道路構造物ジャーナルNET

耐候性鋼材を用いた飯牟礼橋で比較的大きな損傷

NEXCO西日本鹿児島高速 本名川橋・思川橋を大規模更新

西日本高速道路
九州支社
鹿児島高速道路事務所
所長

南 泰夫

公開日:2019.05.28

今後は天降川橋でも予定
 ノージョイント化ではMMジョイントを多用

 ――こうした大規模更新+耐震補強の事例の管内での予定は
 南 横川IC付近の天降川渡河部に架かる天降川橋の大規模更新を行う予定です。同橋は橋長422.6mの鋼3+4径間連続上路トラス橋です。現在は発注手続き中です。床版の取替だけでなく、耐震照査やその結果による耐震補強、鋼桁の塗り替えも併せて行いたいと考えています。


天降川橋の鋼桁(左)、床版(右)の損傷状況

 ――支承取り換えや、ジョイントの取り替えおよびノージョイント化について今年度の施工予定箇所数と取替える際の工法・種類をお答え下さい
 南 2018年度は、南九州道の湯田高架橋でゴムジョイントを鋼製ジョイントに交換しました。また、九州縦貫道の横川橋、米永橋でMMジョイントを再度MMジョイントに交換する工事を行いました。


横川橋(MMジョイントを採用した)

米永橋(同上)

 19年度は、南九州道の湯田高架橋および伊作田橋、九州道の伊敷橋でゴムジョイントを鋼製ジョイントに交換します。また、隼人道路の星原橋ではMMジョイントを再度MMジョイントに交換する工事を行います。
 ノージョイント化は現在までに23橋で施工しており、比較的MMジョイントを採用している例が多くなっています。
 支承取替は大規模更新対象橋梁のみ計画しています。

ASR 日木山川橋、稲荷川橋で確認
 塩害 内在塩分や凍結防止剤の影響で散見

 ――塩害やASRによる損傷はありませんか
 南 日木山川橋(加治木IC付近の日木山川渡河部に架かる)と、稲荷川橋(薩摩吉田IC付近)でASRが原因と思われる損傷が見られます。ひび割れ注入と表面保護工により補修することを計画しています。


ASR補修前(左)、補修後(右)

 塩害は古い橋梁で未洗浄の骨材を用いている橋梁で、ジョイント近傍の漏水に起因する桁端部の損傷(鋼桁や支承などの腐食、コンクリート桁の損傷)が見られます。またコンクリート壁高欄のひび割れ、剥落、床版の損傷などが散見されます。塩分供給は海砂使用による内在塩分だけではありません。当事務所の管内は雪氷作業での凍結防止剤の散布量も多いため、桁端部からの(塩分を含んだ)漏水による塩分供給も多くなっています。
 基本的には桁端部防水や洗浄、塗装、断面修復や剥落防止工などで対応しています。

飯牟礼橋 下弦材下面で層状剥離
 全体的に悪性錆 ブラストの上、全面塗装で対応

 ――鋼橋の塗り替えは。また耐候性鋼材は管内にどの程度ありますか
 南 塗替えは先ほどお話しした本名川橋、思川橋のみです。耐候性鋼材を用いている橋梁は、南九州道の飯牟礼橋、大里高架橋、伊作田橋、牧之角橋、下谷口川橋、東九州道の今別府川橋の6橋です。飯牟礼橋については大きな損傷が生じており、補修工事を既に発注しています。


飯牟礼橋の損傷状況

 ――具体的には
 南 下弦材下面などで層状剥離が生じており、全体的に悪性錆が生じています。減厚部の当板、ボルトの交換などを行いつつ、ブラストして重防食塗装を行わなければならないと考えています。ただし、細孔の中の塩分除去も必要ですから、やり方は工夫しなくてはいけないでしょう。
 ――同橋は山間部にあり、海岸から遠く離れています。なぜ、このような塩害が生じてしまったのでしょうか
 南 同橋の直下には長谷川が流れていますが、同川は永吉川に合流し、東シナ海に注いでいます。その東シナ海からの飛来塩分が流れとは逆に谷川筋に沿って飯牟礼橋までに到達し、現状のような大きな損傷を招く原因となったものと考えています。
 ――全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいますが、NEXCOでも道路に面する斜面や、古い法面、盛土構造などをどのように補強・補修して道路を守っていくのか具体的な事例や計画などがございましたら教えてください
 南 鹿児島は台風の常襲地帯ですが、法面のシラス層表面の植生をコンクリート吹き付けに変えるような工事を行うことで、高速道路の法面損傷は現状では表面崩土で留まっています。しかし、対応力を維持するために法面補強や保全工事の外注を切らさないように努めています。なお、管内では大規模更新に該当するような法面対策はありません。
 ――橋梁の架替や大規模修繕、トンネルの点検状況、トンネルやのり面について橋梁のような長寿命化修繕計画を企図した補修補強計画の進捗状況を教えてください
 南 架け替えではないですが、隼人道路(7.3km)の4車線線化が2018年3月に事業許可され、これから工事が進んでいきます。加治木~隼人西間(2.6km)は渡河部以外ほとんど土工構造ですが、隼人西IC~隼人東IC間(3.7km)は野久美田トンネル(251m、NATM工法)、清水川橋(PCポステン単純T桁+PC4径間連続箱桁+RC7+4径間連続中空床版桁、470m)、隼人港橋(PC3径間連続箱桁、140m)があります。橋梁は下部工から製作する必要があります。現在は詳細設計中です。


清水川橋(Ⅰ期線)

隼人港橋(Ⅰ期線)

 また3月30日には、鹿児島県内初のスマートICである桜島SIC(上り線出口、下り線入口)が一部開通しました。
 ――ありがとうございました

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