合成桁としての照査も認める
PC合成桁の床版取替方法にも触れる
――床版の撤去・取替床版架設時においての既存鋼桁RC床版を対象とした照査方法については
広瀬 東北支社の知見を集約しています。いわゆる非合成桁から取り替えているケースが多く、床版を撤去して取り替える際に、その時に桁の照査については合成桁で照査してよいとしています。非合成桁で設計して非合成桁としてRC床版を架設していますが、実際の挙動は(ジベルやスタッドが効き)合成桁、という橋がほとんどです。合成桁にすると床版そのものも断面合成に考慮できるので桁の耐力照査をする場合有利に働きます。そうした照査を行ってもよい、と記述しているものです。
――同様に5章床版で新規に記載された中空床版およびPC合成桁の床版取替方法について中空床版の内容から
広瀬 特定更新等工事の実施メニューに該当するため新規制定しました。
具体的には①円筒型枠のかぶり150㍉を確保するよう、床版上面増厚や鉄筋補強上面増厚を実施すること、②設計照査は、これまでの鉄筋補強上面増厚と同様にする、③使用するコンクリートは、これまでの実績から鋼繊維補強コンクリートを標準とする――などです。
――はつり方法の具体的記述がないようですが
広瀬 基本的にはマイクロクラックを気にしなくて良い厚さまではブレーカーではつり、マイクロクラックを気にしなければならない厚さ(10㌢)部分はWJではつった上で、ショットブラストにより界面を研掃する手法を検討しています。
――新旧断面の接着工法は既存の床版増厚と同様、額縁状に塗布する方式ですか
広瀬 基本はそうです。但し今回の改定では明記していません。
――新旧界面のマクロセル腐食対策はどのような方法で行うのですか
広瀬 今次改定ではマクロセル腐食対策の必要性について記述していますが、具体的な対策工法について記述していません。
――PC合成桁の床版取替についてはどのように考えていますか、直近としては沢底川橋の補強工事を思い出しますが
広瀬 まさに沢底川橋が当てはまります。具体的な記述内容は①設計床版厚を確保できるように、床版上面増厚や鉄筋補強上面増厚を実施する、②一次床版内のPC鋼材に変状が生じている場合には、1次床版の取替を実施する、③その他については中空床版の全面的打ち換えと同様にする――などです。
沢底川橋はPC連続合成桁であり、一次床版にPC鋼材が入っています。この鋼材が損傷していると大きな問題になるので、この鋼材を露出させる必要があります。きちんと床版内に配置させる鋼材を調査して、鋼材が腐食している場合は全部取り替えを推奨しています。
沢底川橋と架橋位置(既掲載)
沢底川橋の補強概要(既掲載)
補強の標準横断図(既掲載)
電磁波レーダーでスクリーニング
――調査手法は
広瀬 スクリーニングは電磁波レーダーが有効であると考えます。錆の有無までは分かりませんが、床版上面の土砂化などは見極めることができます。漏洩磁束法は鋼材が破断しているかどうかを判断する場合には使えます。
――X線による非破壊検査手法は
広瀬 画像は分かりやすく、非破壊の中では選択肢として最上と言えますが、装置自体の大きさが難点です。アタッチメントをコンパクト化するなど改善が進めば、画像自体は非常に判断し易いものが得られるため有効であると考えています。