場と工場です。現状ではこうした働き方改革は難しい状況ですが、ICTを用いた生産性向上を真剣に行うことで、省人化、生産性の向上を図り、働き方改革につなげることができると考えています。
 ――一方で、若手の教育には悪影響があるとの考え方があります
 松田 現場の仕事は完全自動化など絶対にできません。だから現場での若手技術者の教育はポストコロナでも必須でしょう。但し、集合研修などのメリットは大きいことから研修においても内容に応じ、リモートを活用していきます。
 ――若手技術者はインハウス志望が多いように見えますが、現場に従事する職員に対するインセンティブを与えるようなことは考えていますか
 松田 確かに新卒社員の職種志望は必ずしも明確ではなく、入社した後のギャップに悩む人もいます。ただ、これは我々が見極めて適切な人材配置に努め、合っていなければ速やかに配置転換するという対応を取ればよいと考えています。現場だからと言って必要以上のインセンティブを付与することは考えていません。最近は現場志望の新卒者も多く、頼もしく感じています。マルチタスクが基本ですが、僅かな人員ではありますがスペシャリストを作ることも重要であると思っています。
 ――ありがとうございました
(2021年2月10日掲載)

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