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断面交通量は約21,000台で、大型車混入率は約4割

NEXCO中日本 中央道岩の沢橋(上り線) R=300、縦横断勾配5%、斜角も変化する現場で床版取替

公開日:2023.09.19

片側の壁高欄が付いた状態で撤去架設
 R=300mの平面曲線に配慮し、架設枚数は最大5枚に抑制

施工
 さて、施工工程である。基本的にはオーソドックスな床版取替工法と大林組が保持するフランジブラスターやスリムファスナーなどの独自技術を交えていく。


基本施工手順


舗装切削/既設床版の切断/コア削孔

コンクリート製仮設防護柵

 まずはコンクリート製の仮設防護柵を設置し、舗装を切削後、床版および高欄を切断していく。床版は半断面であり、床版架設機の吊上げ性能と施工効率の向上を企図して、壁高欄ごと撤去することにした。縦横断方向ともロードカッターで切断し、張出床版から外側はワイヤーソーを回して切断した。その後センターホールジャッキでジャッキアップして、床版と桁の縁を切り架設機で壁高欄と床版が一体となったL型の状態で吊上げ、トラックの荷台に載荷して撤去・搬出した。搬出の際は、シートで全体を包み、走行中にコンクリートの破片が飛散しないよう養生している。


ハイウェイストライダーの軌条設備/ハイウェイストライダー/床版撤去状況

 次いで主桁に残ったハンチ筋の一部は、グラインダーで仕上げ、最後にフランジブラスターでケレンして、速乾性の変性エポキシ樹脂塗料を塗布し、シールスポンジ『トメルンダー』を配置していった。


ケレン作業とトメルンダーの配置

 次いで床版の架設である。今回のハイウェイストライダーによる床版の撤去・架設は1日最大6枚程度行えるが、「今回は「R=300m」の平面曲線であったため、重心の偏心量が大きくなり、1日の床版取替枚数を6枚とすることができなかった」(大林組)。そのため1日当たりの作業量は最大5枚とした。床版の撤去・架設時はいずれも片側に高欄があるため、偏荷重が生じる。これについては「重心調整用の吊り天秤で調整して偏荷重がかからないようにしている」(同)。



新設パネル設置状況

床版にEMC壁高欄を仮留めする形で載せ、施工効率を向上
 通りや高さは調整ボルトで調整

 今回は先述の通り床版にEMC壁高欄を床版仮置きヤードにて仮留めする形で載せ、施工している。これは昨年施工した別現場においては床版と壁高欄を別々に架設しており、「1日の作業が床版架設後、間詰部の無収縮モルタルを打設し、翌日に架設する壁高欄を門型架設機の中に取り込むまでとなるため、架設鳶の作業員を拘束する時間が非常に長くなってしまった。場合によっては日が変わるくらいまでかかってしまっていたほどだ。そのため予め壁高欄を床版上にセットしておくことで作業効率を改善した」(同)。


予め壁高欄を床版上にセットしておくことで作業効率を改善

 ただし、線形や勾配の関係から、完全に一体化して施工してしまうと通りや高さを合わせるのが難しくなる。そのため高さ調整ボルトで床版と高欄を繋げた形で架設し、調整ができるようにした。床版架設後は無収縮モルタルを地覆と高欄の間に入れて一体化する。高欄内部にはインフラ用の三段の管があるが、これは接続面にスポンジを噛ませることでモルタルが入らないようにした。通りは架設後に塩ビ管を挿入して確認している。


高欄内部にはインフラ用の三段の管/通りは架設後に塩ビ管を挿入して確認

スリムファスナー 床版天端にふせ型枠を設置することでダレを止め
 高性能床版防水工はレジテクトGM-S工法

 床版間の間詰部施工は床版取替サイクルを追いかける形で行う。間詰箇所は半断面につき横目地が46箇所あり、中央に縦目地を有する。縦・横ともスリムファスナーを採用している。間詰幅は標準部で210mm、間詰部の鉄筋はD19もしくはD22を2段配置しており、隣り合う床版同士から突出する鉄筋間距離は芯で62.5mm、床版単体の鉄筋間距離は125mmとした。
間詰コンクリートであるスリムクリートは180N/mm2のUFC(超高強度繊維補強コンクリート)である。高い圧縮強度を有するコンクリートであるが、セルフレベリング性を有するため、今回の現場のような縦横断勾配が大きい箇所では下り勾配に流れてしまうリスクがある。そのため床版天端にふせ型枠(1mぐらいのアクリル板)を設置することでダレを止めている。さらに左官仕上げを施して平滑にし、打設品質を確保した。また、縦目地の打継目は床版パネルの中間とし、縦横の間詰コンクリートの打継ぎ目と一致しないようにしている。


目地部の打設

 半断面同士の接合はスリムファスナーだけでなく横締めPC鋼材を配置する構造とした。床版・桁間の接合は50N/mm2の超速硬無収縮モルタルを打設した。

 端部は鋼製フィンガージョイントを交換した。床版とジョイント間の間詰部は50N/mm2の膨張剤入り早強コンクリートを打設している。こうしたコンクリート打設においては、多少の雨天でも施工できるようにテントを設置し、導水を確保した上で施工することで、工程の遅延を抑止している。

 床版・高欄の設置完了後は、高性能床版防水工および舗装工を施工して完了した。高性能床版防水工はレジテクトGM-S工法(吹付工法)、基層はFB13、表層は高機能Ⅰ型を使用している。


床版防水工および舗装工の施工状況

床版内部および継手部はエポキシ樹脂塗装鉄筋を採用
 桁補強や16基の支承交換、2600㎡の塗装塗替えも進める

防食
 プレキャストPC床版は、塩害対策のため高炉スラグ微粉末を50%セメントに対して打割置換した。さらに床版内部および継手部は全てエポキシ樹脂塗装鉄筋(長泉パーカライジング製)を用いている。壁高欄部は同様のコンクリートを用いており、エポキシ樹脂塗装鉄筋は床版との継手部のみ配置している。

 桁下では桁の補強(10t)や支承交換(16基)、塗装塗替え(2,600m2)などを行う。

 元請は大林組・JFEエンジニアリングJV。一次下請けは川口組(床版架設工ほか)、日本通運(床版撤去工)、宮本組(床版運搬工)、第一カッター興業(既設床版・壁高欄切断工)、アオイ東海(スタッド溶接工)、三信工業(半断面機製造)、大林道路(床版防水・舗装工)、ケミカル工事(無収縮モルタル工)。

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