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既設桁・新設桁とも約33m横取り

首都高 高速1号大師橋の架替え準備完了状況を現場公開

公開日:2023.05.18

 首都高速道路は16日、高速1号羽田線の多摩川渡河部に架かる大師橋の現場をマスコミ公開した。同橋は27日から2週間かけて、多摩川渡河部の3径間約300m、鋼重約4,000tを横取りする形で架け替えるが、今回の公開はその架替え準備が整った状況にある橋桁の上を公開したもの。既に橋面上は一部を除いて、設備工および舗装基層(50mm厚)まで完了しており、今後は既設桁を約33m横にスライドさせ、新設桁を現在既設桁がある位置まで同距離横取りスライドさせて架け替えるもの。現場を取材した。(井手迫瑞樹)


桁の横取りイメージ(首都高速道路㈱、撮影:㈱共映、提供資料より作成、以下注釈無きは同)

8万台の交通量、大混率は15%、1,200箇所以上の疲労亀裂が発生
 下部工も全面的に建替え、河川部は柱式から門型ラーメン橋脚へ 

 既設橋は1968年に供用した3径間連続鋼床版箱桁橋である。同橋は多摩川の河積阻害率に配慮し、橋脚の間隔が長く、軽量化したことにより、橋がたわみやすい構造となっている。さらに交通量は8万台、大型車混入率は15%と1万台を超える大型車が走っていることから、橋梁全体に1,200箇所以上の疲労亀裂が生じているおり、今回のリニューアル工事では鋼床版リブ形式を変更するなど疲労に強い橋梁に架け替える。架け替えに際しては、幅員構成を16.5mから18.2mと両側に0.85mずつ拡幅した。桁重が既設より大きく上回るため、下部工も河川部においては柱式橋脚を門型橋脚、陸上部においては円柱型橋脚を矩形型橋脚に建て替えている。


工事着手前の高速大師橋


疲労亀裂は1,200箇所以上で生じている/橋梁上部工および下部工概要図

岸壁での地組時の桁形状(左:川崎側、右:東京側)

 16日現在では、新設上部工の地組、既設桁撤去の準備工、横取り設備の構築、下部工の一部が完了した状況であった。下部工は東京側の陸上部下部工について、現行φ3mの円柱式T型RC橋脚に対し、新設桁では橋軸方向3m×橋軸直角方向6mの矩形断面のT型RC橋脚に建て替えている。さらに多摩川渡河部の3基の橋脚については、柱式橋脚を門型橋脚に架け替えるが、新設橋は橋長は292mの鋼3径間連続鋼床版箱桁ラーメン橋であり、桁から梁が伸びる形で門型橋脚と一体化する構造であるため、現状では門型橋脚の両側の柱が立っている状態となっている。

2週間全面通行止めして架替える
 既設桁は6時間、新設桁は12時間かけて横にスライド

 桁の架替え工事は5月27日5時~6月10日5時までの間2週間全面通行止めを行い、その期間中に施工する。通行止めを最小限にするため、①スライドによる一括架替え、②予め橋面上の施工を可能な限り進めておく、③雨天でも工事が進められるような環境を整備し、確実に工程管理できる体制を整えている。


雨天でも工事が進められるような環境を整備
(左:門型橋脚の梁と柱溶接時の施工イメージ/右:舗装施工時に雨が降ったときに備えた屋根)(右写真は井手迫瑞樹撮影)

 架け替え施工はまず、約6時間かけて既設の橋桁を所定の位置まで約33mスライドさせて撤去する。さらに新設の桁を約12時間かけてスライドさせる。新設桁は若干斜めにスライドさせるため、東京側に3m程度短い形で桁を地組しており、その隙間を利用して安全に施工する。また、桁のスライドは既設、新設とも施工しやすくするため、ステンレス板やテフロン板を用いて、摩擦係数を少なくして滑りやすくし、スムーズな施工を可能とした。


横取り設備概要図


横取り設備(左:既設桁/右:新設桁)(井手迫瑞樹撮影)

門型橋脚の梁と柱の円形の仕口は全断面溶接
 1箇所につき溶接距離は2km、4か所で8kmを24時間体制で施工

 新設桁のスライド後は、P7側の3mの調整桁を架設し、550mmジャッキダウンしてP5、P6橋脚の門型橋脚柱仕口を合わせ現場全断面溶接接合を行う。P5、P6の柱は5.5mの円形状となっている。これを24時間体制で2日間連続、常時8人体制で溶接する。1個所あたりの溶接距離は2km、全体では約8kmに達する(溶接幅6mm換算)。施工品質を確保しつつ、施工を効率化するため、円形断面を4分割する形で施工していく方針だ。またP4橋脚上の桁支持については、新設したP4橋脚柱に事前に仮設横梁を設置しており、全面通行止め時に隣接橋を仮受けするとともに、新設桁を仮設アウトリガーと仮支承で受けて供用する。供用後、既設P4橋脚を撤去した後に新設P4横梁を完全な形で建設、その際は本梁仕口はボルト接合する。


φ5.5mの円状の仕口(井手迫瑞樹撮影)

 溶接終了後は24時間自然冷却で養生し、溶接の不具合がないか調査した後に、横取時に荷重を支えていたベントを開放し、桁をP7側は本設支承、P4側は先述した通り仮設支承に預ける。その後は接続部のコンクリート壁高欄の施工、伸縮装置の設置、接続部のグースアスファルト基層(50mm)、全体の表層舗装の敷設などを行った後、6月10日5時に交通開放する。舗装のグースアスファルト基層は改質グースを用いている。


一部を除き基層の改質グースを予め打設している/鋼製壁高欄や照明柱なども予め立て込んでいる(井手迫瑞樹撮影)

桁全体をステンレス製の常設足場で覆い維持管理性を高める
 

 桁の塗装は変性エポキシ樹脂系の塗装であり、ふっ素樹脂塗装などのトップコートは行わない。これは、張出床版から桁全体を覆う形で常設足場(恒久足場)を設けるためだ。常設足場は日鉄エンジニアリングのステンレス製常設足場『NSカバープレート』を採用する。同足場を採用することで維持管理性を高め、さらに汽水域であり飛来塩分も多い環境から桁本体を守ることで塗装のグレードを落としても防食性能を向上させている。


左:東京側から川崎側を望む/右:川崎側から東京側を望む(井手迫瑞樹撮影)

 基本設計(上下部構造検討)は長大。元請は大成・東洋・IHI・横河JV。主要下請は日本通運(上部工架設)、島川工業(溶接)、オックスジャッキ(ジャッキ)、大成ロテック(舗装)など。

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