道路構造物ジャーナルNET

SCBR工法、駆動式ワイヤーソー、各種安全対策、長期間を考えた仮設橋脚......

NEXCO西日本 阪和道松島高架橋のRC中空床版桁取替初弾を施工

公開日:2022.03.22

既設橋脚を抱き込む形で仮設橋脚を配置 L2地震動に対応
 RoRo工法、スパイダ―パネルを採用 風速40m/sにも耐えられる防護工を設置

仮設橋脚などの設置
 さて、本橋は前掲の通り、既設桁を3分割する形で撤去・架設を行う。
3分割施工

 さらにその際は地覆を撤去し、路肩を縮小する形で運用するため、張り出し部に当初想定していない輪荷重がかかる。そのため、その荷重を下から支持するフェールセーフの仮設材も必要となる。さらに仮設材の設置期間は長期間に渡る予定である。そのため仮設橋脚や仮設梁については施工中におけるL2地震動に対する耐震性能の確保が課題となった。通常は、鋼製部材などで独立して支柱(仮設橋脚)を設置するが、本工事では既設RC橋脚に仮設橋脚を両側から抱き込む形で仮設橋脚単体ではなく既設RC橋脚と一体とした耐力にて耐震性能を確保できる構造にした。耐震性能上、必要な箇所については既設橋脚に補強を施すと共に、仮設橋脚基礎を増厚して仮設橋脚を安定させるように基礎を補強した上で施工した。

仮設橋脚の基礎補強および転倒防止構造

仮設構造物

 また、桁支間の中間部にもRoRo工法(パイプ支柱システム式支保工)を採用し、仮設支保工を配置した。これは既設桁を撤去する際(詳細は後述)、桁が脆弱なため中間部で切断しなければならず、その切断部近傍で未撤去の既設桁を支持する必要があるためだ。
 張り出し部の支持材についてもRoRo工法(パイプ支柱システム式支保工)を採用し、H形鋼材を配置して、輪荷重に対してフェールセーフ機能を確保している。また、中央部の施工に際し、横梁(後述)を受けるため、上下線の仮設橋脚を渡す形で仮設横梁を配置し、さらに撤去や間詰コンクリート施工時の足場(スパイダーパネルを採用)を支えることやフェールセーフ機能の張り出し支保工を設置するため延長方向に縦桁を配置している。


仮設橋脚施工前のフーチング補強状況


仮設橋脚の設置状況


RoRo支柱の設置状況

RoRoを用いた張り出し足場の設置状況

既設橋脚を抱き込む形で配置されている仮設橋脚(左写真は井手迫瑞樹撮影)

中間部のRoRo支柱(井手迫瑞樹撮影)

変位計(写真中の銀色と橙色の筒状の部材)(井手迫瑞樹撮影)

リアルタイムで変位を測定(井手迫瑞樹撮影)/変位計設置図
 作業ヤードとヤード外の境界には作業に伴う塵芥や騒音を防止・低減するために防護工が設置されているが、風速40m/sでも耐えられるような設計とし、期間中の工事中止に伴うロスが出ないようにしている。
 こうした作業を行う際、通常はクレーンを用いるが、架橋下の低く狭い空間の場合、既設構造物との接触事故など懸念されるため、今回はバックホウ(クレーン仕様)+既設の吊具を取り付けた専用アタッチメントにより仮設橋脚、支保工の組立てを行った。また、長尺部材(H鋼L=12m)は、既設構造物を利用した天井クレーン(2.8t吊)を設置して揚重・移動・回転を行った。

専用アタッチメントや天井クレーンを使用した/天井クレーンの設置状況と使用状況

支点部にはPCaPC横梁を配置 支承の数を劇的に減らす
 全体コストも10%減少 主桁の点検も容易に

構造
 新設桁はPCaPCT桁を採用した。SCBR工法を採用しているため、支点部にはPCaPC横梁を設置することで、支承の数を通常のPCT桁と比べて劇的に減らしている。

SCBR工法を採用した
 PCT桁は下部を球根型とする桁構造にした。「PCT桁の下に袴をはかせたような形状」(JV)とも言え、桁を倒れにくくすると共に、PC鋼材の配置が可能な構造とした。以前施工した福崎新高架橋は支間長が13m程度であったが、松島高架橋の支間長は17mと長く、(桁高は800~850mm)、したがって鋼材本数も多くなるため、こうした工夫を施した。

 端部は横梁を付けて、その下に沓を置く。同橋は2~3柱式の橋脚であるため、1柱に2基支承を置く。支承は通常のPCT桁の場合最大20基を要するが、これを4~6基に減らせることや、通常は橋脚部の横梁に現場打ちコンクリートによる施工が必要となるものをプレキャスト横梁を採用して現場での施工時間を短縮することですることで、全体コストを10%程度下げられる。
 T桁断面(開断面)を採用することで中空断面と比較して、点検時の不可視部が少なくなり、今後の主桁点検が容易になる。
 今回の中央部の施工は片側3本ずつ、合計6本分を配置するが、最終的には上下線15本ずつ30本のPCT桁に置き替える予定だ。

駆動式ワイヤーソー切断工法『ループドライブワイヤーソー』を採用
 新設桁は相吊り架設 桁の移動は運搬台車を使用

施工(撤去~横梁架設まで)
 既設桁の撤去前に、仮設橋脚上に設置した主版取替用の支保工で支え、撤去する桁の本設支承から借り受けする形にする。その上で、横梁を入れる脚頭部位置にその梁高の分、ワイヤーソーで切断して空間を作り、横梁の端部を受ける支承を設置する。なお、橋脚中間部の仮設横梁にも仮の支承を配置して横梁を支える構造をあらかじめ作っておき、その上で既設主桁の切断を始める。

 主桁の切断は、桁高の低い張出し部はコンクリートカッター、桁高の高い内側(切断深度800mm以上)は、ワイヤーソーを用いて施工した。ワイヤーソーについては、支保工で仮受けしている中央部(5m)は従来のものを用いているが、他の仮受けしていない箇所においては、駆動式ワイヤーソー切断工法『ループドライブワイヤーソー』を採用した。

ループドライブワイヤーソーの構造図

 ワイヤーソーを桁切断に用いたのは、主桁高さが最大850mmほどあり、コンクリートカッターでは切断不可能な断面であることと従来のワイヤーソー切断では約2m毎に切断装置と防護設備の移動と段取り替えが必要で切断時間のロスがあった。ループドライブワイヤーソーは、図のように主桁の上下にレールを設置して、軸方向に駆動して切断していく。同工法は、従来のワイヤーソーと異なり押し切り方式とレールによる移動を採用しており、施工速度、精度とも向上している。従来工法はプーリーによりワイヤーを引っ張って切断していたが、本工法は押し切りのためワイヤーのテンションも高く力を伝えやすい。密実部では1時間に1mほど、中空のボイド空間がある箇所では、10分で1.2mほどの速さで切断することが可能だ。本現場では「狭い空間において既設桁を確実に撤去し、新設桁を架設するため、規制のために用いている防護柵間際100mmまで確実に切断する必要がある」(JV)。その意味でも押し切りで施工精度を確保できるワイヤーソーは効果を期待できる。

防護柵間際100mmまで確実に切断する必要がある

 今回は湿式で施工している。切断に必要な水を上部から流していくが、その水処理ができるように上下とも防護カバーを付けている。また、下部は樋に水を集水できるような機構にしており、貯水タンクに排水していく。ただし3割ほどは切断した溝を伝って流失してしまうため、足場を養生シートで覆い、外部に水が漏れないようにしている。



実施工時のループドライブワイヤーソー

 橋軸方向の切断幅は500~800mm、橋軸直角方向の切断は径間長17mの半分の位置とした。60tクレーンの吊り能力で決めているもので、主桁の架設(詳細は後述)は、60tクレーン2台の相吊りで行うが、撤去は横梁を入れるために、まず支点部を撤去する。次いで、既設桁が脆くなっている可能性も鑑みて、1台ずつのクレーンで施工できる重量、寸法とした。同様にもう片側の撤去を行った後、横梁を架設する。


施工想定図(既設主桁の撤去、横梁の架設、主桁の相吊り架設)

実際のクレーンによる主桁撤去状況写真


実際の仮設横梁据付け状況写真/実際の新設桁運搬状況写真

実際の新設桁相吊り架設状況写真

 横梁(1本約8.7t)は本来、上下線が分離している構造であるが、次工程として上り線次いで下り線の桁の撤去・架設を行う際に、中央部の隙間(1000mm)を埋める形で運用するため、互いに片持ちの状況では上部の桁を支えるには不安定となる。そのため、横梁同士を鋼殻で繋ぎ、仮設の外ケーブルで緊張することで左右の横梁を一体化させた形で、撤去した支点部にクレーンで吊下ろして設置する。


仮に上下線を一体化した横梁とするため、鋼殻を中間に入れて外ケーブルで緊張する

 次いで新設桁の架設である。片側の既設桁を撤去したのちに、もう片側の既設桁に軌条鉄板を敷いて専用の運搬台車により新設桁(1主桁約18t)を運搬する。運搬台車を用いたのは今回のヤードは非常に幅が狭い(上下線合わせて7.3m幅)ためトレーラーが入れないことを補う策である。運ばれた新設桁は当該径間を挟む形で配置された60tクレーンにより相吊りして架設していく。片側の桁が架設された後は、軌条設備を新設桁の方に盛替え、既設桁を切断・撤去後、同様に新設桁を運搬し、相吊り架設する。クレーンの旋回は16.3°しかできず、ブーム角も最大で70°しか取れない難しい作業となる。そのため、前述した作業時規制を行うことで、不測の事態を最大限避けられるよう努めている。

 架設後は、間詰コンクリートや横桁を施工していく。標準間詰幅は150mmで型枠を設置して50N/mm2の高炉スラグ微粉末入り早強コンクリートを打設する。上り線(P6~P10)においては拡幅を行うため横桁が必要で、そこについても同様に打設する。
桁架設後間詰部を施工し終わった状況(井手迫瑞樹撮影)

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム