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鋼製橋脚板厚は最大100mm 基礎はアーバンリング工法を採用

阪高神戸線湊川 鋼床版疲労と耐震対策のため橋脚7基を新設

公開日:2022.10.27

橋脚根元から2mの高さまでは貧配合のコンクリートを打設
 新設P3梁長は27.1mに達する 多軸移動台車で運び相吊りで施工

 橋脚の架設
 新設P1、P2は上下線とも鋼製橋脚である。柱部は360tオールテレーンクレーンをヤード内に配置し、1ブロック(h=約4m)ずつ施工しては、仮添接したうえで後日溶接した。梁部については65t吊クレーンを柱の両側に配置した上で架設し、相吊り架設している。なお、鋼製橋脚と基礎との間はアンカーフレームを用いて接合するが、アンカーフレームと橋脚との接合部は通常のコンクリート、橋脚根元から2mの高さまでは貧配合のコンクリートを打設する。これは交通車両の衝突による損傷を生じにくくするため施工している。


下り線P1アンカーフレーム架設状況

上り線P1橋脚架設状況

下り線P2のアンカーフレーム架設状況

上り線P2施工状況

 新設P3、P4、P6は柱部RC、梁部鋼の複合構造である。構造は例えばP3はケーソン天端から6.4m部分がRC構造、その上部から3.5mを鋼殻との複合構造としている。複合構造部は鉄筋を配置した上で中流動コンクリートを打設して一体化している。梁部は鋼構造である。高さや梁長の差はあれ、P4、P6も同構造である。

P3橋脚構造一般図/P3橋脚架設条件図


P3橋脚RC部の施工状況

P3橋脚梁部の架設状況①

P3橋脚梁部の架設状況②

 新設P3は一本柱の橋脚の中でも上下線の桁間の間隔が大きく、梁長は27.1mに達する。そのため柱部の複合構造部(高さ3.5m)と梁部の根元部分(高さ2m×長さ6.5m)は4ブロックに分けてヤード内で溶接して一体化し、7月下旬に360tオールテレーンクレーン1台を用いて架設した。さらに8月20日深夜から21日未明にかけては、新設P3梁部の両側の張出し部を、国道2号線の一部を夜間全面通行止めして施工した。梁の高さは2m、長さは上り線側が10.15m(25.2t)、下り線側が10.4m(25.4t)、幅はいずれも2.5mとなっている。両側の梁共に多軸移動台車(上組、4軸32輪、積載能力165t)で施工する箇所近傍まで運んだ。上に供用線の桁があり、吊り点を中心に取れないことから上下線とも両側に65t吊ラフタークレーンを2台ずつ配置し、相吊り施工した。施工にあたっては、吊り点を確保する観点から両側の梁とも端部に仮設梁を付けていた。

P3橋脚梁部の施工ステップ



端部には仮設梁を設けた(井手迫瑞樹撮影)


P3の橋脚梁架設状況(自走多軸台車で運搬)(井手迫瑞樹撮影)

 施工は夜11時ごろから本格的に開始し、1時半ごろには所定の高さまで吊り上げ、3時ごろには仮留めが完了した。その後、仮設梁を溶断し、午前5時に交通開放した。仮留め箇所は、翌日に全断面溶接して完成させた。


P3橋脚梁部架設状況(相吊用クレーンの配置と梁の吊上げ状況)(井手迫瑞樹撮影)

P3橋脚梁部架設状況(梁の吊上げ状況)(井手迫瑞樹撮影)

P3橋脚梁部架設状況(梁の吊上げ状況と慎重に仕口合わせを行っている状況)(井手迫瑞樹撮影)

P3橋脚梁部架設状況(梁の架設がほぼ完了した状況/仮設梁の溶断)(井手迫瑞樹撮影)

P3橋脚梁部架設状況(溶断が完了し、架設がほぼ完了した状況)

新設板厚は最大100mmに達する
 溶接の仕方を工夫してひずみの発生を阻止

板厚100mmの溶接
 既設P1、P2橋脚は基礎も躯体もL2地震照査の結果、NGとなっており、新設P1、P2は既設橋脚と同規模のコンパクトな橋脚でありながら常時の輪荷重に加えて、地震時の応力も負担する必要がある。鋼製橋脚のためL2地震に対しては塑性を許容するのが一般的な設計であるが、今回は地震時の応力を新設橋脚に主体的に負担させるために弾性設計とした。そのため板厚を厚くすることで対応したもの。溶接厚に対応するため、試験体を製作して実際に溶接を試験施工した上で、手法を確認した上で現場に臨んだ。
 施工上の工夫としては、断面が円状であり、通常は全周を片押しで溶接する。しかし今回は板厚の影響で入熱量に偏りが生じてひずみが起きてしまう恐れがある。そのため溶接機械を2台使い、互いの溶接起点を互いの終点側から始めることでひずみの発生を阻止した。溶接のパス数は1箇所につき最大で147パスに及んだ。検査もAUT(超音波探傷試験)を用いて、内外両側から溶接品質を確認した。


事前の現場溶接試験状況


実際の溶接施工状況写真


実際の上り線P1橋脚の溶接状況

実に147パスに達した

 現在は新設P1上りとP3の架設を完了しており、P1およびP2下りは基礎工およびアンカーフレーム工までが完了している。P2上りは基礎工までが完了、P4橋脚はRC柱部分まで施工が進んでいる。P6は基礎工を施工中だ。基礎やアンカーフレーム工、RC橋脚柱の施工を順次進めると共に鋼部材の架設を今年11月と来年1月に再び国道2号を夜間全面通行止めした上で施工する。また、その後、BP-B支承の設置や支承部近傍の既設桁内部補強を行っていく。工期は2023年7月末。


P4橋脚の施工状況

P6橋脚の施工状況

 設計はエイト日本技術開発。橋脚工の施工元請はエム・エム ブリッジ・森組JV。主な一次下請は加藤建設(アーバンリング施工)、山下鉄筋(鉄筋工)、渡辺工務店(型枠工)、高田機工(鋼部材製作)、植田建設工業(架設)、澤田運輸建設(クレーン)、木村工業(溶接)、日本X線検査(溶接管理)、上組(自走移動台車)。

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