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縦横目地とも間詰め材に超高強度繊維補強コンクリートを採用

NEXCO西日本 九州縦貫道宝満川橋で3断面に分割して床版取替

公開日:2023.12.19

床版の撤去・架設は『ハイウェイストライダー』を使用
 EMC壁高欄の位置を工夫し、間詰部の打設品質に配慮

床版の撤去・架設
 床版の撤去・架設はいずれも大林組の誇る床版架設機である『ハイウェイストライダー』を用いた。


床版撤去・架設遠景

仮設防護工/架設された床版

 一番撤去幅が狭いセパレート規制部の床版撤去・架設は片梁支持となるため、同箇所は仮設受桁を配置している。撤去はまず舗装を切削し、高欄はワイヤーソーで切断、床版は縦横を事前に道路カッターで切断した後、センターホールジャッキで床版と桁の縁を切り、ハイウェイストライダーで吊り上げ移動し、トレーラーで搬出する。その後、「現場の規模や規制条件に応じて採用した」(元請の大林組・大本組JV)カップタイプのフランジブラスターでケレンを施し、新設プレキャスト床版用のスタッドを溶植した後に、有機ジンクを上フランジ上面に塗装して防食した。その後、プレキャストPC床版を架設していく。


上フランジ上面のケレン作業/塗装作業/スタッド設置

プレキャストPC床版の架設① 右からトレーラーで運送されてきたプレキャストPC床版/側面を見ると横締めPC鋼材の配置が分かる/慎重に事前測量を行い/トレーラーが後ろからハイウェイストライダー内に床版を運ぶ

プレキャストPC床版の架設② 横に90°旋回させて現場に合わせる

プレキャストPC床版の架設③ 鉄筋どうしが擦過しないように慎重に位置合わせ

プレキャストPC床版の架設④ 
下からも確認する

 スタッド孔部分は桁と床版の接合部のみ無収縮モルタルを打設、その後の床版パネル版厚部は床版部と同様50Nの圧縮強度を有する現場打ちコンクリートで打設する。

 間詰部は幅210mmであり、平均して4日に1回(10~12目地分)のペースで超高強度繊維補強コンクリートを打設している。並行してプレキャストRC壁高欄(『EMC壁高欄』、ケイコン製)も設置するが、壁高欄の据え付け位置や継手部は床版の間詰部を必ず避けて、「超高強度繊維補強コンクリートの上に壁高欄の荷重を懸けないようにして、打設品質に影響を与えないよう配慮している」(同JV)。


EMC壁高欄もハイウェイストライダーで運んで最終的にはクレーンで設置した

 分割床版間の縦目地は先述した通り、横締めPC鋼材を用いるが、基本的には横目地と同様スリムファスナー工法を用いる。打設のシームは横目地とクロスしないよう必ずパネルの中間に設けている。
EMC壁高欄は無収縮モルタルを用いて床版と一体化するが、打設部の表面を予め目粗しし、無収縮モルタルの付着強度を向上させ、同部分が弱点とならないよう配慮している。

 1クール当たりの施工日数が短く、降雨の影響を避けるため、上フランジ上面塗装、スタッド溶植、無収縮モルタルの打設は必要に応じて雨養生を行い施工している。超高強度繊維補強コンクリートの打設はそうした養生が難しいため、打設予定日が雨天の場合は順延して、天気が回復した後にまとめて打設している。


スリムクリートの打設状況

床版防水はレジテクトGS-T工法を採用
 桁下の支承交換および塗装塗替えはH.W.Lが低いためスパイダーパネルを採用

床版防水
 床版防水はGⅡとしており、今回はレジテクトGS-Tを採用した。1列あたりを3日間で施工できる。3分割のため、防水工間には継手(ラップ部)が出来てしまうが、それが弱点となることを避けるため、50mm幅のラップ部の上に耐熱テープを貼り、その上から舗装を施工している。継手部を保護した上で、後工程の床版防水とラップさせ、品質を確保した。
 床版防水工後は基層(40mm厚)にFB13、表層(40mm厚に)高機能Ⅰ型を施工した。11月末には橋面上の全ての工事を完了する予定だ。


床版防水工はレジテクトGS-T工法を採用した

舗装工の施工状況

床版下の補修補強
 同橋のリニューアル工事では床版取替に加えて、支承交換と塗装塗替えも施工する。
 そこで課題となるのが、H.W.Lが高いことである。この条件があるため、出水期には吊り足場を撤去する必要があり、出水期には桁内の中段足場のみでの施工を余儀なくされた。撤去・設置のしやすさを考慮して本現場ではタカミヤの「スパイダーパネル」を採用している。また、撤去・設置を少しでも早くするため、鳶・架設業者を2社(塩月工業と日光建設)用意し、橋の左右両方から足場工が施工できるようにしている。


スパイダーパネルと足場内部

 一方で、本現場は支承を全数取り替える必要があり、さらに上下線14,000㎡に及ぶ塗替えも行わなくてはならない。既設塗膜には鉛が含有しており、塗膜剥離剤による除去を当初考えていたが、施工試験の結果、最低でも3回ほど剥離剤を塗って、剥がす工程が必要であることが分かったため、コストや工期の面から循環式ブラスト工法を採用して塗膜を除去、1種ケレンを施した上で、塗り直すことにした。施工を進めるため中段足場でもブラストおよび塗替えを行い、上フランジとウエブの上半のみを出水に先行して塗り替えるようなこともしている。現在は中央分離帯側の桁の上半部分が塗替え完了した状況だ。


上フランジとウエブの上半のみを出水に先行して塗り替えるようなこともしている

 支承取替は40基の既存の鋼製ヒンジ支承およびゴム支承を新たなゴム支承(ビービーエム製)に取り替える予定だ。


先行して支承取替が完了した箇所

 現場は職員が30人、作業員が120~130人それぞれ働く大所帯の工事である、「週休2日制や45時間の残業規制を守るためにはこれだけの人員が必要」(同JV)ということで、7~23時頃を2交代で人員を配置し、工事を進めている。

 元請は大林組・大本組JV。一次下請は塩月工業、日光建設(足場設置及び床版取替工)、日本通運(床版取替工、運搬工)、コンクリートコーリング(切断工)、カシワバラコーポレーション(塗替塗装工)、大林道路(床版防水・舗装)など。主要二次下請けは大阪防水建設社(床版防水工)など。

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