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橋梁形式は合成鈑桁+トラス+非合成鈑桁。1橋で3橋分の対応を求められる

NEXCO中日本 中央道深沢橋床版取替工事 移動機構に新設橋の技術を用いた半断面施工用床版取替機を採用

公開日:2023.02.01

場所打ち床版は全床版取替面積の9.2%にあたる280.2㎡

場所打ち部
 両端部および中間支点上の床版、目地部、壁高欄の一部、伸縮装置設置部が場所打ちとなっている。床版コンクリートは早強セメントで膨張材(太平洋ハイパーエクスパン)を添加し、強度50N/mm2、スランプ12cmとなっている。壁高欄には、膨張剤を添加した強度30N/mm2、スランプ12cmのコンクリートを使用した。


場所打ち部の施工

 上下線あわせた全床版取替面積3035.7㎡のうち、場所打ち床版(伸縮装置設置部含む)は280.2㎡(9.2%)である。このうち、下り線が約160㎡、上り線が約120㎡となっているが、プレキャストPC床版の枚数では下り線63枚、上り線64枚と橋長が約6m短いにもかかわらず上り線のほうが1枚多くなっている。これは、現場施工部を縮小するために、スタッドジベルやPC鋼材の配置を検討した結果だ。


下り線追越車線側床版取替完成

防水工と舗装工
 床版防水は高性能床版防水工法(グレードⅡ)を採用し、HQハイブレンAU工法で施工した。舗装は基層がFB13、表層は高機能舗装Ⅰ型となっている。防水工、舗装工ともに約750㎡を各1日で施工している(本工事とは別発注。施工は大有建設)。



防水工と舗装工

仮設防護柵設置スペースはわずか350mm幅
 細幅の鋼製防護柵を新たに設計して設置

仮設防護柵の設置
 2022年5月~8月上旬の下り線走行車線側施工後、8月下旬からの同追越車線側施工まではお盆を含む夏季混雑期となるため、上下線4車線を確保する一時開放を行っている。この時、半断面施工で床版を中央で切断しており走行車線と追越車線が分離構造となっていたことから、本設と同程度の性能を持つ仮設防護柵を設置する必要があった。しかし、路肩幅(0.5m+1.5m)が狭いうえに走行車線側施工時に行う拡幅も0.275mが限界だった。これで、1車線3.25m+路肩0.5mを確保すると、仮設防護柵を設置できるスペースは350mm幅しかなく、600~700mm幅の一般的な仮設防護柵では対応できず、細幅の鋼製防護柵を新たに設計することが求められた。


仮設防護柵の組立と一時開放前の設置状況

 床版と防護柵の構造の見直しから行って、既設床版と新設床版の双方に支柱をボルト締めする孔を設けて支柱を固定する構造とすることで細幅でも耐久性を満足する防護柵をつくり、設置を行った。

資機材搬入と作業ヤード確保のために河川構台を構築
 足場は「クイックデッキ」と「クイックデッキライト」を採用

作業構台と足場
 本工事では架橋地が深沢川を跨いでおり、橋梁外からの資機材搬入が困難という課題もあった。そこで、P1~P2中間付近の河川上に構台を設置して資機材の荷揚げやコンクリート打設時などの作業ヤードとして活用して、資機材搬入のための本線規制を可能な限り回避している。
 河川構台は橋軸直角方向42m×橋軸方向13.5mで、IHIインフラ建設が所有している汎用型組立橋梁のトライアス(桁)を活用し、その上に覆工板を敷設した。支柱杭(H-400)はL2地震動に耐えられる約4mの根入れを行ったが、地盤が硬岩であったことからダウンザホールハンマーでの打設に苦労したという。


河川構台一般図/河川構台の施工

完成した河川構台と同所からの荷揚げ

 河川構台に加えて、P1ののり面にはクサビ式支保工で作業構台を構築している。鋼桁補強と耐震補強を同時に行うためと足場設置のための作業ヤードとするためだ。


P1側の作業構台

 足場は、トラス橋部(P1~P2)に「クイックデッキ」(2,250㎡)を、合成鈑桁部(A1~P1)と非合成鈑桁部(P2~A2)に「クイックデッキライト」(1,450㎡)を採用している。鋼桁補強や耐震補強、支承取替えで大型かつ重量のある部材搬入と足場内作業を考えると、最大吊チェーンピッチが5m×5mと広く、最大積載荷重が350kg/㎡であるクイックデッキが最適だったという。クイックデッキライト(最大吊チェーンピッチ2.5m×2.5m、最大積載荷重200kg/㎡)についても、鈑桁部での作業内容を考慮して選択している。


足場全体写真/トラス橋部の「クイックデッキ」組立

48基の支承取替えを実施
 塗替塗装面積は約7,000㎡ 塗膜剥離と素地調整はブラスト工法を採用

支承取替えと塗替塗装など
 支承は、現在の鋼製支承を鈑桁橋部は高面圧コンパクトゴム支承(DRB・住友理工製)に、トラス橋部は超高減衰ゴム支承(HDR-S・住友理工製)に、合計48基を取替える。耐震補強では前述の桁補強とともに、トラス橋部には橋軸方向に対して落橋防止機能付き粘性ダンパー(PWD1000、PWD2000・横河ブリッジ製)、橋軸直角方向に対しては橋体の転倒防止を目的としてせん断パネル型ダンパー(1000-H450・高田機工製)を設置し、各橋梁に落橋防止システムも設置する。
 塗替塗装は上下線合計で約7,000㎡を実施し、鉛の含有が確認されていることから、金属系研削材を再利用するブラスト工法で既設塗膜剥離および素地調整を行っていく。

安全対策
 前述の仮設防護柵の設置や河川構台の構築に加えて、施工期間中は床版取替機や橋梁部、河川構台に現場ライブカメラを8台設置して、不慮の事故などに備えた。NEXCO中日本では利用者への影響を最小化するために情報提供を充実させるとともに、車線規制を告知する立て看板をJCT部などに多めに設置することにより注意喚起を行っている。また、上り線が1車線規制となる箇所の手前には、路面点滅誘導灯「ミチテラ」(大林道路)を設置して、視線誘導などの対策を実施した。


JCT部などに立て看板を多めに設置/点滅誘導灯「ミチテラ」を設置

 元請は、IHIインフラ建設。一次下請けは、野田クレーン(床版取替工)、カイセイ(PCほかコンクリート工)、有村工業(鋼桁補強工)、磯部塗装(塗膜剥離工)、鉞組(足場工)、オトワコーエイ(河川構台杭打工)。

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