道路構造物ジャーナルNET

PC舟形橋など独自の形式も 

大阪府 万博前に建設した構造物をどう管理していくか

大阪府都市整備部
交通道路室 道路環境課長

佐藤 広章

公開日:2016.02.05

 大阪府は、2209の橋梁、30のトンネルを管理している。とりわけ橋梁は50年以上経過している橋梁が36%に達し、40年以上50年未満もそれに次ぐ規模で、合わせると約7割にのぼる。こうした膨大な橋梁を今後どのように保全していくか、佐藤広章道路環境課長に聞いた。(井手迫瑞樹)

橋梁は供用後40年以上が7割

 ――大阪府の道路構造物の概要から
 佐藤課長 平成26年4月時点で管理している道路延長は約1,530㌔あります。橋梁は全部で2,209橋、トンネルは30箇所をそれぞれ管理しています。
 橋梁を橋種別に申し上げますと、鋼橋357、PC橋421、RC橋1,315、複合橋116となっています。年次別では、1970年の大阪万博の影響でその前後がピークになっています。供用後50年を経過している橋梁は36%にあたる790橋が該当します。また、40年以上が719橋あり、合わせて7割に達します。長寿命化対策は喫緊の課題と言えます。橋長では15㍍以上が859橋、15㍍未満が1,350橋となっています。路線別では一般国道で600、主要地方道で1,067、一般府道で542橋となっています。(詳細は右表)

 トンネルについては全体30本のうち、工法別では在来工法が10本、NATMが15本、開削工法が5本となっています。年次別では比較的新しいトンネルが多く、50年以上が3本、40年以上50年未満が3本、以後10年毎に7本で10年未満は3本となっています。延長別では100㍍以上が24本、未満が6本と割合としては長大トンネルが多くなっています。路線別では府管理国道が17本、主要地方道が9本、一般府道が4本です。(詳細は左表)

耐震対策は優先397橋中345橋を完了
  大阪臨海線 助松橋で津波による浮きあがり対策も施す

 ――耐震補強の進捗状況は
 佐藤 都市整備部全体で橋梁も含めたインフラ全体の「地震防災アクションプログラム」をまとめています。橋梁に関しては災害時の一次緊急交通路、大阪府では広域緊急交通路と呼んでいますが、その中でも14の重点路線について優先的に対策を進めています。また重点14路線を跨ぐ橋梁および鉄道を跨ぐ橋梁、重点14路線以外の広域緊急交通路を次に重要な対象として位置付けています。これらは合計397橋あります。平成26年度までに重点14路線および同路線を跨ぐ橋梁および鉄道を跨ぐ橋梁について全数(216橋)を完了しています。また、重点14路線以外の広域緊急交通路(181橋)も129橋完了しており、合計345橋を完了しています。残り52橋も平成32年度までに完了する予定です。耐震補強の規格は3プロでなくフルスペックで実施しています。

 耐震基準が昭和55年、平成8年、平成24年と変更してきていますが、現在設計、施工している耐震補強は現行基準に合わせた形で内陸直下型とプレート境界型の地震波のいずれか不利な方を選択して補強設計しています。また、大阪臨海線(一番大阪湾よりを走る府道)は南海、東南海地震の際、津波により影響を受けることが予想されています。津波の影響範囲に位置する橋梁20数橋を洗い出し、津波によって桁が大きく浮きあがってしまう橋梁を特定しています。その助松橋((主)大阪臨海線、橋長:46㍍、上部形式:プレテンT桁、下部形式:パイルベント橋脚)はこれから耐震補強を行う予定でしたので、津波による浮きあがりを防止する施策を合わせて耐震補強を行います。


パイルベント橋脚を有する助松橋

 耐震補強工法としては、チェーンタイプやピンタイプ、鋼製ブラケットタイプやケーブルタイプなどによる落橋防止構造、支承交換、橋脚の補強などを行っています。


直近橋梁耐震補強案件と落橋防止構造(編注:ケーブルタイプはエスイー製、チェーンタイプピンタイプシバタ工業製などを採用している)

 ――海に近い箇所、とりわけ埋め立て部に建設している橋梁は、本体はもっていても橋台などが液状化を引き起こして、段差が生じてしまい一時的に使えなくなるというケースが予想されます。愛知県などでは踏み掛け版の設置などでそれに対応する方針ですが、大阪府ではそうした対応は考慮していますか
 佐藤 高石市道の液状化対策に併せ、大阪臨海線の高石大橋との取りつけ部で、府においてプレキャスト踏み掛け版を施工すべく現在詳細設計中です。


高石大橋でプレキャスト踏み掛け版を採用予定

 ――落橋防止装置の鋼製ブラケットの溶接不良についての対応は
 佐藤 大阪府管轄では1橋、府道路公社管轄で1橋、久富産業(株)が製作した鋼製ブラケットで現地調査を行い溶接不良を確認しています。また、その他の工事については現在調査中です。なお、どのような対策を行うかについても検討中です。
 ――点検を進めてみての劣化状況は
 佐藤 大阪府では平成11年に独自の橋梁点検要領を作成し、改訂を加えながら使用してきました。今回、法改正により義務付けられた近接目視を基本とした点検も、大阪府では平成17年4月に「基本は遠望目視で、必要に応じて近接目視を使用する」形で導入しています。また、近接目視が法定化される前の平成25年8月に大阪府では、原則近接目視という要領を定めています。
 鋼橋では伸縮装置の破損や排水系のゴミ詰まりから桁端部に水が浸入して、あるいは堆積土砂による(湿潤化の影響によって)桁端部や支承の損傷が起きるケースが多くみられています。PCやRCなどコンクリート系では、発生したひび割れから水が浸入して鉄筋の腐食やかぶりコンクリートのうき・剥離が生じています。
 部位別では、鋼桁では腐食、コンクリート床版ではひび割れや遊離石灰、地覆・高欄ではひび割れ、発錆、コンクリートのうき・剥離が多いと考えています。
 他の都道府県と大きく異なる劣化・損傷上の特徴はないと思います。

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