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新御堂筋の既設橋脚(新淀川大橋)に極めて接近する位置で施工

阪神高速 淀川左岸線(2期)豊崎IC 豊崎入路淀川渡河部において特殊型枠・支保工ユニットを用いて橋脚梁部のコンクリートを打設

公開日:2023.05.30

 阪神高速道路は、2025年大阪・関西万博に向け建設中の淀川左岸線(2期)豊崎ICのうち豊崎入路淀川渡河部に位置する、2径間連続鋼床版箱桁橋のP1~P3の橋脚工の施工を完了した。同橋脚は張り出し部が鋼管矢板の外側に伸びる構造であり、隣接する新御堂筋の既設橋脚(新淀川大橋)に極めて接近する位置で施工する必要があり、通常の支保工は設置できない状況にあった。また、施工ヤードも台船上に限られていた。さらに河川管理施設等構造令により、河川内橋脚のH.W.Lより下の水平面の形状は円弧形状にしなければならない必要があった。そのため、梁部は特殊な型枠・支保工ユニットを採用している。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)


橋脚施工中の状況(井手迫瑞樹撮影)

コンクリートは、低発熱コンクリート(30-12-20L)を採用
 梁部もH.W.L.までは梁下がR形状(円弧状)

橋脚の設計上の特長
 橋脚はP1が柱橋軸方向3.5m、柱直角方向4.5m、柱髙さ14m、梁橋軸方向3.5m、梁直角方向10.1m、梁高4m、P2が柱橋軸方向4.5m、柱直角方向8m、柱髙さ14.3m、梁橋軸方向4.5m、梁直角方向13.4m、梁高4m、P3が柱橋軸方向4.5m、柱直角方向7.5m、柱髙さ14.8m、梁橋軸方向4.5m、梁直角方向11.7m、梁高5mという構造である。形状は柱が上流側、下流側に円形を含んだ小判型であり、梁部もH.W.L.までは梁下がR形状(円弧状)である。構造の特長としては、阪神高速道路大阪建設部 坂井事業調整担当部長によると、梁の張り出し部が鋼管矢板の外側に大きく伸びる形状となっている点であるとのことだ。


梁の張り出し部が鋼管矢板の外側に大きく伸びる形状(阪神高速道路提供、以下注釈なきは同)

 橋脚の主筋はD51とした。想定していたD38では過密配筋となるためである。主筋はねじ節鉄筋と機械式継手を主体に採用した。D51が主筋であるため、圧接継手は施工性、充填性も含めて不適確と判断したもの。また、圧接は河川上での施工である本現場では風及び塩分の影響を受けるため、品質上のリスクも考慮して不採用とした。


例えばP2橋脚配筋図

 コンクリートは、低発熱コンクリート(30-12-20L)を採用した。当初採用予定だった普通コンクリートにて温度応力解析を行った結果、ひび割れ対策が必要になったためである。低発熱コンクリートは、水和発熱量が小さく長期強度発現性を有するビーライト(C2S)の比率を増加させたセメントを使用しており、マスコンの温度ひび割れを低減させる効果をもつ。

鋼管矢板の内・外側に取付けたブラケットの上に梁構築用の支保工を設置
 外側ブラケットの下方が水中に沈む条件となり、取付時に水中溶接

足場・支保工の設計・構造
 橋脚を施工するヤードは全て鋼管矢板で覆い、水の影響を受けないようにしている。橋脚の柱部分を建てるための足場は、頂版上から立ち上げていった。足場にはくさび型の組立足場(NDシステム)を採用し、柱部全体を覆う形で組み立て、打設した(内容は後述)。


NDシステムを採用して配筋し、打設


柱部の足場① 橋脚を施工するヤードは全て鋼管矢板で覆い、水の影響を受けないようにしている

柱部鋼製型枠ユニットの運搬と設置状況

 梁部の支保工は複雑である。通常は柱部を製作した後、周囲を覆う鋼管矢板を引き抜き本体柱に張出しブラケットを設けて、梁の支保工や足場を設置していく。しかし、今回は次工程の上部工架設を最優先で行う必要があったため、鋼管矢板の引抜きを後回しにして梁コンクリートの打設を最速で行う施工順序とした。


梁部の型枠支保工概要図


梁下の支保工の架設前状況と設置状況

 本施工では残置した鋼管矢板を有効に活用するため、鋼管矢板の内側と外側にブラケットを溶接にて取付け、その上に梁構築のための支保工を立ち上げる構造を採用した。なお、鋼管矢板の天端からブラケット支持下端部まで中詰めコンクリートを打設し、鋼管矢板の剛性を向上させ座屈防止対策とした。ただし、コンクリートを充填することにより鋼管矢板が撤去時に切断しにくくならないよう、1m毎にコンパネで縁切りする処置に加え、切断位置4箇所にアングル材(コンクリート充填部全体の高さ=4m部分に60×60mmの鋼材)を設置し、撤去時には同箇所をガス切断するよう工夫した。


鋼管内へのコンクリート充填作業/アングル材が設置されていることが分かる/充填に使った内吊型枠

充填完了状況



外側ブラケットの架設状況

水位によっては、ブラケット斜材の下部が水没してしまう(井手迫瑞樹撮影)

内側ブラケット設置状況

内外でブラケットの位置が違う

 内外のブラケットは天端高さが違う(内の方が外より1.3m低い)。そのため、内側ブラケットの上にキリンジャッキと支柱を配置することでレベリングした上で仮設桁(横引きH鋼材)を設置した。その上に木製足場板を敷き並べ作業ステージをつくり、3S支保工(ミニジャッキ)の土台とした。また、構造計算の結果、ブラケットが大型化したため、外側ブラケットの下方が水中に沈む条件となり、取付時に水中溶接を必要とするなど難易度の高い施工となっている。なお、大型化したブラケットは陸上で大組みできる構造(ユニット化)として、まとめて吊り込み設置することで、工程短縮に貢献した。


3S支保工

 ブラケット及び支保工の精度に大きく貢献しているのは鋼管矢板の鉛直精度(リンク参照)と仮設桁と骨組みの間に仕込んである3S支保工(ミニジャッキ)だ。鋼管矢板の天端の高さと傾斜を確認した結果、所定の管理基準値に収まっていたことでブラケットを直接取りつけても足場のレベルを確保することができた。さらに微妙なずれをミニジャッキで微調整することでより精度の良い型枠配置、コンクリート打設管理を行うことができた。

梁底部の型枠は、「宮大工レベル」精度を要求
 型枠・支保工のユニット化により、設置工を10日程度削減

 梁底部の型枠については、R形状に追従するため「宮大工レベル」(坂井氏)の精度を要求すべく特別なユニット型枠を採用した。型枠は合板を用いているが、R形状およびハンチ形状を確保しつつ、コンクリート打設時の荷重に耐えられる強度にするため木製の骨組み材を内包した構造(クシ型枠構造)とした。


型枠支保工の構造(再掲)/複雑構造箇所は3D化した

③梁底形状(複雑R形状)/側面形状

台船運搬されたユニット型枠

梁下クシ型枠設置状況①

梁下クシ型枠設置状況②

梁部側面型枠設置状況

 梁底の骨組と型枠をそれぞれユニット化しているのは、「支保工のレベリングや、ハンチ形状の精度がとても重要になるため」(坂井氏)である。型枠をユニット化したことで、工場にてあらかじめ形状精度を確認することができ、現地での測量作業は、型枠の設置始点とセンターラインの墨出しのみで対応が可能となった。その結果、ユニット化しない場合と比べ、形状精度や設置精度の確保に加え、工程短縮にもつながった。なお、梁底部の型枠は、設置時および脱型時の作業性を考慮し、複数のブロックに分けて現場搬入した(P1,P2 :18ブロック、P3 :12ブロック)。


工期短縮効果

 梁底部の型枠設置後は鉄筋組立作業を行い、その後側面型枠の組立作業を行った。側面型枠は打設時の側圧に対応できるよう、角鋼管(□50×100×2.3t)を外面の縦横に配置し強固な構造とした。また、台船上で大組みできる構造(ユニット化)として、まとめて吊り込み設置することで、工程短縮に貢献した。


梁部の鉄筋配置状況①(左写真上図①、中写真上図②、右写真上図③に対応)

梁部の鉄筋配置状況②(下2枚のみ井手迫瑞樹撮影)

 型枠・支保工をユニット化したことにより、設置工期も「10日程度大きく削減できた」(下図)。さらに安定した足場での大組作業も可能となり、安全性も大きく向上している。

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