AP8 片持ちかつ埋め込み桁式の剛結構造を採用
桁の高さ位置を抑えるための方策
――鋼製ピアは5基ありますがどのような構造ですか
仁田原 片持ち梁構造や段違い梁を伴ったT型の構造がございます。AP8橋脚が既存の都市高速本線を跨ぐ個所にあり、片持ち構造でありながら埋め込み桁式の剛結構造を採用しています。
AP8橋脚断面図
AP8橋脚一般図
AP8の梁架設(外側から)
AP8の梁架設(高速道路上から見る)
――梁が箱桁と剛結している構造ですね。なぜこのような形式を採用されたのですか
仁田原 AP8橋脚付近の橋面高さを決定する要素として、①AP1付近で既設福岡高速1号線と接続すること、②道路構造令において設計速度60km/hの道路における縦断勾配が5%と規定されていること、③既設福岡高速1号線を跨線するため、建築限界を確保しなければならないことなどの制約があります。
梁側面に桁を剛結する構造とした場合、既設福岡高速1号線の橋面からAP8橋脚の梁下までの建築限界を確保する一方で、福岡高速6号線の橋面高さを抑えることにより縦断勾配を5%以下に確保することができます。
そのため桁の高さ位置を抑えるため、このような構造としました。
――設計会社はどちらですか
仁田原 設計は中央復建コンサルタンツです。
2018年度末の進捗は建設費ベースで5割
来年7月までに全桁の架設および床版工を完了することが必要
――建設工期および進捗状況は
仁田原 2016年度から着手し、2021年春の工事完成を目指しています。
2018年度末で約5割の進捗となっております(建設費ベース)。橋脚は全数が完了し、上部工は、香椎浜北公園内の桁架設を完了しています。JCT部分はAP4橋脚~AP7橋脚間の架設が完了しています。IP1橋脚~既設1号線に接続するJCT部は4分の1程度の架設が進捗している状況です。
施工状況写真 2019年10月7日時点(北側方面より全景)
施工状況写真 2019年10月7日時点(北側方面より分合流部)
舗装や付属工を考えると来年7月までには全桁の架設及び床版工を完了しておかなくてはなりません。
香椎アイランド線を跨ぐ箇所で一夜ベントを設けて架設
550tのオールテーレンクレーンを使って空中ジョイント
――架設上ネックとなる工事は
仁田原 一つは、既存道路(香椎アイランド線)を跨ぐ箇所です。夜間通行止めで施工するのですが、時間に制約がある中で、50m(桁高は3.5m)の桁を一括で一夜ベントを設置して架設しなくてはいけません。
――そこをもう少し詳しく
仁田原 AP10橋脚~IP1橋脚間に位置している鋼床版箱桁(2BOX)ですが、スパンは125mあります。一夜ベントを設けて架設するのは、2ブロック約50mを落とし込みで架設します。その際、550t吊のオールテーレンクレーン2台を使って一夜ベント上で空中ジョイントします。1ブロック当たりの重量は97.3tと104.5tです。一夜ベントは、クレーンで吊った状態で接合する中で、ボルト穴の調整など一時的に荷重を受け持たせることで添接を容易にするとともに、ベント上での支持を架設時の最小限にすることで安全面を配慮しています。
――一夜ベントはどのようなものを使ったのですか
仁田原 多軸台車上(マックスキャリア6軸×8輪+2台(ミック))にベントを組んで、仮受する方式を採用しました。桁下までの高さは地上から15m程度あり、最近ではこうした一夜ベントの採用はあまりありませんが、施工時間の制約から採用しました。
一夜ベントを使った架設
――施工時間は
仁田原 規制時間は22時~翌5時半です。クレーンのアウトリガーを出すために、(規制時間前にも)21時から車線を(片側2車線中)1車線規制しています。
――香椎アイランド線の交通量は
仁田原 昼間交通量は2万台ほどです。夜はそれほど通っていません。物流や通勤によるものがほとんどです。
カーブ区間のため添接時の調整に不安
セットバック可能なため仕口は鉛直で問題なし
――施工上の難しさをもう少し詳しく
仁田原 今回の架設箇所はカーブ区間となっているため、桁の向きなど、添接時の調整に不安がありました。そのため、より平面的な対応が必要と考え、事前に各点の測量を綿密に行っております。当初計画は20mmの余裕を見て桁を製作しておりましたが、万が一の事を考慮し、既に架設済みの桁をセットバックさせることにより、50mmの余裕しろまで対応できるようにしました。実際の架設では35mm程度の伸びがあったと聞いており、結果的には良かったと感じております。
――調整桁というのは考えなかったのですか
仁田原 IP1橋脚側の桁は2、3ブロックしか繋いでおらず、セットバックによる調整ができます。そのため調整桁というのは特に考えませんでした。
――桁高は3500mmで仕口精度は当初20mmという設定ですが、仕口の形状は工夫しましたか
仁田原 仕口は特にハの字型にせず、鉛直にしました。先ほど申し上げました通り、セットバックによる調整が容易であるためです。
――夜間とはいえ夏季施工であるわけですが、桁の温度による伸びはどの程度あったのですか
仁田原 それも考慮して施工時の余裕を大きく取りました。
高速1号跨ぐ箇所は来年2月に架設
柱部は全集溶接を採用
――次に既設福岡高速1号香椎線を跨ぐAP8橋脚~AP9橋脚間の架設方法について教えて下さい
仁田原 これも大型オールテーレンクレーンによる架設です。柱と梁の一部は既に施工しており、残り2ブロックからなる梁を一括で架設する予定です。梁直下の既設福岡高速1号線は夜間通行止めを行い、柱部と、桁を剛結する梁部を、先行して施工します。次工程である桁の施工は、AP8橋脚から既設福岡高速1号線の直上に2ブロック桁を張出し、その後3ブロック桁の一括架設で施工します。施工時期は10月上旬に梁部の架設を行い、最終的な桁の架設及び桁同士の添接は2020年2月頃に行う予定です。施工は駒井ハルテック・IHIインフラテクノスJVです。
AP8-AP9の架設ステップ
――福北高速でこういった現場は過去あったのですか
仁田原 おそらく初めてです。
――鋼製橋脚の継ぎ手は全て溶接でしょうか
仁田原 鋼製橋脚では、既設福岡高速1号線直上の梁部等、規制を伴う架設となる箇所は、工程面や安全性を考慮し、高力ボルトでの継ぎ手を採用しています。
その他、柱部等では、規制を伴わず架設ができる立地条件であることや、景観面の配慮、防食上の観点から現場全周溶接での継ぎ手としております。特にAP10橋脚については、景観上の配慮もありますが、板厚が87mmと厚く、75mm以上の母在厚での摩擦接合は、すべり抵抗など継ぎ手性能が低下することや、上部工の支承設置位置との関係を考慮し、現場溶接を採用しております。
――その他の桁架設は
仁田原 ベントを設けてトラッククレーンで順次架けていきます。
塗替え周期は22年程度 素地調整は端部1種、中間4種を想定
――先ほど少しふれましたが、海に近いことを考えた防食上の工夫は何かしていますか
仁田原 重防食塗装を採用します。ただし景観上配慮しなくてはいけない箇所であることから、一定期間ごとに塗り替えを行っていくことを前提としています。
――一定期間とはどれくらいを指しますか
仁田原 22年程度です。素地調整は端部1種、中間部4種ケレンを想定しています。
――鋼床版にはバルブリブを使うということですが、RC床版や床版防水工なども含めて床版工の工夫があれば教えて下さい
仁田原 床版上面は地覆立ち上がり部や遊間部などを反応性樹脂による防水、中央部を通常のアスファルト塗膜系防水工を施工し、舗装基層については水密性に優れたSMA舗装を施工します。現場打RC床版の施工は、地覆立ち上がり部までを一体的に打設し、漏水を無くすとともに、漏水等による損傷が出ないようにしています。
――北九州高速道路の補修で試験的に用いている複合床版防水は使わないのですか
仁田原 複合床版防水は、保全工事において舗装切削時の床版上面に生じるマイクロクラックを補修するために含浸系樹脂を用いているものと理解しており、現状では新設時の床版防水に用いる予定はありません。
――SMAを基層に用いるということですが、転圧の難しさからNEXCOなどではFB(フラットボトム)13などに切り替える傾向があります。転圧管理も含めてどう考えますか
仁田原 SMAは、端部や地覆間際部分の締固めが不足する傾向があると考えています。それについては、重点的に転圧管理していきます。また過去にSMAの転圧時に地域住民の方々から、振動や騒音に関する苦情が寄せられた経験がありますので、その配慮もしなくてはいけないと考えています。
仰られる通り、SMAを止める発注者も出ていることは、当公社としても認識しておりますが、今回の6号線工事では使用する予定であります。今後、保全工事においては、舗装構成も検討課題になるかと思いますが、現在のところ当公社において、SMAに起因する損傷はありません。
――ありがとうございました
(2019年10月25日掲載)