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Hydro-Jet RD工法、UFC床版製作施工も着実に改良、HSPJを初採用

阪神高速神戸線 リニューアル工事の床版取替工で新技術を続々投入

公開日:2023.08.31

平板型UFC床版 強靭で薄く、軽量 大ブロック化して施工効率も向上

 さらに床版取替は、所定の強度を確保しながら軽量で薄い構造とできる平板型UFC床版(神S360で適用)と、同じく版厚を薄く抑えられ、プレストレスの導入が容易なHSプレストレスジョイントを用いたプレキャストPC床版(神S361下り線)を採用し、終日通行止め期間内の限られた工期で床版取替が完了できるようにした。両工法はいずれも阪神高速道路が鹿島建設(UFC床版)、清水建設・ユニタイト・住友電気工業・昭和コンクリート工業(HSプレストレスジョイント)と共同開発したもの。

神S360
 平板型UFC床版は、更新に使用される通常PCaPC床版より30%以上軽量であり、取替前のRC床版より12%以上薄肉である。また、UFCは極めて緻密な硬化体となるため劣化因子の侵入を抑制可能である。本工事に適用したUFC床版パネルは、橋軸方向の長さを従来より長い2.31m(橋軸直角方向は8.7m)として大ブロック化し、パネル枚数の削減(今回は全部で26枚施工)によって架設効率の向上を図った。この結果、全体の架設時間を守口線での実績から6割に短縮した。一方で、床版厚を150mmとして既存RC床版より薄肉化することで、重量を7.3t/枚に抑制した。橋軸方向にはプレストレスを導入して床版同士を接合する構造としている。このとき、縦締めPC鋼材のグラウト注入口、排気口を全て床版下面に配置することで、雨水の浸入を防止して耐久性を向上させつつ、他の作業をPCグラウト作業と同時に進めることで、工程を短縮している。


平板型UFC床版


床版割付図

 鋼桁上フランジとUFC床版間の合成部に充填する間詰め材には,超高強度繊維補強セメント系複合材(UHPFRC)を使用して合成桁橋においてもスタッドジベル孔を削減し,更なる耐久性の向上を図っている。また、プレキャスト壁高欄をUFC床版に固定するアンカーボルトと床版を敢えて付着させないことで、床版を傷めることなく壁高欄を取り替えられる構造を採用している。

ツインツライチカッターで既設スタッドを一括切断
 新設床版はアームローラーを用いて設置

 機材面も改良している。既設床版撤去後の床版上面のケレン作業を最小限とすべく、既設スタッドの切断に鹿島建設とコンクリートコーリング(大阪)が共同開発した『ツインツライチカッター』を用いることで、前工程で10mm程度まで切断されていた既設スタッドの残部を1mm以下にまでに効率的に一括切断した。『ツインツライチカッター』は2年半前に施工した守口線の床版取替時に一部試適用され,当時は鋼桁の上フランジを上下から挟み込んで機体を固定して施工していた。今回は上フランジの左右から押さえ込んで固定することで据付けを簡単にし、施工性を向上させている。さらに機材自体の重量も以前の50㎏から30㎏程度に軽量化した。


ツインツライチカッターによるスタッドの切断状況

2種類の切断機

 また守口線と比べてスタッドの配置間隔が狭く、密に配置されているため、2種類の切断機を用意した。5主桁で同時に施工できる様、専用架台や切断機械を配置し、桁上の既設スタッドを全数切断した。切断するスタッドを選択する形で施工を効率化することも考えられるが、「リニューアル工事の現場は工程短縮が求められており、測量によって残置・切断するフランジをより分ける作業を行うよりは効率的な切断方法によって全数切断したほうが効率的であると判断した」(鹿島建設)。切断後はグラインダーで仕上げて、新たなスタッドを全部で約1,600本溶植した。

 新設床版パネルは上下線に分割し、それぞれ13枚ずつ26枚配置した。床版の架設には守口線と同様にアームローラーを使用した。本工事では、アーム先端に装着した横送り用ジャッキを改良して,床版パネルの左右方向への位置調整幅を既存の±2.5cmから±10cmまでに向上させ、床版運搬・据置き時の効率を向上させている。




アームローラーによる架設

目地充填材も床版本体と同強度のUHPFRC
 目地幅は品質などを考慮して最適の50mm幅に設定

 前述の通り橋軸方向の接合部(横目地)にはPC鋼材によってプレストレスを与えた。一方、中央分離帯に位置する橋軸直角方向の接合部(縦目地)にはプレストレスを与えず鉄筋で接合する構造を採用している。全ての目地への間詰め材は母材と同じ150N/mm2以上のUHPFRCを用いている。


接合部の形状

 横目地の間詰幅は50mmと通常のPCaPC床版の鉄筋継手構造に比べ7~5分の1程度となる。もっとも、以前は目地幅を20mmまで狭めていたが、「UHPFRCは粘性があることから幅20mmでは充填に時間がかかった。実験を繰り返した結果、50mm程度の目地幅で充填時間が最短で品質も安定していることを確認したうえで採用した。



床版の配置状況と目地幅 目地幅は50mm程度とした

 練混ぜ時間と打込み時間の同期という意味でもこの目地幅が最適と判断している」(同)。現場では専用ミキサーで製造するが、UHPFRCの練混ぜ時間を短縮するために、鋼繊維の長さも18mmの1種類とし、プレパックして現場での管理を簡素化した。従来は、長さ15mmと22mmの鋼繊維を併用しており、練混ぜ時の管理面においては若干難しさがあった。


鋼繊維の長さも18mmの1種類とし、プレパックして現場での管理を簡素化

 練混ぜ完了したUHPFRCはバケツに小分けにして所定位置まで運び、間詰部だけでなく、スタッドジベル孔にも投入し、床版全体の強度を統一した構造としている。


UHPFRCの現場打設状況

「短スタッド+下面ボルト」でずれ止め構造を成り立たせている

 床版の縦締めPC鋼材の緊張も工夫している。シースの継手構造には栗本鐵工所製のジョイントシースを採用し、仕口合わせがしやすい構造とした。定着体も今までのアンカープレート+メスコーンからリブ付きメスコーンに変更した。従来の定着体は「定着部の前面に局部的な引張応力が発生し、ひび割れが生じやすく、緊張力を段階的に上げなくてはならず、緊張回数が多くなっていた。リブ付きメスコーンにすることで、局部引張によるひび割れの発生の恐れがなくなり、段階的な緊張の必要がなくなった。この結果、緊張回数を3分の2に減らすことができた。さらに鹿島建設が開発した緊張管理図自動作成システムの機能をフルに活用できるようになり、1本あたりの緊張時間も大幅に短縮した。結果的に、上下線合計116本のPC鋼材の緊張を約6時間で完了することができた」(同)。


リブ付きメスコーン

緊張管理図自動作成システム


交差定着パネルからの緊張状況画像

ケイコン製の 阪高仕様のプレキャスト壁高欄を採用

 壁高欄はケイコン製の阪神高速仕様適合プレキャストRC壁高欄を採用した。壁高欄と床版との接合部は、床版製造時に特殊抑え型枠を使用して凹凸面を形成し、付着を確保している。


床版と壁高欄の接合部/ケイコン製のプレキャスト壁高欄を採用した

 元請は鹿島建設。主要一次下請はカイセイ、関口建設(架設全般)、コンクリートコーリング(切断工)、丸栄コンクリート工業(アームローラー製作、運用)、井上商事。材料製作・調達が、富士ピー・エス(プレキャストUFC床版製作)、住友電気工業(PC鋼材)、デンカ(現場打UFC製造)、ケイコン(プレキャスト壁高欄)、スバル興業(遮音壁)、橋梁技建(排水溝など)。

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