道路構造物ジャーナルNET

2017年新年インタビュー②

熊本県 道路被害額は約460億円 上益城地区と阿蘇地区で被害額の94%を占める

熊本県土木部
道路都市局

道路保全課長 長井 英治 氏/道路整備課長 上野 晋也 氏  氏

公開日:2017.01.01

上部工は毎年100橋程度補修
 床版防水工は平成10年から施工

 ――経年劣化や疲労による上部橋の損傷は具体的にどのような部材に損傷が生じていますか。また、毎年補修する橋梁のはどの程度の数に上るか教えてください
 上野 各年度の上部工の部材等の施工実績は集計を行っていませんが、毎年100橋程度は補修を行なっております。鋼床版の疲労亀裂については該当する橋梁はありません。コンクリート桁や床版部における損傷は先ほどから言っていますが、剥離鉄筋の露出や遊離石灰、ひび割れ、その辺りの損傷はやはり多いです。床版防水については、橋梁上面の舗装の老朽化に伴い床版防水工を施工しています。

 ――熊本県としては床版防水をかけた時期はいつ頃からですか
 上野 新設橋については、平成10年から施工しています。それ以前の既設橋については把握しておらず、床版防水の設置数は分かりません。防水が床版の健全性に対して、一番効果があるということは認識しています。
 ――床版防水工を設置していないと、熊本県さんの劣化の主因である床版の剥離鉄筋露出、ひび割れというのは特に上面の砂利化現象により生じやすくなります。特に古い橋梁が熊本県には多く、昭和39年示方書で作っている床版は厚さが160㍉程度しかありません。そうした薄層の床版は、一旦やられると危ない。そういう意味で防水工は重要です。舗装打替時に合わせて施工するというお話がありましたが、下面の被りコンクリートが剥離し、鉄筋が露出しているものや、床版下面に損傷が無くても上面にポットホールが頻出している橋梁の床版は、舗装の打ち変え時期まで待っていると相当酷いことになる場合もあり、そうした床版については、早めに先ほどの長寿命化ではありませんが、予防保全として防水工の手を打つことが先決です。続けて支承取り換えや、ジョイントの取り替えおよびノージョイント化について今年度の施工予定個所数と取替える際の工法・種類をお答え下さい
 上野 今年度の施工予定は、支承の取替(鋼→鋼)を1橋、伸縮装置の取替を20橋で予定しております。工法、種類等に関してはそれぞれの現場がありますので、現場の状況を考慮して選定しています。
 ――先ほど塩害があるというお話がありましたが、塩害やASRによる劣化があれば、どのような形で出ていますか
 上野 塩害は顕在化まではしていないという状況です。以前は、塩害でPC鋼線が破断し、架け替えた橋もありましたが。最近は、そこまで損傷が酷いものはありません。
 ――塩害やASRによる予防保全的な対策として、例えば熊本港大橋だと、ケイ酸塩系の含浸剤を塗るなどしていますが、そういった含浸剤やコンクリートの塗装などの取り組みは何かされていますか
 上野 新設橋では塩害区分S地域において、塩害対策としてエポキシ鉄筋や含浸材など使う取り組みを行っています。
 ――次に鋼橋の塗り替え実績と今年度の予定を教えてください。また、既設橋にPCB等を含有している塗膜を保持している橋梁はあるのかということと、特に2014年5月30日に出た通達で、鉛を含有する道路に関しては湿式で塗膜を除去しなさいという書が出ていますが、そういうものに対してどういった方策を取っているのかということを教えていただければ
 上野 鋼橋の塗替えは15年度に8橋16,400平方㍍施工しました。16年度は10橋約18,000平方㍍を予定しています。再塗装時には1種ケレンを用いていません。有害物を含有する既設塗膜の処理につきましては、PCBを含有している橋梁では、平成30年代前半までに剥離剤を用いて旧塗膜の除去を行い、低濃度PCB処理施設にて処分を予定しています。鉛についてはA系塗装の下塗りに含有されている可能性がありますので、3種ケレンの場合は旧塗膜を全て除去するのではなく、滑膜は残し、それ以外の不良分を除去するため、塗膜くずの飛散は限定的とは考えています。但し、工事着手時に実施する溶出試験結果を踏まえ、必要な対策を講じることとしています。
 ――耐候性鋼材を使用した橋梁で、錆による劣化損傷が報告されている事例が最近増えてきています。熊本県が採用した耐候性鋼材橋梁の橋とその健全度の状況について教えてください
 上野 耐候性鋼材を採用している橋梁は51橋で、主構の健全度が基準を下回っている橋梁は1橋あります。平成25年度に実施した概略点検の結果なので、30年度までに実施予定の次回詳細点検の結果を踏まえて、今後の補修等については検討を行う予定としております。

走行型レーダー車を使い路面下空洞調査の実施を予定

 ――保全における新技術・新材料の活用は
 長井 熊本地震を受けて走行型レーダー車による非破壊検査により路面下空洞調査の実施を予定しています。また、県道河陰阿蘇線で斜面崩壊した土砂を砕石による路床入替を行い、仮復旧しました。


県道河陰阿蘇線の応急対策状況

のり面要対策は2049箇所
 対策完了箇所は700箇所

 ――最後に、トンネルとか法面について、橋梁のような長寿命化修繕計画を立てていますでしょうか。計画していれば進捗状況を教えて下さい
 長井 法面で要対策箇所は2049箇所あります。その中で昨年度末までで対策が済んでいるのが700箇所(約34%)です。緊急輸送道路は要対策箇所が836箇所あり完了済みは307箇所(約37%)で、あとの529箇所は未対応です(詳細は下表)。

 ――今回の地震でもそれが露呈したような感じですが、これらについてはどうするのでしょうか
 長井 ハード的にすべて対応するのは予算的に無理ですね。事前通行規制をしっかりやっていくしかありません。今回の災害を受けた後は気象庁と同じく事前通行規制の基準を7割程度に引き下げています(連続雨量規制200㍉を140㍉へ)。そうしたソフト的対応を強化しています。
 ――熊本県は短時間雨量規制を行いますか
 長井 短時間雨量はやっていません。連続雨量です。熊本では短時間豪雨は頻繁にあり、それで止めたら生活ができなくなってしまいます。逆に言えば本当は止めたいので、我々の側のリスクとも言えます。今回の地震以後も孤立集落の住民の皆様に「危ないけども通してくれ」とずいぶん言われました。しかし、我々としては、上に不安定土塊とかがあれば交通規制をせざるをえないので、それは通せませんね。こうした場合、市町村と連携して、通りやすいルートを早めに選定して判断し、早期開放するしかありません。
 ――今本当にスポットは法面に当たっていますね
 長井 そうですね、今まで災害が起きたのは県北なので、逆に言うとまだ地質的には北のほうはゆるやかで安定しています。構造線から南のほうは揉まれている構造なので、よく言われている国道219号とか防災対策をやっていますが、南が一番悪いですね。
 ――八代以南ですか
 長井 そうですね、地質的に弱い。ソフト対策でやっていくか、それか幹線道路を順次やっていくしかないかと。思います
 ――それはバイパスを作るということですか
 長井 そんな体力はなかなかないですね。例えば来年度予算で熊本地震を契機に、県として別枠で(法面対策として)国の予算を要求するといったことも考えております。
 ――それは大きいですね。全ての都道府県で言うべきですよね。近畿地方の自治体でも山岳部の道路における長大法面や自然斜面の状況には憂慮していました
 長井 当県も同じです。島根県では落石で死亡事故がありましたね。そういうニュースに接すると、物凄く緊張します。今回の地震で大きい(不安定土砂塊)のは落ちましたけど、その後も集中豪雨でも落ちてきます。南の地質が古い箇所は結構あるので、法面対策は至急取り組みたいと考えています。
 ――それはやるべきですね。対策としては全国的に既に後手に回っている状況ですので
 長井 法面対策はほとんど後手に回っていますね。膨大な数の対策箇所があるので。対策しても漏れる箇所で事故が起きています。
 ――ありがとうございました

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