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③衣浦大橋(上り線)の上・下部工の耐震補強工事の設計・施工について

若手・中堅インハウスエンジニアの本音 ~マネジメントしつつ専門的知見を得ていくために~

愛知県豊田工事事務所
工務課(工務・環境グループ)
宮川 洋一 氏

下部工対策について

「下部工対策」は、鉄筋コンクリート橋脚の軸方向鉄筋の「段落とし」を有する橋梁について、橋脚補強をする方針であった。

 当該橋梁の橋脚は正円の単柱式鉄筋コンクリート橋脚であり、すべての橋脚の軸方向鉄筋に「段落とし」が存在した。この「段落とし」が水中部にあったことから、費用のかさむ仮締切の施工が必須となる。このため「段落とし」部分のみを繊維シートで巻立て補強するのではなく、橋脚基部を含む柱全体を鉄筋コンクリートで巻立てて補強する方針とした。



段落とし位置と水面位置

 

 橋脚基部のじん性補強となる鉄筋コンクリート巻立てに加え、橋脚基部の耐力をレベル2 地震に耐えられる補強にするためには、軸方向鉄筋をフーチングへ定着(曲げ補強)をする必要があったが、橋脚基部の耐力を上げると基礎への負担が大きくなり、基礎を補強する必要が出てくる。基礎の補強は工費も膨大となることから、橋脚基部の曲げ補強を見送る場合が多かった。

 本橋の基礎形式が鋼管井筒であり、施工が打撃工法のため鋼管厚が+3 ㎜あったこともあって、結果的に基礎の耐力に余裕があった。よってフーチングへの鉄筋定着を行い、橋脚基部の曲げ補強を行うこととした。その結果、本橋において上部・下部・基礎ともにほぼレベル2地震に対する耐震補強ができることとなった。今思えばこの橋梁は運が良かったと思う。



フーチングへの鉄筋定着図


補強工法は「PCコンファインド」

 補強工法の選定にあたっては、通常工法の鉄筋コンクリート巻立てとした場合、ドライ施工のため、仮締切りが必要となる。この橋梁は港湾内の軟弱地盤上に橋脚の基部があり、締め切り鋼矢板の延長が長くなること、上空には桁があり施工費が割高になることや、陸路からの材料搬入路となる仮桟橋が航路などへの影響もあり設置困難であったこと、予算確保上の観点(予算に併せて1 橋脚単位で施工が可能)から、仮締め切りの要らない水中「PCコンファインド工法」を台船により施工する工法を採用することとなった。



橋脚補強方法比較表


「PCコンファインド工法」は橋脚耐震補強工法のひとつで、橋脚まわりに軸方向鉄筋を配し、その外側を取り囲む形でプレキャスト型枠を本設部材として設置し、コンクリートを打設した後、プレキャスト型枠にあらかじめ螺旋状にセットしたシースにPC鋼線を挿入・緊張し、補強する工法である。水中にある橋脚を補強する場合、コンクリート打設に水中不分離コンクリートを使用し、作業を潜水士によって水中施工することで、仮締め切りの要らない橋脚補強工法とされている。



PCコンファインド施工図


PCパネル/アンカー筋挿入のための削孔状況写真


アンカー筋の挿入/PCパネルの設置


実際の施工をしてわかったこと(主に反省点)

 現場施工では設計時や発注時にはわからなかったが、新たに気づいたことも多くあった。ほとんどが施工業者との施工打ち合わせ時に判明したもので、単に私の知識・経験不足であった。いくつか挙げておく。


上部工対策

 支承取替は元にある位置に支承を設置するため、既設支承から逃げ墨などにより再現するが、可動支承は施工時の温度による伸縮を考慮する必要があった。また主桁掛け違い部は、ジャッキダウンの後、橋面のフィンガージョイントに段差ができる恐れがあるため、その時は表面を切削し擦り付けることとした。これらは施工しなくてもあらかじめ施工機械や人員、交通規制などの準備をしなくてはならない。



(左)温度管理/(右)フィンガー切削


 支承アンカーボルト削孔機械の施工スペースが確保できておらず、所定位置にアンカーボルトが設置できないことが判明したため、施工スペースを確保するため形状を変更した。さらに支承周りの既設鉄筋を避けて削孔するため、アンカーボルト位置が確定するまで支承の製作ができないこともわかった。支承をベースプレートに現場溶接する構造に変更して対応した。

 施工計画がまとまり、ジャッキアップの段取りが決まったところで、添架管の管理者から安全性の検証をするための時間を確保してほしいとの申し出があり、施工時期の再調整をすることになってしまった。

 落橋防止装置の設置の際、ケーブルが桁端マンホールと干渉することが判明したため、位置をずらして施工した。

 箱桁内に取り付ける部材が想定していた開口部から搬入できないことも判明した。隣の径間の開口部から搬入し、真っ暗な箱桁内の長い距離を運搬することになってしまった。



箱桁内小運搬


下部工対策

 水中土工では、フーチング上の土被りがどんな状態か事前にはわからなかったが、大半がヘドロであると想定し、バックホウ浚渫とバッキューム浚渫を併用したが、土砂搬出の揚土船が港に一台しかなく、揚土船の手配等に担当者はとても苦労したと聞いた。



(左)バックホウ浚渫/(右)揚土作業

 

 フーチング上のアンカー削孔は水中施工の内で最も大変な作業の一つであった。業者は所定の間隔で削孔できるよう、テンプレートを製作し、竣工図書の配筋図を頼りに既設鉄筋をさけて削孔したが、図面とのずれもあるため、非常に苦労した。また、既設鉄筋を避けアンカーが当初位置からずれたため、設計再照査が必要となった。

 水中作業の施工管理は水中カメラを使用した。削孔数、削孔径、削孔長、アンカー定着長すべてが全数管理であり、かつそのほとんどが監督員の立会い確認を必要とするものであった。


潜水夫も投入した

 水中不分離流動化コンクリート施工は夜間施工であった。夜間の限られた時間内に所定の施工をすべて終えて交通解放する必要があるため、現場にはとてもピリピリした空気が流れていた。

 コンクリート打設が休日や夜間になると生コン工場は稼働していない。休日夜間工場稼働費があることも知った。

 この他、施工期間中に台風が襲来し、2度も仮設台船設備などを避難させることとなった。



コンクリート夜間打設


施工を終えて

 施工環境もとても良いとはいえない中、両工事の施工業者とも品質良く施工してくれた。形には出てこない現場の苦労の数々や設計図面通りに造るための施工における多くの技術やノウハウがあることを知った。工場で大量生産の製品を購入することとは大違いの現場製作一品ものであることを実感した。

 施工中に判明した事柄については設計変更することとなったが、すべてに対応できるわけではなかった。歩掛りでは想定されていない条件が施工途中に出てくることも補修補強の現場では多くあるものの、実績変更になじまない契約方法のものもある。「これはできるが、これは無理」なんてやりとりもお互いあった。業者との信頼関係がなければやっていけないと感じたし、こちらも信頼してもらえなければやっていかれないと思い、懸命に対応した。

「補修工事の現場施工では設計どおりにいかないことはよくあること」「請け負った以上、最後まできっちりやります」こういった施工業者の心構えを頼もしく感じたし、こういった業者に工事施工をしてもらいたいとも思った。

 現場で当初想定されていない事案が発生しても、それに対応できる施工業者であること、設計業者であること、私たちの組織であることも大事と思う。上部工対策工事の瀧上建設興業、下部工対策工事のピーエス三菱、ピーシー橋梁(現IHIインフラ建設)の担当者にはとても感謝している。