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A1~P2の塗替え面積は約2,200㎡ 塗膜剥離剤は「バイオハクリX-WB」を採用

沖縄県 本部大橋で塗替え塗装を含む補修工事を実施

公開日:2023.11.28

 沖縄県土木建築部北部土木事務所は、国道449号の本部町谷茶~渡久地に架かる本部大橋の補修工事を進めている。その内容は塗替え塗装のほか、歩道・地覆部改造工、高力ボルト取替工などである。現在はA1~P2およびP4~A2を施工中で、P2~P4の同工事と全長にわたる橋面工を2025年度末までに完了させる予定だ。塗替え塗装では、既設塗膜に鉛の含有が確認されたため、塗膜剥離剤(バイオハクリX-WB)と1種ケレンにより塗膜除去と素地調整を行っている。屋部土建が施工するA1~P2の現場を取材した。

本部大橋 供用から48年が経過 橋長352.4mの鋼6径間箱桁(2BOX)橋
 新本部大橋と同橋で4車線化を図る

 同橋は本部港渡久地地区の海上を跨ぐ、橋長352.4m、総幅員11.0mの鋼6径間箱桁(2BOX)橋。1975年の供用から48年が経過していて、1994年度に全面塗替え、2003年度に支承取替え、落橋防止装置設置、2014~2016年度にコンクリート巻立てによる橋脚補強を実施している。
 2022年には同橋陸側に新本部大橋(橋長330m、鋼5径間連続鋼床版箱桁(1BOX)橋)が開通し、暫定的に交通を切り替えた。両橋とも2車線で、補修工事完了後に同橋と新橋を上下線とした4車線で供用する計画である。


本部大橋。右側がA1(大柴功治撮影。以下。撮影=*)

新本部大橋/隣接する本部大橋(右側)と新本部大橋(左側)(撮影=*)

 同橋を含む本部町大浜~渡久地間約1.6kmは国道449号の唯一の2車線区間となっており、沖縄県では2027年度の完成を目標に4車線化事業(本部北道路工区)を推進している。橋梁部については新本部大橋を同事業で建設し、本部大橋を補修することにより4車線化を図ることにしたわけだ。同事業は、国道449号が沖縄美ら海水族館や海洋博公園、リゾート施設などへのアクセス道路となっており、行楽シーズンには2車線区間がボトルネックとなって渋滞が発生していることから、アクセス性向上と産業支援道路および緊急輸送道路としての整備を目的としている。


国道449号(本部北道路)事業概要図(沖縄県北部土木事務所提供。以下、注釈なき場合は同)

下フランジのエッジ部では肉厚減少を伴う腐食とともに一部で孔食が発生
 塗替えは箱桁外面が対象で、A1~P2・P4~A2の合計面積は約3,900㎡

 同橋は海上橋で台風の襲来が多いという沖縄特有の気象環境から、主に塩害による損傷が確認されている。2019度に実施した点検結果では、同橋の判定区分はⅢとなっていた。
 既設塗膜は、肉厚減少を伴わない軽微な錆が広範囲で発生し、下フランジのエッジ部では肉厚減少を伴う腐食とともに一部で孔食が発生していた。特に、雨水による付着塩分の洗い流しが期待できない箱桁内面(内側ウェブ)で損傷が顕著だった。対傾構および張出ブラケット、鋼製地覆についても腐食が著しく進展している状態であった。また、高力ボルトF11Tの遅れ破壊も確認されている。


桁の損傷状況

対傾構とブラケットの損傷状況

 塗替え塗装は、箱桁外面(外側ウェブと下フランジ)が対象で、A1~P2の面積は約2,200㎡、P4~A2を含めた合計面積は3,900㎡だ(なお、施工範囲は歩道・地覆部改造工でのブラケット割付の関係上、P2手前6mまでとなっているため、面積も施工範囲でのもの)。


上部工補修一般図/塗装塗替詳細図(拡大してご覧ください)

 内側ウェブは後述するFRP防護板を箱桁間に設置して、箱桁内部と同様の構造とするため、内面塗装仕様とした。対傾構と張出ブラケットは設計では塗替えを予定していたが、対傾構の一部部材で膨れ錆が発生して素地調整が困難なことが判明するなど、張出ブラケットを含め著しい損傷が確認されたことから、取替えを含めた検討を行っている状況だ。

既設塗膜の膜厚は一般外面が約600~800μm、特殊部が約1,100~1,200μm  0.15~0.19mg/Lの鉛の溶出が検出

 既設塗膜の膜厚は、一般外面が約600~800μm、特殊部(添接部)が約1,100~1,200μmに達する。建設時の塗装構成は、下塗り3層(ポリウレタン系ポリタンDHブイマー)、中塗り2層(塩化ゴム系中塗りラバータイト#100)、上塗り1層(塩化ゴム系上塗りラバータイト#100)であるが、各膜厚は不明となっている。
 1994年度には下塗り2層(変性エポキシ樹脂塗料)、中塗り・上塗り各1層(ポリウレタン樹脂塗料)の全面塗替えを行った。ただ、施工は塗膜劣化の著しい箇所のみ3種ケレンによる素地調整を行い、その他の箇所は増塗りとするものだった。当時の竣工図面が残っていないため、上記の塗装構成が素地調整を行った箇所のものか、増塗り部も同様であるかは把握できていないが、既設塗膜が厚くなっているのは増塗りによるものと考えられる。
 塗膜中の有害物質については、鉛、六価クロム、PCB、アスベストで含有量・溶出量試験を行い、鉛で0.15~0.19mg/Lの溶出が検出された。六価クロム、PCBは検出限界値以下で、アスベストは検出されていない。

塗膜剥離剤は「バイオハクリX-WB」を採用
 剥離作業は10人体制で1日あたり約120~130㎡を施工

 沖縄県では、塗膜除去と素地調整の施工で標準としている方法はないが、有害物質を含有する塗膜については、すべて湿式による剥離方法と1種ケレンを採用している。本工事でも同様とし、塗膜剥離剤を用いて塗膜の除去を行うことにした。
 塗膜剥離剤は経済性と県内実績から3種類を選定し、P4~A2の工事を施工する丸内が、一般部側面・下面および添接部で剥離試験を行って、より経済性に優れ、剥離性能が高かった「バイオハクリX-WB」(山一化学工業)を採用した。同水系剥離剤は、塩素系有機溶剤「ジクロロメタン」を使用していないことに加え、人体への影響や環境負荷の大きい規制対象物質を使用していないため安全性も高くなっていることが特徴だ。沖縄県内ではこれまでに東風平大橋塗替え(南部土木事務所)など約28,560㎡(沖縄総合事務局分など含む)の採用実績がある。


剥離試験

 塗膜剥離はP1からP2、その後A1からP1を作業員10人体制で進めた。当初計画では5人体制としていたが、「孔食対策や対傾構、ブラケット、FRP防護板設置などの施工を考えると、工程遅延を防ぐために剥離作業を可能な限り早く終わらせたかった」(屋部土建)ことから、作業員を2倍に増やしたという。この結果、1日あたり100㎡の剥離を目標にしていたが、P1からP2は約130㎡、A1からP1は約120㎡の施工が可能になり、工期を計画の33日から7日間短縮できた。
 剥離作業は、吹付によりバイオハクリX-WBを塗布して24時間養生した後に既設塗膜をスクレーパーでかき落としていった。一般部(側面)は1回塗布とし、一般部(下面)と添接部は2回塗布で同作業を繰り返している。塗布量は側面が1.0kg/㎡、下面が0.7kg/㎡+0.5kg/㎡、添接部が1.0kg/㎡+1.0kg/㎡となった。施工にあたっては、「(増塗りで塗膜厚が厚くなっている)特殊部では気象条件などもあり剥離に苦労したが、全般的にスムーズに作業を進めることができた」(同)とのことだ。


バイオハクリX-WBの吹付作業

かき落とし作業(1回目)

同(2回目)

塗膜除去完了

素地調整ではサンドブラスト工法を採用
 塗替え塗装の膜厚は310μm、増塗り部が370μm

 素地調整は、すべての塗膜除去作業完了後にサンドブラスト工法を用いて行う。A1からP2に向けて50㎡/日を施工していく計画で、素地調整後すぐに防食下地として有機ジンクリッチペイント(75μm)を塗布する。施工では研削材の回収に1~2時間かかるため、午後2~3時には作業を終了して、殻の回収・積込み、足場内の清掃を行っていく。


ブラスト作業

素地調整完了

 塗装は「沖縄地区鋼橋防食マニュアル」に基づいた仕様とし、防食下地に下塗り3層(弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料、各60μm)、中塗り1層(弱溶剤形ふっ素樹脂塗料中塗り用、30μm)、上塗り1層(弱溶剤形ふっ素樹脂塗料上塗り用、25μm)をスプレーで塗布していく。さらに、下フランジのエッジ部は下塗り1層(60μm)の増塗りを実施する。合計膜厚は310μmで、増塗り部が370μmとなる。
 内側ウェブは前述のように箱桁内部と同じ構造となることから、内面塗替え塗装系で対応し、2層塗り(無溶剤形変性エポキシ樹脂塗料、各120μm)とした。

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