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ミッシングリンク、都市の渋滞対策、災害時の冗長性確保

近畿地方整備局 道路整備は未だ不十分

国土交通省
近畿地方整備局
道路部長

東川 直正

公開日:2016.12.21

九頭竜川橋など2橋が下部工に着手
 上部工は宿南2号橋など

 ――今年度着手する主要橋梁・トンネルは
 東川 平成28年度は新たに八鹿日高道路の宿南(しゅくなみ)2号橋(155㍍、PC4径間連結コンポ桁)など6橋の上部工事を予定しています。6橋の内、八鹿日高道路 宿南2号橋など4橋が完成予定です。
 また、大野油坂道路の九頭竜川橋(273㍍、PC)など2橋の下部工事を予定しています。
 トンネルは、日高豊岡南道路の藤井トンネル(502㍍)、上石トンネル(1,231㍍)など6箇所を予定しています。

上部工一覧表

雄ノ山高架橋は50㍍超のハイピア
 出屋敷高架橋は638㍍、16径間の少数鈑桁橋・細幅箱桁橋、合成床版採用

 ――施工中の主要橋梁およびトンネルは
 東川 トンネルは、日高豊岡南道路水上トンネルなど13箇所を施工中です。平成28年度中に安上岩出トンネル(2,057㍍)、八鹿日高道路久斗トンネル(1,471㍍)など9箇所が完了する予定です。
 橋梁は、26橋施工中です。その中で橋長100㍍以上の橋梁は紀北西道路の雄ノ山高架橋(986㍍、PC連続ラーメン箱桁)など18橋あります。施工中の橋梁の内、23橋が今年度に完成する予定です。
 特徴的な構造物としては、やはり雄ノ山高架橋が挙げられます。急峻な地形条件と県道、阪和道、JR阪和線を跨ぐ必要があることから50㍍を超えるハイピアとなっており、張り出し工法により架設しています。さらにコスト縮減や技術的課題をクリアするため、平成24年道示に規定された高強度コンクリートや高強度鉄筋を採用しています。 


雄ノ山高架橋

湯屋谷上空から雄ノ山高架橋を望む

上部工がほぼ完了した雄ノ山高架橋

 ――具体的にはどの程度の強度のものを用いていますか
 東川 鉄筋はSM490、コンクリートは30kNを採用しています。
 ――鋼橋で特徴ある橋は
 東川 大和御所道路の出屋敷(でやしき)高架橋があります。同橋は橋長638㍍の鋼8+3+2径間連続少数鈑桁橋と175mの3径間連続合成細幅箱桁橋です。床版は合成床版、防食手法は耐候性鋼材(ウエザーアクト)を使用しています。


施工中の出屋敷高架橋

2㍍以上の4,904橋を管理、100㍍以上は767橋
 50年超の橋梁は約30%に達する

 ――次に現在管理している橋梁・トンネルの内訳は
 東川 当整備局が管理する2㍍以上の橋梁は4,904橋です。そのうち100㍍以上の長大橋は767橋となっています。工種別ではRC橋が最も多く44%となっています。次いでPC橋が30%、鋼橋が21%です。



供用年次別橋梁数

橋長別橋梁数(左)/路線別橋梁数(右)

 トンネルは196箇所あります。延長100㍍以上は177箇所あり、1,000㍍以上も30箇所あります。
 工種別は矢板工法が89箇所、NATMが96箇所、開削工法が11箇所となっています。
 供用年次が明らかな橋梁において50年を超える橋梁数の割合は、約30%に達しており、これが20年後には約62%まで急激に増加します。50年を超えるトンネル数の割合は、現在の約26%から20年後には約47%となり、トンネルも高齢化が急速に進んでいきます。


工法別トンネル数(左)/供用年次別トンネル割合(右)

 ――点検を進めて見て管内の構造物の劣化状況について教えてください
 東川 近畿地方整備局が管理する橋梁の劣化状況は、鋼橋では防食機能の劣化、腐食、PC・RC橋では漏水・遊離石灰、剥離・鉄筋露出、うきのような防水・排水不良が要因と考えられる損傷が多くなっています。PC橋・RC橋では乾燥収縮をはじめ種々の要因で発生するひびわれが最も多くなっています。
 新しい橋梁点検要領により実施されたH26、27年度点検における健全性の区分についてはⅠが59%、Ⅱが37%、Ⅲが4%、Ⅳが0.1%となっています。



橋梁の路線別損傷要因内訳(左)/橋梁健全度区分割合(平成26,27年度点検による結果)

過去の損傷事例(橋梁)

 同様に新しいトンネル点検要領により実施されたH26、H27年度点検におけるトンネルの健全性の区分についてはⅠが3%、Ⅱが65%、Ⅲが32%、となっています。


トンネルの過去の損傷事例

トンネルの健全度区分(平成26,27年度点検結果)

 ――H26、27年度点検の橋梁数が1,829橋ある中で、80橋弱がⅢ以上の判定ということになりますが、路線ごとの特色は
 東川 鋼橋の疲労亀裂は大型車が多い国道2号・25号・43号などで他路線よりも多く発生しています。塩害は凍結防止剤の影響が考えられる国道161号や海沿いの路線である国道42号で見られます。
 ――橋梁など耐震補強の進捗状況、および落橋防止装置の設置状況は
 東川 今年度は42橋について耐震補強を行う予定です。また、28橋で落橋防止装置を設置する予定です。また熊本地震を踏まえて、現在耐震のチェックや設計、工事を進めているところです。
 ――熊本県内では今次の震災を教訓として、地震後に通行不能な段差が生じないように、予防保全的な形で今後、新しく踏み掛け版を既存の道路に設置する工事を5、6橋で施工しています。近畿地整でも落橋しない橋梁から耐震グレードをアップし、可及的速やかに復旧できる橋梁を追求していくことはありませんか
 東川 現在、メンテナンス会議などで言っているのは、緊急輸送道路関連の耐震補強の進捗を早めることです。熊本では高速道路を跨ぐ橋梁が落橋したということもあって、メンテナンス会議を通じて跨線橋、緊急輸送道路の跨道橋などは地震による損傷が限定的なものにとどまり橋としての機能の回復が速やかに行い得る性能を確保することを優先させるよう府県市町村に要請しています。

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