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橋梁耐震や大鳴門橋の作業車改造なども着々と進む

2020年新春インタビュー 本四高速鳴門 塩害、鋼床版疲労など様々な対策必要

本州四国連絡高速道路株式会社
鳴門管理センター
所長

磯江 浩 氏

公開日:2020.01.01

 本州四国連絡道路鳴門管理センターは、神戸淡路鳴門自動車道のうち、津名一宮IC~鳴門IC間延長44.6kmを管理している。同区間には鳴門の渦潮で名高い鳴門海峡に国内有数の鋼吊橋である大鳴門橋などがあり、橋梁延長は11.8kmに達する。海峡部橋梁であることから塩害環境が厳しく、鋼・コンクリートともに防食には細心の注意が必要だ。また耐震補強も喫緊の課題になっている。大鳴門橋の桁内・外面作業車の改造や、検査路などの防食の話題なども含め、磯江浩所長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)

津名一宮IC~鳴門IC間44.6kmを所管
 橋梁は98橋11.8km、トンネルは6チューブを管理

 ――鳴門管理センターの概要から
 磯江所長 本四高速は、神戸淡路鳴門自動車道、瀬戸中央自動車道、西瀬戸自動車道を管理しており、鳴門管理センターは神戸淡路鳴門自動車道(89km)の南側半分である津名一宮IC~鳴門ICの延長44.6kmを管理しています。


管内概要/管理体制図(本州四国連絡高速道路提供、以下注釈なきは同、クリックで拡大できます)

 ――管内の構造物の内訳について伺います。供用年次別では
 磯江 上下1橋で数えて、管内55橋を管理しています(上下別では98橋)。
大鳴門橋を含む西淡出入口(西淡三原ICと淡路島南IC間の仮出入口)~鳴門北IC(暫定4車線)と津名一宮IC~洲本IC間(暫定2車線)が昭和60年度に供用しています。洲本IC~淡路島南IC間は昭和62、63年度に暫定4車線で供用、鳴門北IC~鳴門IC間は昭和62年度に暫定2車線で供用しています。平成9年度には明石海峡大橋の開通にあわせて、全線を4車線化しました。


管内橋梁一覧

 そのような供用となっていますので、昭和60年度12橋、昭和62年度3橋、昭和63年度1橋、平成9年度1橋、昭和60年度+平成9年度が13橋、昭和62年度+昭和63年度17橋、昭和62年度+平成9年度8橋です。
 トンネルは3トンネル(6チューブ)で、昭和62年度に3チューブ、平成9年度に3チューブ供用しており、すべてNATM工法です。
 ――構造別延長は
 磯江 管理延長44.6kmのうち、橋梁が11.8km、トンネル1.2km、土工31.6kmで、土工部分が70%を占めています。

劣化区分Ⅲは奥畑川橋の1橋
 耐震補強 優先順位の高い21橋は2021年度末まで完了目指す

 ――点検結果と劣化状況は
 磯江 橋梁では、判定区分Ⅲ(早期措置段階)は奥畑川橋の1橋で、そのほかはⅡ・Ⅰ(予防保全段階・健全)でした。
 ――主な業務は
 磯江 道路管理、交通管理、料金収受、保全(点検管理、清掃、植栽管理、修繕・改良工事)、橋梁耐震補強、長大橋(大鳴門橋)の保全があります。耐震補強については、昭和55年道示以前の橋梁が管内には数橋ありますが、すべて完了しています。代替路のない海峡部直近IC間(淡路島南IC~鳴門IC)についても耐震補強は完了しています。
 今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が26%以上の地域にある対象橋梁については2021年度末までに完了を目指していますので、その補強を進めている状況です。未完了は、淡路島内の橋梁です。
 管理橋梁55橋のうち、海峡部直近IC間を除く淡路島内の震度6弱の発生確率が26%以上の地域にある橋梁は21橋あります。26%以上の橋梁については今年度発注しました。
 それ以外に、連続性を図る目的で発生確率26%未満でも淡路島南IC~洲本IC間はすべて耐震補強を行う予定です。対象橋梁は3橋で、それで洲本ICまでのすべての橋梁が完了します。
 参考までに南海トラフ地震による津波対策ですが、管内のすべてのICは津波の影響を受けません。また、当管理センターは海岸から約300m陸に位置していますが、海抜約8mなので、浸水はありません。ただ、鳴門北ICと接続している海側の県道は浸水しますので、大津波警報が発令されたら、出口封鎖の対策をとります。
 ――県道側からの避難は
 磯江 入口は開けているので避難してきていただいても大丈夫です。

風による通行止めが多く発生
 交通量は25,000台強 大型車混入率は27.6%

 ――風速が非常に大きい環境ですね
 磯江 管内の特徴として風が強く、風による通行止めがかなり発生しています。しかし、本四間の代替ルートがなく、大鳴門橋が通行止めになると、瀬戸大橋まで迂回しなければなりません(走行距離は3倍になる)。前回の台風時(8月15日の台風10号)は、瀬戸大橋も通行止めとなりましたが、大鳴門橋も16時間通行止めとなりました。


大鳴門橋の通行止めは強風によるものが7割を占める

 平成16年度から30年度までの通行止め内訳では、全件数44件のうち強風によるものが30件で約7割を占めています。台風によるものもありますし、3~4月は季節風によるものがあります。強風の理由は、鳴門海峡が海上部で狭まっている地形となっており、風の通り道となっているためです。とくに、当管理センターよりも西側を通る台風時に風が強くなります。最大瞬間風速の記録は、昭和40年の台風23号時で瞬間風速80m/s以上を記録しています。台風10号時でも瞬間最大風速は38.7m/sでした。大鳴門橋の設計風速も瞬間風速84m/sとなっています(明石海峡大橋は60m/s)。基本風速は、大鳴門橋50m/s、明石海峡大橋46m/s、瀬戸大橋43m/sです。


大鳴門橋の地理的条件は強風が発生しやすい

 ――交通量の増減は
 磯江 交通量は、大鳴門橋における兵庫県と徳島県の県境の断面交通量(上下線)で25,133台(平成30年度)となっており、観光客増もあり、ここ数年は順調に増加しています。大型車混入率は、27.6%です。


本四を連絡する主な橋梁の交通量と車種別交通量

 ――さて、管内の主な構造物は
 磯江 大鳴門橋があります。橋長1,629mの3径間2ヒンジ補剛トラス吊橋です。完成時の構造は上部が6車線の自動車専用道路、下部が新幹線規格の鉄道で2階建構造の道路鉄道併用橋ですが、現在は道路単独の4車線で暫定供用しています。


大鳴門橋(井手迫瑞樹撮影)

大鳴門橋概要図

 そのほか、淡路島南端に門崎高架橋(橋長1,009m、鋼箱桁橋など)、大毛島の大塚国際美術館付近に亀浦高架橋(橋長593m、PC箱桁橋)があります。この区間の淡路島南IC~鳴門北IC間は、本来の片側3車線部分を使用して4車線供用しています。通常、幅員は3.5m必要ですが、この区間は3.25mでの暫定供用です。そのため、淡路島南IC~鳴門北IC間の規制速度は70km/hとなっています。その前後のIC間は80km/hで、西淡三原IC~淡路ICまでは100km/hです。
 県管理の小鳴門橋横には撫養(むや)橋(橋長536m、鋼箱桁橋)があり、上下線のセパレートになっています。


撫養橋

 トンネルは3本(6チューブ)です。撫養橋の北側に、第1鳴門トンネル(191m)、第2鳴門トンネル(323m)があり、鳴門IC北側に撫養トンネル(616m)があります。

ケーブル送気システムの点検は現場まで登り近接点検
 桁内面作業車は主塔部を渡り桁で超えて径間移動可能に改造

 ――大鳴門橋やその他長大橋の橋梁点検はどのように行っているのですか
 磯江 大鳴門橋の保全では、ケーブル送気システムの送気バンド及び送気配管の点検は人の手によって現場のケーブル上で近接点検しています。補剛桁の部材、橋梁附属物等は橋梁に設置している桁内面作業車および桁外面作業車で点検しています。桁作業車(桁内面・桁外面作業車の総称)については、最近桁内・外面作業車ともに改造を行っています。


ケーブルの近接点検(井手迫瑞樹撮影)

 ――桁作業車について詳しく
 磯江 大鳴門橋には、もともと補剛桁をコの字に囲む桁外面作業車が設置されており、補剛桁の中には桁内面作業車が設置されています(右図)。基本的に径間ごとに桁作業車を設置していますが、これは橋の伸縮や角折れなどに対応するため、補剛桁自体は主塔部で途切れているからです。これらの桁作業車が補剛桁部材に近接できる範囲は、桁外面作業車では青色に囲われた部分、桁内面作業車では緑色に囲われた部分となり、既設の桁作業車及び検査路からの補剛桁部材の接近率は、全体の約4割でした。鋼床版縦桁支承や橋梁部材の添接部等に局部的な変状が発生していますが、このような箇所にはほとんど近づけませんでした。
 また、道路法施行規則の一部を改正する省令が施行され、橋体部材を5年に1回の頻度で近接目視を基本とした点検が必要となったことから接近率向上のため、桁作業車の改造を行っています。
 現在、桁外面作業車5台(側径間に各1台、中央径間に2台)、バックステイ径間に1台)のうち、昨年度に1台の改造が完了して、今年度に残り3台(中央径間の1台は改造しない)の改造を行います。桁内面作業車(側径間に各1台、中央径間に2台)は4台のうち、昨年度1台の改造が完了して、今年度1台の改造を行います。

 桁内面作業車の改造では、側径間と中央径間に橋の挙動に追従する径間渡り桁を設置することで、全径間に移動できるようにしました。これにより改造台数を削減して経済的負担を最小限にしつつ、点検や補修の際の接近率を上げています。

 ――桁内面作業車の径間渡り桁についてもう少し作りを詳しく
 磯江 吊橋補剛桁は中央径間と、側径間は主塔部で分離しています。これは補剛桁が主塔間で温度・風・車両などの影響によって伸縮・角折れが発生するためです。このため、補剛桁桁内面に配置された桁内面作業車は、これまで主塔部で径間を超えて移動できませんでした。
 今回、新たに桁内面作業車が補剛桁の中央径間、側径間の間を移動できるように常設型の径間渡り桁を開発・設置し、桁内面作業車が全径間に移動できるよう改善しました。
 径間渡り桁は、既設の走行軌条桁と容易に接合でき、補剛桁の最大伸縮等を確保するため、桁断面の形状を箱形としています。径間渡り桁の部材構成は、補剛桁の中央径間と側径間に設置される径間渡り桁と、渡り桁内に鞘形式で格納し伸縮する伸縮桁からなります。   

 補剛桁側の既設軌条桁と径間渡り桁の間には、軌条間が伸縮しても桁内面作業車が走行できるようにスライド機能を有した渡り軌条を取付けます。渡り軌条は、常時は取り外し、桁内面作業車が走行する際には取り付ける構造としています。


渡り桁部/伸縮部(井手迫瑞樹撮影)

 また、径間渡り桁の橋軸方向の伸縮量は、主塔部伸縮装置の最大移動量及び補剛桁の角折れを考慮して設計しています。既設軌条桁と伸縮軌条桁との接合は、主塔部における補剛桁の最大角折れに対応するため、自由に挙動できるようルーズな構造としています。


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