PCケーブルの破断や損傷も確認
一部でアルカリシリカ反応の疑い
――PC桁は
嘉手納 鋼桁と同様に飛来塩分による塩害により、ひび割れ、剥離・鉄筋露出、漏水・遊離石灰、浮きなどの劣化が生じています。また複合劣化事例として大保大橋などでPCケーブルの破断が生じている箇所があります。
沖縄県では剥離・鉄筋露出→鋼製シースの暴露・腐食→グラウト不良箇所のケーブル腐食+破断という時系列でPCケーブルが損傷していると考えています。
剥離・鉄筋露出状況(大保大橋) 漏水・遊離石灰(東屋部川橋)
PCケーブル破断(大保大橋) 橋軸方向ひび割れ(白銀橋)
また、その他の損傷劣化としては、白銀橋、我部祖河橋でプレテン桁の一部にアルカリシリカ反応に似た性状のひび割れが確認されています。
内在塩分量が鉄筋近傍まで高い箇所もあり
塩化物総量規制前のRC桁
――RC桁は
嘉手納 同様に飛来塩分、加えて供用年次を勘案すれば内在塩分による影響の可能性もある塩害により、ひび割れ、剥離・鉄筋露出、漏水・遊離石灰、浮きなどの劣化が生じています。塩化物総量規制(1986年)より前に建設された小規模RC橋では内在塩分量が鉄筋近傍まで高い箇所が見られます。これらは建設時に十分(コンクリート製造に使用した海砂が)洗浄されず、劣化の主な要因になっているものと推定されます。
ひびわれ、うき(川田橋) ひびわれ、うき、鉄筋露出(田港橋)
――部位別では
嘉手納 鋼桁、コンクリート桁は申し上げた通りです。鋼桁は活荷重に起因する亀裂やボルトのゆるみ・脱落は見られません。
床版は、鋼床版については採用事例も少なく損傷も特にありません。RC床版はコンクリート桁と同様の症状であり、一部で活荷重由来とみられる疲労によるひび割れも散見されます。
塩害環境に架設されるCo橋(安和橋) ひびわれ、剥離・鉄筋露出(安和橋)
コンクリート床版補強材のうき(伊那嘉原橋) コンクリート床版補強材の損傷(伊那嘉原橋)
橋脚は、コンクリート桁・床版同様に塩害による損傷が主因です。
RC橋脚のひび割れ(大浦橋)
支承は鋼製支承で伸縮装置の止水機能の劣化に伴う漏水による腐食が進んでいる箇所が散見されます。
地覆は他のコンクリート部材同様に塩害による損傷が主です。また、鋼製高欄基礎埋め込みタイプの場合、異種間金属の接触や水分供給によって生成物が発生し、鋼材の腐食膨張による内部応力の増加によりひび割れが生じた個所が散見されます。
RC地覆ひび割れ、鉄筋露出(大保大橋)
高欄は、アルミ製のものは比較定健全度が高い状態で維持できています。鋼製防護柵は、設置環境の違いにより一概には言えませんが、感覚的には建設から20年を超える程度で防食機能の劣化や腐食が見られます。
防護柵の破断(伊部橋) 変形、欠損、腐食(推川橋)
28橋が完了予定
橋脚耐震補強の進捗
――橋梁の耐震補強の進捗状況は
嘉手納 管内で橋脚の耐震補強が必要な橋は53橋あり、今年度末までに28橋が完了する予定です。今年度は2橋で対策を行っています。
また、落橋防止工の設置が必要な2径間以上の橋梁は78橋ありますが、そのうち平成8年道示以降に設計された22橋はすでに落橋防止装置を設けています。ほか高速道路上の跨道橋として2橋、改良事業に合わせて対策した2橋、3カ年プログラムで13橋、橋梁長寿命化に合わせて6橋、合計54橋を実施済みです。今年度も上福地橋、福美橋、大保福地橋、羽地奥武橋の4橋で落橋防止工を設置します。
橋梁の耐震補強および長寿命化
D評価は39橋
35橋を優先対策
――橋梁の長寿命化修繕計画に基づいた対策の進捗状況は
嘉手納 平成24年度および25年度に実施した詳細点検の結果、総合評価がD評価(5年以内に対策が必要)の橋梁は39橋、E評価(緊急対策が必要)1橋という結果が出ました。但しそのうち5橋については3橋を別事業で架け替え、1橋はすでに閉鎖しています。また1橋は別事業で撤去予定であることから今年度までに34橋、来年度に1橋(慶佐次大橋)の35橋を優先対策橋として設計する予定です。
また橋梁補修設計が完了したもののうち平成26年度までに15橋の補修工事を実施しています。
――橋梁上部工の補修補強について
嘉手納 25㌧対策に特化して取り組んでいる事例はありません。しかしながら上記経年劣化の損傷などの補修補強設計の中で架替え判定になる橋梁や照査の結果、耐荷力の向上が必要とされる橋梁についてその対策を適宜行っています。
現在は架替え、補修を含め対応を検討予定の約60%に当たる23橋について対策を完了しています。
経年劣化や疲労による上部工の補修補強は、過去3年で12橋の対策工を実施しています。今年度は有津橋、上福地橋、福美橋、瀬底大橋で施工を進めています。
橋梁長寿命化の進捗状況
鋼床版については、本部大橋(鋼床版箱桁)で詳細点検を行いましたが、損傷は見られませんでした。
――支承の取替やジョイントの交換について
嘉手納 支承は大保福地橋の1橋、ジョイントは荷重支持型を福美橋ほか5橋でそれぞれ交換しています。
塩害による損傷は4橋
大保大橋は架替えを検討
――塩害やアルカリ骨材反応による劣化の有無について
塩害やアルカリ骨材反応による劣化が疑われる橋梁
嘉手納 塩害で損傷した橋梁の状態を具体的に申しますと国道331号の潮上橋はRC床版の下面全体で剥離・鉄筋露出が生じているため、架替を選択して現在施工中です。
県道国頭東線の川田橋は上下部工の全面で剥離・鉄筋露出が生じたため、断面修復、電気防食(チタンリボンメッシュ方式)、コンクリート保護塗装(レックスコート)を施工します。
県道9号線の大保大橋は主桁下フランジ半数で剥離・鉄筋露出が生じており、シースも腐食、PC鋼線の破断も見られるため、架替えを検討しています。
県道14号の田原橋では上下部工全面と地覆で剥離・鉄筋露出および鉄筋の腐食が見られるため断面修復を行うと共にコンクリートの表面含浸工(プロクテクトシルCIT)を施工します。
次に、アルカリ骨材反応による劣化が疑われる橋梁ですが、まず県道7号線の宮城橋は円柱式橋脚の柱部に亀甲状のひび割れが生じていたため、耐震補強と兼用でPCコンファインド工法を施工しました。県道71号線の我部祖河橋、県道84号線の白銀橋は桁下部にPC鋼線方向のひび割れが生じていますが、程度はそれほどひどくなく、経過観察中です。