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1/1,000の鉛直精度での鋼管杭打設 コンクリート圧送距離は最長420m

首都高速道路 高速大師橋更新事業 下部工と橋桁移動設備の構築が完了

公開日:2022.03.28

橋桁移動設備は6基構築
 架設桁は最大で長さ約80mに及ぶ

橋桁移動設備
 新設桁架設と既設桁撤去のための橋桁移動設備は6基構築している。P4の東京(左岸)側に2基、P5とP6の両側にそれぞれ2基だ。


橋桁移動設備組立工事概要と配置図

 基礎(ベント)杭はφ800mm(荷重の小さい箇所ではφ700mmまたはφ600mm)の鋼管杭を4本1セットとして新設の基礎と同じ深さまで打設した。施工はクレーン台船を用いて、上空制限のある既設橋の桁下では低空頭パイラーでWJを併用して圧入による打設を行っている。それ以外の上空制限のない箇所はバイブロハンマーで施工したが、支持層に到達すると振動が発生することから周辺の住宅に配慮して、電動式と距離減衰効果の高いハイパワーの油圧式を使い分けて施工した。周辺の住宅と最も近くなるP6の東京側の打設では、WJを併用して振動を抑える対応も行っている。


基礎杭の打設。上空制限のある桁下部(中央)と上空制限のない箇所(左)

 打設本数は各設備により異なるが、設備の長さが最長となるP6の川崎(右岸)側(B4ベント)では、上空制限のない箇所が上流側と下流側が各20本(5セット)、桁下が支持杭4本(1セット)+走行杭16本となった。
 打設後、4本の杭頭をジャケットで接続し、ジャケット上に横材を配置して桁受けを設置した。


桁受け設備設置完了

 次に、新設桁と既設桁を横取りするための架設桁の設置に移った。架設桁は、手持ちの機材では耐力不足のため新規に製作し、200tクレーン台船を使用して架設した。
 架設方法は、基本的に200tクレーン台船による単材架設を行ったが、既設橋の桁下(首都高の直下)はクレーン台船による架設ができないため、あらかじめ下流側で組立てた架設桁を上流側へ縦送りする工法と、台船に搭載し潮位差による一括架設工法を併用した。

台船架設(右)、ブロック架設(中央)、縦送り架設(右)と架設工法を使い分けた

 架設桁といっても、B4ベントでは長さ約80m、桁間隔約2m、鋼重約180tとなり、形状は単純化しているが「通常の少数主桁と変わらない」(同)ものとなった。


完成した橋桁移動設備(B5ベント)(撮影=*)

陸上部橋脚
 陸上部の新設橋脚(P7)はRC橋脚(T型柱)で、基礎は鋼管杭基礎を採用している。区道の切り回しや通行止めを行いながら施工ヤードを確保したうえで、仮設橋脚を設置して既設橋脚からの受け替えを行った。その後、既設橋脚を撤去し、新設橋脚を構築した。


仮設橋脚(左2枚)と新設橋脚(右2枚。撮影=*)

補強部材は人力で箱桁内に取り込む

既設橋横取りのための補強
 既設橋は横取りでの撤去や、P7仮橋脚での支持となることから、支点位置がベント上などに変わることになる。そのため、P7とベント上の支点部補強とP4側とP7側で座屈防止のための補強を実施している。具体的には、支点部ではベント上の箱桁内のウェブに補強材を、P7仮支点部はウェブ補強材とともに横梁を設置した。P4側とP7側の箱桁内は縦リブの補強とウェブの水平補剛材の補強、さらにP7側では下フランジの当て板補強を行った。


既設橋補強図

ベント支点部および縦リブ補強/P7仮橋脚支点部横梁補強/下フランジ縦リブ補強

 狭い箱桁内の補強となるので、部材は人力で取り込まなければならず、最大80kgになる部材を桁に開けたマンホールから電動ウインチで取り込み、桁内をローラーで移動させるのは大変だったという。

今後の施工
 2022年度(2022年4月)からは、下流側の橋桁移動設備(ベント)上での新設桁の組立てに着手する。まず、中央スパンのP5~P6径間の桁(132m、鋼重約1,900t)を地組立てしたIHI横浜事業所から6000t級台船で現場に運搬し、大潮時の潮の干満差を利用してベント上に載せる。次にP4~P5径間の桁(82m、鋼重約1,300t)を有明の鉄鋼埠頭から運び込み、同じくベント上に載せた後、大ブロックの接合を行う。その後、大ブロック上にトラベラークレーンを組立てP6~P7径間の桁(約74m)をトラベラークレーンで川崎側から順次架設していく。
 新設桁組立て完了後、2023年度に約2週間の通行止めの中で、既設桁を上流側に約30m横取りし、新設桁も約30mの横取りをして架設を行う。そして、既設橋梁との接続や橋面工等を実施し、交通開放する計画だ。その後、既設桁、橋桁移動設備、既設橋脚の撤去を行い、恒久足場を設置して工事完了となる。


今後の施工計画

 元請は、大成・東洋・IHI・横河JV。一次下請けは、寄神建設(上下部工)、川野建設、竹本基礎工事、第一カッター興業、タカミヤ、電材エンジニアリング(以上、下部工)、日本通運、ナプコ、島川工業(以上、上部工)ほか。基本設計(上下部構造検討)は、長大。

 首都高速道路では同事業について、専用WEBサイトと動画で積極的に情報発信を行っている。
 ■高速大師橋更新事業WEBサイト https://www.shutoko.jp/ss/daishibashi/
 ■YouTube動画(第4弾) https://www.youtube.com/watch?v=cMCcplqtL-M&t=6s

YouTube動画(第4弾)サムネイル

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