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機械、工法、施工体制を工夫することで施工日数を短縮

NEXCO東日本長野工事 一本松TNでインバート設置進める

公開日:2022.10.11

2区間を同時施工することで施工効率を増す
 受台を先行して施工する

施工体制・工程上の工夫
 要素技術だけでなく、施工体制そのものも工夫した。本工事の施工延長は160mだが、実際は158mの離隔区間を挟んで97mと63mの施工範囲に分かれている。NEXCOで示した標準工程は1班(昼夜合わせると2班)で順次施工していくものだったが、西松建設は両区間を同時施工(同4班体制)することにした。工事車両を横出しする必要があり、2工区同時施工ではその煩雑さが増すが、離隔区間を利用し、両工区とも前後に出口を設置することで同時施工を可能にした。


2工区同時施工を選択した

 標準案ではインバート設置の際の半断面施工を片方1ブロック10.5mずつとしたが、施工条件として、掘削延長を最大30mまで可能とする条件とした。スパンが長ければ長いほど工区の数を減らせるため、施工回数や車線規制の切り替え回数を減らすことが出来る。
 但し、途中に大断面の非常駐車帯(32m)と、内空変位(約5mmほど生じている(1年間に1~2mmほど増えている))が卓越しているスパン(円形水路が閉塞しているのもこのスパン)があり、その2つに関しては片方の半断面を施工したらすぐにもう片方の半断面も施工し、インバートの全面をすぐにつなげることを求めた。内空変位が卓越しているスパンは補強用ロックボルトも設置している。また、「相手は不良地山なので、計測などを行いながら慎重に施工している」(NEXCO東日本)。


天井へケーブルを移設し、なおかつ施工中に損傷させないよう赤い警告灯を付けている/かなりの損傷が出ている(井手迫瑞樹撮影)

施工時の変位に配慮して、多くの個所に測定機器を付けていた(井手迫瑞樹撮影)

ロックボルトの打設状況

ロックボルト打設完了箇所(井手迫瑞樹撮影)

 工事は、まず電気通信ケーブルを損傷させないよう上部に移設し、監視員通路・監査廊を撤去する。さらに中央排水工を切り回し、土留め杭を設置した上で、受台の施工を始める。受台は、ブロック割した延長・車線ごとに先行して施工することを求めた。その際は沈下防止や既設の覆工への影響を抑えるため、目地を跨いで左右に2m、合計4mの部分を特に先に施工するように求めた。受台を先行して施工することで、受台施工→インバート設置用空間掘削→インバートコンクリート打設を繰り返すことなく、各工程ごとに一括して施工できるため施工効率を大きく向上させることが出来た。


施工フロー


(左)支障物移転/(左中)ケーブル移設/(右中、右)土留め杭施工

(左)仮設防護柵の設置/(中)仮舗装/(右)受台部の掘削状況

トンネル中央部の仮設防護柵設置状況

ポンプ車自体はトンネル坑内での反転ができない
 セルフローダーに進行方向と逆向きに車載

土砂搬出の工夫
 重機先端のアタッチメントだけ変えられる(掘削)機械を2施工区間にそれぞれ1台ずつ、合計2台を同時に稼働させる。油圧アタッチメントの交換に、約1時間要するところを、数十秒にて交換が可能となるため、施工日数を短縮できる。

コンクリートの打設
 生コンプラントは「現場から20分の比較的近い箇所にあり、品質確保の面から見れば恵まれているといえる」(西松建設)。現場は坑口から800m入った個所にある。受台コンクリートの打設はポンプ車を使わずに生コン車を横付けしてトラックミキサーからコンクリートを直に卸して打設している。インバートの打設はポンプ車を用いて打設するが、圧送距離は最大でも40m程度である。ポンプ車自体はトンネル坑内での反転ができないためセルフローダーに進行方向と逆向きに車載し、搬入・搬出を行う必要がある。


(左)受台型枠の設置状況/(中)受台部のコンクリート打設状況/(右)同打設完了状況

 インバート打設時の型枠は妻部だけに配置する。上部のRは、高さ(確認用の)鉄筋だけを目印として配置し、あとは人手で均していく。「現場打なので供用範囲内での掘削に抑えておけば、コンクリートで岩着させることができる。インバートに引張力はかからないため、圧縮側に持てばいい。但し力学的に引張力も生じる坑口付近や力学的機能を付与させる区間は上下に鉄筋を配置する」(NEXCO東日本)。


インバートのコンクリート打設状況

 工期短縮を考えればインバートコンクリートのプレキャスト化はできないのか。「魅力的であるし検討に値するが、実現はなかなか難しい」(NEXCO東日本)。プレキャスト化を図るためには掘削精度を高めねばならない。「インバートは逆アーチ形状のため、プレキャスト形状に合わせた地山掘削は難しく、地山掘削形状に合わせて10cm程度の調整しろがあるプレキャスト化ができれば話は変わってくるが」(同)という状況である。

工事の際の安全面配慮
 一般車の突入を防止するため進入車両強制停止装置(商品名「とまるぞー」)を工事区間の前方の規制区間内に置いている。工事区間は、先述のように土留め杭の上に防護柵を全面に配置する。また、工事区間より前方には仮設防護柵を設置する計画であり、電光式のライトをつけたカラーコーンを用いるなど安全面には大きく配慮している。

元請7人、作業員13~14人の施工体制

施工体制
 元請7人、昼班、夜班とも作業員13~14人の施工体制である。その他、交通規制員や外周道路誘導員など合わせて10人を配置している。

 工期は2020年11月20日から2024年7月1日まで。現在は追越車線側の一部工事が完了し、走行車線側の一部の受台設置工を行っている状況だ。

 設計は日本シビックコンサルタント(株)。元請は西松建設。主要一次下請はトンネル補強工:太洋基礎工業㈱、土留杭工:㈱小宮山土木、ロックボルト工:㈱ケー・エフ・シー、支障物移設工(電気・通信):㈱TOSYS、支障物移設工(給水管):ライフライン長野㈱、舗装切断、ウォールソー工:第一カッター興業㈱、舗装工:前田道路㈱、計測工:㈱アジア共同設計エンジニアリング、規制工:㈱シムックス、保安工:長野県交通警備㈱。

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