道路構造物ジャーナルNET

PC舟形橋など独自の形式も 

大阪府 万博前に建設した構造物をどう管理していくか

大阪府都市整備部
交通道路室 道路環境課長

佐藤 広章

公開日:2016.02.05

理想的な走行条件で特筆すべき損傷は見受けられず

 ――大阪府内は名神高速や阪神高速など日本有数の重交通路線を域内に抱えています。それに接続する府道などにおいて疲労による桁や床版の損傷などは生じていないのですか
 佐藤 鋼床版では疲労による損傷は顕在化していません。コンクリート床版においても同様です。大阪府道としては中央環状線という重交通路線(平成22年度道路交通センサス:交通量約11万台/日、大型車混入率28.1%)があります。これは万博の際に作られた道路ですので供用年数も40年以上経過しています。この路線について10年前に25㌧化対応した際に床版をチェックしたところ、床版に架かる輪荷重が主桁ウェブ上付近を通過していることが分かりました。

「今後」を想定して更新計画は必要
 損傷が顕在化しないうちに備えることが大事

 ――それは理想的な走行状況ですね
 佐藤 そのため現在までのところ特筆すべき損傷はみられていません。しかし、これからの話として、阪神高速が昨年度大規模更新・大規模修繕事業を立案したわけですが、同様に大阪府の道路も「今は損傷していないが、将来も損傷が起きないわけではない」という想定のもと、将来の(橋梁における)部分更新あるいは全体更新を計画しなくてはいけないと考えています。
 また、大阪府の特徴として、昭和38年当時に府独自に標準設計を定めたPC舟形橋梁が大阪中央環状線において数多く架設されています。U型断面主桁上部に場所打ちRC床版を打設した構造のポステン単純合成床版桁でRC床版の型枠が埋設式であり直接目視点検できないことから、「舟形RC床版維持管理マニュアル」を定め、ファイバスコープによる調査や非破壊検査であるAE調査を主体として点検をしています。その結果、現状は損傷が生じていないことが分かりました。しかし、それも「現在は」ということを念頭において維持管理していく必要があると思っています。
 勉強しなくてはいけないと考えているのは、事前に致命的損傷の兆候が出るかどうか、ということです。いきなりばさっと来るのか、リラクゼーション的な兆候が見えてくるのかどうか、をです。兆候が見えてくるのであれば、そこをリアルタイムで監視して、場合によってはそこを止めて迂回させて、その間に直すという取り組みも必要です。
 こうしたことが最初に生じる可能性のある中央環状線は、跨道橋の場合、多くは側道があるため交通を流しつつ更新することが可能です。そのため損傷が顕在化する前に架け替えや(床版などの)打ち替えについて、今後ケーススタディをやっていく必要があると考えています。
 跨線部については代替路線がないため、交通を流すことはできませんが、跨線橋は基本的に鋼桁ですので、損傷の兆候を掴むことは比較的容易であり、時間的な余裕を保ちながら先手を打って対応していていければと考えています。コンクリート桁や床版は兆候が見えにくいことからより慎重に対策を行う必要があるとも考えています。
 ――橋梁長寿命化修繕計画の進捗状況は
 佐藤 今年の3月に大阪府都市基盤施設長寿命化計画の道路編を新たに策定しました。これに基づき橋梁も予防保全的に維持管理していきます。

健全度70を目安に予防保全
 舟形PC橋を1橋で補強

 ――平成20年度に策定された旧橋梁長寿命化修繕計画では、予防保全により平成32年度には管理水準(健全度を70と規定)を下回る橋梁が0になるよう対策を実施していく、とされていました。平成24年当時、当時の武友課長は73%ほど進捗していると話していましたが現状は
 佐藤 基本的には同計画に沿って進めています。年間の道路維持費用は計画前の90億円から計画後は130億円に上げて対策を進めています。平成32年度をめどに対象となる管理橋梁の健全度を全て70に底上げした後は、予防保全的にそれをキープするような形で維持管理を行っていく方針です。平成26年度末現在、健全度70をクリアしている15㍍以上の橋梁は82%に達しています。
※橋梁の健全度は、全く損傷がなく健全な状態を100とし,100から損傷評価点を減点したもので、部材の損傷の程度と部材毎の重みづけから評価をしている。
  健全度=100-∑損傷評価点
府が実施してきた点検データを基に劣化曲線を算出し、ライフサイクルコストから目標管理水準値(健全度70)を設定している。

 ――舟形PC橋の補修補強は
 佐藤 今年度1橋実施しています。((主)大阪中央環状線 神武跨線橋 橋長:507㍍、舟形PC 橋)。炭素繊維補強シートによる下面貼り付けでの補強を実施しています。

 ――平成23年に国道423号新御堂筋高架橋(橋齢45年超)で横締めPC鋼棒が突出した事例の対策状況は
 佐藤 同橋の一箇所でPCT桁の横締めPC鋼棒がグラウト充填不足により突出したものです。隣接する高架橋(御堂筋線)の桁に引っかかり、結果的に大事には至りませんでした。しかし、すぐに該当する同種の橋梁254橋1237径間を緊急点検した結果、30径間で鋼棒の頭の露出、22径間でコンクリートの浮き、325径間でひび割れや鉄筋露出が確認されたため、調査および鋼板や繊維シート(炭素繊維またはアラミド繊維)による補強を施工済みです。


PC鋼棒突出防止工の補強例:(左)繊維シートによるもの、(右)鋼板によるもの

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