道路構造物ジャーナルNET

国内橋梁受注高で業界1位を継続

大日本コンサルタント 新しい発注形態に対応できる組織づくりと人材育成

大日本コンサルタント株式会社
代表取締役社長執行役員

新井 伸博 氏

公開日:2018.12.25

技術と企画提案力が求められる時代に
 長大橋、特殊橋の設計技術のさらなる高度化を目指す

 ――コンサルタント業界を取り巻く環境や課題についての考えは
 新井 現在、業界としての景気は堅調と思います。公共事業関係費は、補正予算も含めて毎年6兆円を超える予算が継続的に確保されています。頻発する災害等を見て、公共事業=悪という風潮も弱まり、継続的な投資をしないと国民の生活が立ち行かなくなることが理解されつつあります。ただ、将来に向けた大型プロジェクトは少なく、現実的には、国内の新しい事業はあまり望めないのではないかとも考えています。また、発注者側の技術者も減ることはあっても増えることはないと思います。
 そのような状況の中で、事業促進PPPやコンストラクション・マネジメント(CM)などの新しい発注形態が増えていくことは避けられないと考えています。そうなると、これまで受注産業と言われていた建設コンサルタント業も、自ら課題を発見して、自ら解決する方向へ変化していくことは自然の成り行きでしょう。今まで以上の課題発見力や企画提案力が求められるようになります。業界全体での仕事の総量は変わらないとしても、仕事の内容が大きく変わり、優れた技術をもって提案できる会社のみが生き残る時代になると考えています。
 コンサルタント会社は人が資源ですから、企業としては、時代に対応できる人材を育てていかなければなりません。当社の場合は6年前に「インフラ技術研究所」を立ち上げて、研究開発と人材開発に積極的に投資をしています。適切な投資こそが、会社を継続させる大きな鍵になると認識しています。


平成29年度土木学会田中賞(作品部門)を受賞した気仙沼大島大橋

 ――今後の方向性は
 新井 当社の核として橋梁(構造・保全)分野があります。この分野では、長大橋や特殊橋にかかわる耐震設計やデザイン力などを含めた総合的な設計技術は、他社をリードしていると自負しています。この分野の設計力は今後も他社をリードし続けるように注力していきます。そして、さらに高度化していくことによって、海外展開の先兵として規模拡大にも寄与させていきます。加えて、国内でも他社よりも短時間、低コストで確かな品質の仕事ができるような体制構築を進めていくことがポイントだと考えています。
 交通計画、都市計画などの社会創造分野は、これからますますビッグデータ等のデータ活用を進める方向に進むと思います。AIを含めてデータ活用のスキルを整えておくことはもちろん大事ですが、今以上に事業目的は何かといったフィロソフィーの部分を磨くことも忘れてはいけないと思っています。と同時に、これまでの道路設計業務がなくなることもありませんので、ハードからソフトまであらゆるニーズに対して、さまざまな発注形態に対応できるような体制づくりを進めています。例えば、マネジメント分野の強化や、事業会社の設立をともなうエネルギー分野の強化などを進めています。これらを、橋梁分野に次ぐ第二の柱とすることを目指しています。
 防災分野は、自然災害が毎年起きている現状を鑑み、建設コンサルタント業の社会貢献を広く社会に知っていただくという点でも、対処できる人材を育てて大きくしていきたいと思っています。
 ――エネルギー分野に注力していくとのことですが、具体的な動きとしては
 新井 今年8月に関連会社として、合同会社ふじおやまパワーエナジーを設立しました。木質バイオマス地域発電所の管理・運営会社で、地域活性化と林業の発展をテーマとしたコンサルティングから発展したものです。2015年11月に設立した水素インフラ事業や再生エネルギー事業を実施する清流パワーエナジーに次ぐ2社目となります。このような地域社会に根付いた会社をたくさん設立していきたいと考えています。


合同会社ふじおやまパワーエナジーが管理・運営する木質バイオマス発電所「森の金太郎発電所」

 ――時代に合わせた組織変更の事例、予定はあるのでしょうか
 新井 来期から第12次中期経営計画が始まります。そのなかで会社の組織形態も含めて、時代のニーズを取り込んで体制の更新を検討しています。現在ならびに将来の発注形態や目指す仕事にフィットする組織に更新するのが目的です。根幹部分は維持しつつ、新しい分野には新しい組織や体制をつくって対応していきます。

橋梁点検用のドローンを開発
 海外売上高は倍増が目標

 ――保全分野の取り組みについて教えてください
 新井 構造物全般の調査点検、補修・補強設計等、保全全般に対応しています。高度な技術力を有している証左として、本州四国連絡橋の特殊橋梁の耐震関係の解析を含めた補修・補強設計の多くの部分を当社が担当していることを付け加えておきます。
 一口に橋梁と言っても千差万別で、人が調査点検をするには手間がかかります。そこで、その省力化を念頭に、4年ほど前から国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けて川田テクノロジーズとともに、橋梁点検のニーズを満たしたドローンの開発に取り組んでいます。NEDO「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」の一環として行ったものです。点検に資する安定した飛行を可能にする機体は完成したので、現在は人材育成や運用体制の構築、ドローンの長所を活かせる点検手法の組合せやスキームの立案を進め、2019年度末の実用化を目指して開発を続けています。さらにはその先に、画像解析やAI技術の組込みが視野に入っています。また、これらの技術は社内に抱え込むのではなく、国全体における点検作業の省力化につながるようにオープンにして、橋梁分野におけるリーディングカンパニーとしての責務を果たしたいと考えています。


橋梁点検用ドローン「マルコ」

 AIについては、東京大学や産業技術総合研究所、民間数社の7団体で勉強会を続けています。点検時に撮影した写真をAIに学習させて損傷を判断する取組みも3年目となり、現在は理論的なものは完了して、実装するための準備をしています。
 AIによる損傷のスクリーニングに加えて、AIが補修工法を提案する研究も行っているとともに、撮影データから橋梁のモデルを作成することにも取り組んでいます。建設年代の古い橋梁は図面も残っていないし、構造もわからないものがたくさんありますので、その推定にAIを使用していきます。このような取組みを含めて、橋梁に関することはすべて当社でできるようにしていきたいと考えています。
 ――海外展開については
 新井 ベトナムとフィリピンに設立した事務所を拠点に、売上を現在の5億円から10億円に倍増させることを目標に取り組んでいます。リスク管理の観点からODAに特化した形で取り組んでいますが、それでも、支払いが予定通りにいかないなどの海外案件固有の事情がありますので、まずは自分たちが自立できる仕事の売上をつくることを目指しています。
 ――海外の技術者を採用して、一緒に海外案件に取り組むことは考えていますでしょうか
 新井 当社の場合は日本で培った橋梁技術を世界に売りたいと考えていますので、当面は当社社員がイニシアチブをもって現地に行き、技術を提供するスキームをつくりあげていきます。その過程において、海外の技術者と協働(採用)することに関しては今までもオープンですし、これからもオープンです。
 ――具体的な海外案件は
 新井 当社にとっての海外代表作はベトナムのニャッタン橋になります。現在は、インドのムンバイで鋼箱桁橋の設計照査、バングラデシュで橋梁の改修と新設の施工監理、フィリピンでバイパス建設事業の詳細設計等に従事しています。また、ベトナムでは現在、案件形成に取り組んでいます。


ニャッタン橋

 ――技術力のある御社ならではの取り組みがありましたら
 新井 防災分野でも活用できる空中電磁法による地質調査などの特殊な要素技術を持っています。津波のシミュレーションも他社より早く対応していましたし、堤防の強靭化に対してもノウハウと解析技術を持っています。災害は常に複合的な要因で発災し、道路ネットワーク等の寸断も懸念されます。これらの要素技術を組み合わせて、点の対策だけでなく、線や面を捉えて地域を総合的にマネジメントする技術を開発中です。
 例えば、道路管理者は、限られた予算の中でいかに実効性に優れた整備事業計画を立案するかに腐心されています。災害発生時の代替ルート選定などの地域の防災計画も立案しなければなりません。道路構造物の災害に対する危険度予測や、対応策の優先順位の決定手法など、説明責任を果たせるコンサルティングを行うための取り組みです。


空中電磁法による地質調査

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