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半断面施工で上り線走行車線側を施工中

NEXCO中日本 中央道 深沢橋床版取替工事の現場を公開

公開日:2023.07.04

 NEXCO中日本名古屋支社は6月23日、中央自動車道の土岐JCT~多治見IC間に架かる深沢橋の床版取替工事の現場を報道陣に公開した。同工事は半断面施工で行われており、現在は同橋上り線走行車線側の工事が進められている。下り線(床版取替面積1546.5㎡)は2022年度に完了し、上り線追越車線側を8月下旬から12月中旬の予定で施工して同橋の床版取替は完了する(上り線の同面積は1489.2㎡)。


上り線走行車線側の工事が進められている深沢橋(大柴功治撮影。注釈なき場合は、以下同)

 半断面施工を採用したのは、工事期間中に下り線2車線と上り線1車線の合計3車線を確保する必要があったからだ。土岐IC~多治見IC間の平均交通量が約32,000台/日で対面通行規制では大規模な渋滞が発生することに加え、同橋が土岐JCTに近接していて下り線で渋滞が発生した場合、東海環状道の通行にも影響を及ぼすという現場状況があった。


土岐IC~多治見IC間の交通状況(NEXCO中日本提供)

 同橋は、橋長が上り線143.4m、下り線149mの鋼単純合成鈑桁橋(A1~P1)+鋼単純上路トラス橋(P1~P2)+鋼2径間連続非合成鈑桁橋(P2~A2)で、平面線形R=805、縦断勾配4.6%、横断勾配4%という構造だ。
 トラス橋部と非合成鈑桁部では本現場用に施工者のIHIインフラ建設が新たに開発した半断面施工用床版取替機を用いていることが施工上の大きな特徴だ。合成鈑桁部は50t吊クローラークレーンで床版撤去・架設を行っていて、公開当日には新設床版の架設が完了していた。「下り線施工の経験から馬蹄形ジベルの撤去を含めて作業は順調に進み、計画より1日早く架設を終わらすことができた」(IHIインフラ建設)とのことだ。


深沢橋床版取替工事 概要図(NEXCO中日本提供)

トラス橋部+非合成鈑桁部で採用している床版取替機/合成鈑桁部の床版架設は完了していた

 床版取替機は、移動機構にPC橋の張出架設用移動作業車(ワーゲン)の仕組みを一部取り入れることで、より厳しい曲率と勾配の現場でも施工できるものとした。具体的には、鉛直ジャッキとツインジャッキを用いた構造を採用することにより、小刻みな移動および向き調整、縦横断勾配への対応が可能となっている。大きさは橋軸方向約13m×橋軸直角方向約4m×高さ約7m(重量は21.5t)で、床版の吊上げと吊下げを行う主桁を伸ばした状態では橋軸方向が全体で約19mとなる。


現場公開時には当日分の既設床版撤去が完了していた

床版取替機(後方から)/追越車線を車両が高速で通過していく

 取替機では、1日あたり既設床版を3枚撤去して新設床版を同数架設している(下り線も同様の施工を行った)。新設床版は橋軸方向2.1m×橋軸直角方向4.5m~5m、厚さ210mm、最大重量約7.5tで、上り線走行車線側では合計126枚を架設する。
 橋軸方向の床版接合(横目地)はIHIインフラ建設が開発したDエッジ鉄筋継手工法を、走行車線側と追越車線側の床版接合(縦目地)はポストテンション方式によるPC接合を採用している。


横目地はDエッジ鉄筋継手工法を採用
橋梁下には河川構台を構築して資機材搬入と作業ヤードとして活用。足場は「クイックデッキ」と「クイックデッキライト」を採用

 同工事では昼夜連続車線規制延長が約4kmと長いことも特徴である。名古屋側には土岐トンネルと多治見トンネルが連続し、東京側は土岐JCTがあるためだ。「(同社)管内ではリニューアル工事を多く行っていることもあり、交通規制材へ衝突する事故が増加傾向にある」(NEXCO中日本)。本工事でも交通事故防止対策として、車線規制を告知する立て看板を多めに設置することにより注意喚起を行うとともに、JCT部には大型の仮設LED標識、上り線が1車線規制となる箇所の手前には、路面点滅誘導灯「ミチテラ」(大林道路)を設置して視線誘導などを図っている。


規制概要と交通事故対策(NEXCO中日本提供)

車線規制手前に設置された路面点滅誘導灯「ミチテラ」

■NEXCO中日本・工事規制箇所への衝突事故事例動画
https://www.youtube.com/watch?v=UtwRB1P79v0


現場公開には名古屋のテレビ局も複数社参加/現場説明を行った多治見保全・サービスセンターの香川直輝副所長

 同橋床版取替工事は、中央道・小牧東IC~中津川IC間と東海環状道・豊田松平IC~可児御嵩IC間を管理する多治見保全・サービスセンター管内での初のリニューアル工事となっている。同管内では、2024年度に多治見IC~土岐JCT間に架かる北市場高架橋(156m)と欠梁橋(上り線79m/下り線89m)の上り線、2025年度には両橋の下り線の床版取替工事を、深沢橋と同様に半断面施工で実施する予定だ。両橋の施工は大成建設。

 深沢橋床版取替工事の元請は、IHIインフラ建設。一次下請けは、野田クレーン(床版取替工)、カイセイ(PCほかコンクリート工)、有村工業(鋼桁補強工)、磯部塗装(塗膜剥離工)、鉞組(足場工)、オトワコーエイ(河川構台杭打工)。

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