道路構造物ジャーナルNET

「エンジニア育成プラン」と「技術開発推進会議」の設立

更新時期を迎えた首都高速道路の人材育成・技術開発

首都高速道路株式会社
常務取締役執行役員

安藤 憲一 氏

公開日:2014.09.29

技術開発推進会議で戦略を統一
今年度から4年間で技術開発中期目標

 ――次に技術開発体制の充実について伺います。首都高速道路グループでは、一昨年安藤常務を座長とする「技術開発推進会議」を作り、グループの技術開発の効率化を図っていると聞きます。その内容を教えてください。
 安藤 一昨年前から首都高速道路グループ9者(首都高速道路(株)、(一財)首都高速道路技術センター、メンテンナンス6社、首都高技術(株))の技術担当役員やグループの社長などで構成する技術開発推進会議を設けており、そこで技術開発に対する統一した方針や総合的かつ中期的な戦略を審議しています。裏を返すとそれができていなかった。司令塔がなく、情報の共有や方針の統一が無いまま、各者が独自研究や民間との共同研究をばらばらにしていたために、同じようなテーマの研究をしていても気付かず、結果的に人材や費用を浪費していたことは否めませんでした。
 技術開発推進会議は、これを改善するために設立したもので、防災、維持管理、更新、環境、交通、その他の6分野の技術を「開発を進める技術」として首都高速道路の設備だけでなく、技術コンサルティング事業への活用も視野に技術開発を推進していきます。
 具体的目標として2014~17年度までの4年間の技術開発中期目標を定めています。テーマは「安全、安心、快適な道路の実現」、「構造物の効率的な維持管理、耐久性向上、更新の実現」、「技術力を生かした事業領域の拡大」の3分野です。第3の分野は、当社の持つノウハウを外部の機関に売り込み、収益と社会貢献を両立させようと考えているものです。いずれも推進会議で進捗状況を把握しながら、研究を進めていきます。
 ――テーマごとに具体的な項目を謳っています。


3つの大きなテーマ

 この3分野について具体的にどのような点(構造面(強度的な不足、経年的、中性化、塩害、アル骨、施工面、環境面(都市部・渋滞部ゆえの施工・環境面での必要な規制)など)で懸念している点があり、それをどのような手法で改善しようとしているのか構造物関係を中心に内容をお答えください。まず巨大地震への防災・減災対策から
 安藤 首都高速道路は、兵庫県南部地震以降、必要な耐震補強を実施してきましたが、東北地方太平洋沖地震の際に橋梁の一部で発生した損傷のように、地震波や地盤、構造等の特性により地震力が構造物に与える影響も様々です。このような中、近い将来に高い確率で発生が予想されている首都直下型地震に対して、災害救助・復旧活動や暮らし経済の復興に重要な緊急交通路、緊急輸送道路としての役割を期待されていることから、より一層の耐震性向上に向けて防災・減災、早期復旧を可能とする技術開発を推進することとしています。例えば、巨大地震動が橋梁構造物に与えるエネルギーを早期復旧可能な部位で吸収する等により、損傷を軽減すると共に巨大地震後の復旧性を高める技術や道路付属物の地震による影響を軽減する技術の研究を進めていきます。
 ――環境対応技術の向上とは
 安藤 太陽光発電等の再生可能エネルギー、省エネルギー技術を首都高速道路の維持管理に効率的に活用するための適用技術や、快適な走行空間の創出のために維持管理上の制約が多い道路空間における緑化技術の研究を進めていきます。
 ――構造物点検の効率化、高度化技術は
 安藤 高架下の状況が(下が平面道路との並行部であったり、既に各種施設として利用されているため)悪く機械足場が設置できないような場所や桁高4㍍以上の箱桁内部、機械足場のバケットが進入できないような狭隘部の構造物点検手法として2種類のポールカメラを開発しています。クリアランスが6㍍以下の点検にはヘッド部分に電動雲台とビデオカメラを装備し、カメラの向きやズーム機能を遠隔操作することで構造物の隅々を点検可能です。クリアランスが6㍍以上10㍍以下の箇所には、ヘッドにCCDカメラを取り付けたポールカメラを見たい箇所に動かし、点検します。


ポールカメラ

ポールカメラ拡大写真

 また、同様な箇所のたたき点検用システムも開発しています。約10㍍までの高所で使用可能なもので、ヘッドに打撃用の鉄球と音確認用のマイクロフォンがついた専用の打撃機を装着し、これを調査対象のコンクリート面に打撃させることで点検できます。変状の有無はマイクロフォンが拾った音を点検員が聞き分けるほか、収集した音の波形を標準波形と比較することで確認できます。
 ――他に開発を必要としている点検技術はありませんか。
 安藤 鉄道交差箇所や平面道路との立体交差部など供用条件により作業が困難な箇所や、ゲルバー桁の掛け違い部など、構造上の狭隘部にあるため点検が困難な箇所、河川内の鋼製橋脚には防食板を設置しているため、本体の腐食度調査が困難な箇所などで、点検困難箇所の点検効率を向上させる技術及び機材、損傷数が多い橋梁付属物の効率的な点検技術を求めています。


ゲルバー部は損傷を招きやすい

 点検の高度化を図っている技術としてPC構造物の損傷原因把握と健全性評価のため、主ケーブルを対象としたグラウト充填調査方法や残存プレストレスの計測方法を検討しています。
 その他には取得した画像を解析することによって損傷を判断する技術、重点的に監視が必要な箇所に対するセンサなどによるモニタリング技術の開発も研究しています。
 ――具体的に研究はどの程度まで進んでおられるのでしょうか。また、対象となる開発必要技術で念頭に置いておられる測定原理(非破壊、微破壊検査の場合)などを教えてください
 安藤 例えば、RC床版やトンネル壁面などのコンクリート構造物であれば、高架下から撮影された高精度の画像からコンクリートの浮きや剥落する個所を高い精度で発見するという画像解析技術を必要としており、研究の緒についたところです。
 ――道路構造物の効率的な補修・補強技術とは
 安藤 補修補強工事の制限が厳しい(頻繁に工事を行うことが困難で施工時間が短い)ため、補修補強技術に求める性能としては、耐久性の高い材料、短時間で施工できる材料・工法を検討・開発しています。
 道路構造物の高齢化に伴い増大する構造物損傷に対して、合理的かつ効率的に補修・補強を行うため、これまでの補修・補強事例の検索データシステムに関する研究、高架橋の接近困難箇所への適用が効果的な安全性・耐久性が高い恒久足場構造の研究、日々の補修工事の効率化を目指し、接触事故後の補修が容易となる遮音壁構造の改良技術、伸縮継手取り換え工事における低騒音型コンクリート破砕工法等の技術の研究を進めていきます。
 ――道路構造物の更新技術とは
 安藤 「首都高速道路構造物の大規模更新のあり方に関する調査研究委員会(委員長:涌井史郎東京都市大学環境情報学部教授)」からの提言(H25.1.15)を踏まえ、今後、大規模修繕や大規模更新を効率的に実施するために、工期を短縮する急速施工技術、高耐久性を有する床版構造、軽量で既存の下部・基礎構造への負担を軽減できる床版構造等の技術開発を進めていきます。
 ――道路構造物の耐久性向上技術とは
 安藤 道路構造物の高齢化に伴い増大する構造物損傷に対して、構造物の安全性を確保すると共に維持管理業務を分散・軽減するために、維持管理業務量の多いコンクリート床版、舗装の耐久性向上技術、支承の耐久性向上技術の研究を進めていきます。
 ――最後にコンサルティングサービスに係わる専門技術力の向上とは
 安藤 これまでの都市高速道路の建設・管理で培われた総合技術力をもとに、コンサルティング事業や道路保全事業の拡大が期待できる維持管理技術を中心として、国、自治体等、顧客のニーズを踏まえた技術開発を進めることで、コンサルティングサービスに係る専門技術力を向上させていきます。

 

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