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波形鋼板ウェブラーメン箱桁、リブ付き床版構造を採用

NEXCO西日本 新名神大戸川橋ほか2橋の現場が最盛期

公開日:2023.11.08

 西日本高速道路は、現在、新名神の城陽JCT・IC~大津JCT(仮称)間の新設工事を進めている。その中で、難易度の高い大戸川橋他2橋(PC上部工)工事と吉祥寺川橋他2橋(鋼上部工)工事について、スポットを当てた。今回はそのうち大戸川橋他2橋(PC上部工)工事をレポートする。(井手迫瑞樹)


大戸川橋完成イメージパース(NEXCO西日本提供、以下注釈無きは同)

新名神供用路線を跨ぐ箇所に架設する困難なミッション
 桁高は最大11m ランプ橋はR=200、横断勾配は6%

構造及び施工概要
 大戸(だいど)川橋他2橋(PC上部工)工事は、新名神供用路線、一級河川大戸川や滋賀県が所管する主要地方道大津信楽線を跨ぐ箇所に架ける大戸川橋と大津JCTB、同Cランプ橋を建設する工事である。主構造物となる大戸川橋は上り線が橋長1,313m、下り線が同1,338m、幅員13.76mのPRC10径間連続波形鋼板ウェブラーメン箱桁橋で、最大支間長は160mに達する。同橋は大津JCTの一部を担う橋梁でもあり、本線橋脚(P5)から分岐してランプ橋となる構造であるため、通常の片側3車線の幅員よりさらに広い幅員を要する構造となっている。そうした巨大な構造であるため、波形鋼板ウェブを採用し、主桁の自重軽減を図っている。桁高は最大11mを有する。上下線の離隔は1m程度と極めて狭い。コンクリート強度は50N/㎟、中央と拡幅部で種別を変えている(詳細は後述)。


側面図および断面図

波形鋼板ウエブ設置状況(右写真は井手迫瑞樹撮影)

 Bランプ橋は橋長602m、Cランプ橋は同694m、有効幅員はいずれも8.5mで、両橋とも上部工形式はPRC2+5径間連続波形鋼板ウェブラーメン箱桁橋である。最大支間長はBランプ橋が159.3m、Cランプ橋が159.7mとなっている。ランプ部も最大桁高は11mに達する。本線橋はほぼ直橋であるが、ランプ部はR=280と曲線がかなりきつい.さらに横断勾配は6%、縦断勾配は下り4%~上り2.7%と一つの橋梁でも大きく変化するため、注意が必要である。


ランプ部はR=280と曲線がかなりきつい

平面線形がかなり変化していることが分かる/最大桁高は11mに達する(井手迫瑞樹撮影)

 桁架設は移動作業車(最大で32基が同時稼働)を用いた片持ち張出し架設で施工している。また、張出し架設をスムーズに行うため、今回採用したリブ付き床版は最大11m程度の長さにした上で、工場からトレーラーで現場まで運搬し、桁の上下に設置してあるクレーンで吊り上げ、橋面に配置している台車で移動させ、移動作業台車の電動チェーンブロックに吊直し、架設していく。


プレキャストリブおよびPC版工場製作状況写真

移動作業台車(井手迫瑞樹撮影)

張出し施工ステップ写真

供用中の本線と移動作業車の離隔把握など安全確認にBIM/CIMを活用
 移動作業車から最低1mの離隔を設定して掘削

施工に際しての安全性の担保
 現場は、供用中の新名神高速道路上において、移動作業車による張出し施工を行わなくてはならない。移動作業車を含めた形での供用路線との離隔確保が、安全上最も重要な点である。そのため、供用中の本線と移動作業車の離隔把握など安全確認にBIM/CIMを活用している。

 さらに現場においては、橋脚間に地山がせり出しているような箇所がある。そこを移動作業車が通れるようにするため、地山が干渉する箇所について、移動作業車から最低1mの離隔を設定して掘削し、安全性を確保している。

 作業員の安全対策としては、三井住友建設が開発し、全国展開している「AI技術を使った安全注意喚起システム」を使っている。システムは、過去の事故事例が蓄積されており、当日の作業内容の情報を入れると、過去の事故事例や注意点が出てくる。これを用いてKY活動時に画面を見ながら、職員が注意喚起をして、作業にかかっている。

 更に供用している新名神高速道路上の張出架設となる本線橋(上下線)およびCランプ橋の3径間においては、移動作業車の次の打設ブロックへの移動中における走行車両の安全確保を目的に、供用している新名神高速道路(下り線)について先頭固定規制を行う。具体的な規制方法は、「黄パト3台に高速隊の協力も得てパトカー1台を加えた計4台で行う。高速隊に一番後ろを抑えていただき、走行車線と追越車線に黄パト車が並ぶ形で頭を抑え、通行車両を低速走行に移行させる。さらにその前に1台の黄パト車が走行車両に追随して、移動作業車が移動する直下の道路に通行車両がいない時間を10分程度作り、その時間を使って作業車が移動するという方法」(NEXCO西日本)である。これを2023年2月から開始しており、月に2~4回、計30回程度行う予定だ。

6車線を一括施工するためにリブ付き床版構造を採用

 本線橋においては、リブ付き床版構造を採用した。同橋はその形状から張出床版長が異なっており、片方が2.8m、もう片方が5.4mと比率は1:2と不均衡である。左右が非対称であることから、通常は移動作業車で桁や床版の荷重を持たせるが、非対称部分に関しては、リブを使うことにより、移動作業車に荷重をかけるのではなく、桁に荷重を負担させる施工方法を採用することで、移動作業車にかかる偏荷重を抑えて、安定した施工を確保した。標準のリブ間隔は2.4mとした。リブを設け、その上に型枠代わりとなるPC板を配置する(「つまりPC板をリブで受け、PC板の上に鉄筋を組みコンクリートを打設していく。コンポ橋と同様な構造として考えれば理解しやすい」(NEXCO西日本))。また、リブは工場で製作するプレキャスト製品としており、現場では煩雑な型わく施工が省略できることで、施工時における合理化を図ることができる。


張出し施工ステップ図

床版横締めPCケーブル詳細図

 施工は、通常の4車線を施工するブロックと、拡幅部を施工するブロックで、1ブロックずつ追いかける形で施工する。図の赤い部分の前のところは、移動作業車(スパン4.8m)で荷重を受けて、後打ちする拡幅部については、リブを使って桁自身に荷重を持たせて施工を進めていく。即ち4車線を作る(左右が1:1の比率部分)部分のみ移動作業車が荷重を負担するという事だ。

 通常は、4車線分を製作して、完成後に2車線分の作業用台車を用いて架設する。しかし、今回は6車線を一度に作ることを大前提に移動作業車を改造した。そうすると1ブロックを後から追いかける形で作業する方が足場を兼用できるし、効率良く作業することができた。


先行施工部の配筋状況(井手迫瑞樹撮影)

使用する移動作業車
 移動作業車(1台当たりの最大自重は約325t)のスパンは標準ブロック長4.8mに合わせる形とした。幅については、有効幅員は13.76mであるが、合流部ではさらに拡幅していくため、最大となるP5橋脚部では25mの幅にも対応できる幅をとった。断面変化に対応するため、移動作業車の主構であるトラスの間隔を移動できるように中段に移動梁を一段余分に設置した。

 移動作業車1ブロック長4,800mmの中では、約200mmの拡幅量が発生する。これが13ないし15ブロックあるため、全体で約2,500mmの拡幅量となる。設計的にブロック長を全て4.8mとすると、調整しろがなくなるため、最初の1、2ブロックを調整しろとして3.2m又は4.0m程度で施工し、それ以降はその後4.8mの標準ブロックで施工する。

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