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橋梁基礎工事と地下ポンプ場工事の2現場で今年度中に導入予定

オリエンタル白石 ニューマチックケーソン工法 ケーソンショベル自動運転を可能にする施工管理システムを開発

公開日:2023.08.07

 オリエンタル白石は、茨城県つくば市にある同社つくば機材センターで、ニューマチックケーソン工法でのケーソンショベル自動運転システムを公開した。同社では建設重機の自動化技術などの開発を行っている「DeepX」とともに、同工法の施工管理システム「GeoViz」を開発し、ケーソンショベルの自動化を実現。今年度中に橋梁基礎工事と地下ポンプ場工事の2現場で初導入する予定だ。
 ニューマチックケーソン工法では、地上で鉄筋コンリート製構造物(躯体)を構築して、躯体下部の作業室に地下水圧と同等の圧縮空気を送り込むことで地下水の侵入を防いでドライな環境でケーソンショベルを用いて掘削、アースバケットでの排土を行いながら、躯体を地中に沈めていく。


ニューマチックケーソン工法の概要(弊サイト掲載済み)(オリエンタル白石提供)

 橋梁基礎工事やシールド立坑工事などで採用されてきたが、近年では地下調整池や地下ポンプ場での採用も増加しており、大断面化、大深度化が進んでいる。そのため、生産性や安全性の向上が求められていた。

地盤の形状や高さなど作業室内の状況を3次元で可視化
 掘削・排土エリアはマウス操作で指定可能

 今回開発した「GeoViz」は、作業室内の状況を点群情報でリアルタイムに取得できる「LiDARセンサ」2台をケーソンショベルに搭載し、ケーソンショベルの位置と姿勢、地盤の形状、高さを3次元で可視化することで施工管理を行う。ケーソンショベルには、走行距離計や旋回エンコーダ、ブーム距離計などの各種センサが搭載されており、3次元データと連動することにより、目標深度までの地山掘削と指定位置への排土の自動運転を実現した。


自動化されたケーソンショベル(撮影:大柴功治。注釈なき場合は同)

ケーソンショベルに搭載された各種センサ(オリエンタル白石提供)/LiDARセンサは2台搭載している

 本システムでは、任意の視点から現場状況が確認できるとともに、地盤の高低差の色分け表示や開口率(側壁(刃口)周辺の地盤の掘り残し割合)の自動計算も可能(現在は人力で計測)なため、進捗および品質管理が向上することも特徴となっている。安全面ではケーソンショベル同士の衝突防止機能を搭載。2台のケーソンショベルが一定範囲内に近づくと自動で停止することで、複数台の自動運転時に加え、オペレーターによる地上からの遠隔操作を併用する作業時の安全性の確保も図った。
 自動運転を行う際の操作についても配慮を行っている。画面に数値を入力するなどの煩雑な作業は必要なく、マウス操作で掘削と排土の範囲を指定して、運転開始のボタンを押すだけなので、作業員の負担が大幅に軽減されている。


任意の視点から現場状況を確認でき、地盤の高低差を色分けして表示する

マウス操作で掘削と排土の範囲を指定。ボタンを押せば、自動運転が開始される

2台が同時に自動運転を行う

モニターに表示される作業状況

 自動運転での掘削精度は、「システムで可視化することにより、カメラで管理していた遠隔操作よりも向上」(オリエンタル白石)し、そのスピードは遠隔操作と「ほぼ変わらない」(同)という。遠隔操作では1台につき1人のオペレーターが必要だったが、自動化されたケーソンショベルは複数台を1人で動かせることから、省人化および生産性向上を実現できる。また、昼間は遠隔操作併用で施工し、夜間に自動で掘削土を集積し翌朝に排土することで、さらなる生産性向上を図ることも目指している。
 システム開発にあたっては、「リアルタイムでの可視化は通信量が多くなるため、ケーソンショベルに計算機を設置して、そこである程度のデータ処理を行うことで通信量を抑えた」(DeepX)。さらに、高気圧下の作業室内でトラブルが発生したときに有線では対応が困難になることから無線通信としたが、密閉区間での通信障害やデータ量確保について試行しながら実現化を進めた。

初導入となる橋梁基礎工事ではケーソンショベルをすべて自動化
 ニューマチックケーソン工法の完全無人化を目指す

 今年度に導入が予定されている橋梁基礎工事では3~4台のケーソンショベルをすべて自動化し、地下ポンプ場工事では全24台のうち6台(1列3台×2列)を自動化する計画だ。実現場でシステムや計器の耐久性を再確認するとともに、遠隔操作との混在施工についても検証を行っていく。
 今後は、排土用バケットへの積込み自動化や沈下掘削の自動化(本システムは躯体が沈下する箇所(刃口周辺)以外の掘削が対象)、クレーン等による排土用バケット内土砂の運搬を含めた自動化などの課題に取組み、同工法の完全無人化を目指していく。

2020年に実現した一部自動運転技術を本システムで活用

 欧米で開発され発展した同工法は、関東大震災復興事業の隅田川架橋工事として永代橋に採用された。オリエンタル白石はその前身の白石基礎工業創業時(1933年)から同工法のパイオニアとして取り組み、現在では国内のニューマチックケーソン市場の7割弱を占めるリーディングカンパニーとなっている。
 同ケーソンの大断面化、大深度化が進み、高気圧化の作業時間の制約のため、作業室内の無人化研究を1970年から開始し、1987年には遠隔操作システムを実用化した。2020年には、遠隔操作でほぐした地山を掘削して、土砂を指定位置まで運搬して排土する一部自動運転を実現している。今回のシステムの各種センサは当時とほぼ同様となっているが、LiDARセンサは1台からより精度の高い2台に増設して、作業室内の死角がないようにした。


掘削の機械化の推移(オリエンタル白石提供)

 同社では、2023~2025年度中期経営計画で総額220億円の投資を行う。そのうち、50億円が既存事業継続投資で、110億円が成長機会創出投資、60億円が資本業務提携などの戦略投資となる。ニューマチックケーソン工法については、既存事業継続投資で機材の更新や開発を行い、成長機会創出投資で無人化施工をさらに進める。これら投資を行うことで、基幹事業である同工法を成長戦略の柱ともしていく方針だ。

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