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はつりにWJを採用、断面修復材も低弾性材料に変更

名古屋高速道路公社 高速3号大高線北行をリフレッシュ

公開日:2021.11.29

 名古屋高速道路公社は、10月23日0時~10月31日23時にかけて高速3号大高線北行名古屋南JCT~高辻出口間の約12kmを全面通行止めして、RC床版において床版の補修、複合防水の設置、舗装の打ち替え、鋼床版では舗装打ち替えなどを主とするリフレッシュ工事を実施した。内訳は、RC床版部が約105,010㎡で鋼床版(1,250㎡)は今回殆どなく舗装のほか、伸縮装置取替え、照明柱点検、その他の付属工事、構造物点検も合わせて行った。リフレッシュ工事に係わるのべ人員は約4,200人に達した。

床版上面の劣化による舗装のポットホールが著しく増加
 要補修個所は2015年と19年で8倍も増加

 大高線北行きの1日平均交通量は、平日:約3.1~3.7万台/日、休日約2.7~3.3万台/日(H30年間平均)、大型混入率は14.2%(貨物+バス)となっている。高辻~大高間は1979年7月、大高~名古屋南JCT間は2003年3月にそれぞれ供用された。
 さらに、今回のリフレッシュ工事区間における、舗装の打替えや床版防水を伴う補修履歴は、2005年に高辻出口以北、06年に呼続出口~高辻出口区間、11年に名古屋南JCT~呼続出口間の舗装を基層から切削し、アスファルト塗膜系床版防水を敷設するリフレッシュ工事を行っている。
 こうした補修を行ったものの、2018年度以降、床版上面の劣化に起因する舗装のポットホールが著しく増加している。大高線は交通量が多く、また、ポットホール補修は騒音や振動を伴うため、施工時間に制約を受け、維持工事では第三者被害防止の観点からの応急対応しか実施できない。その応急対応箇所はブレーカーやチッパーを使うため、マイクロクラックによる再劣化が生じる場合もあり、劣化の増加傾向をさらに加速させてしまっている。さらに床版上面に対して恒久的な対策を行わない場合、床版上面から雨水などが浸入することで、せっかく現在行っている床版下面にアラミド繊維シートを張り付ける補強や補修も効果が持続せず、再劣化が生じる可能性がある。同公社が大高線上り線において、2015年度と19年度の補修個所数を比べると、実に8倍以上に増加していることが分かった。

 そのため、20年には、高辻出口以北と堀田入口~大58橋脚(堀田入口と高辻出口間の中間地点)間で現在の名高速の標準仕様である複合床版防水を施した上で、舗装を敷設している。
 そして今年度も複合床版防水を伴うリフレッシュ工事を行うことにしたものだ。

 大高線の今工事区間の設計上のRC床版厚は180~250mmと多岐にわたり、星崎入口近くの床版が特に薄く190mmとなっている。設計コンクリート強度は合成桁部分で35N/mm2、非合成桁で30N/mm2であるが、実際に小径コアを抜いて測定したところ、一部で21N/mm2まで強度が下がっている箇所も見られた。

『コンクリート床版上面の補修要領(案)』を2021年10月に作成
 マイクロクラックの抑制に主眼を置いた床版劣化部の撤去フロー

 RC床版部の舗装打ち替えは、過年度の対策状況や劣化度調査を踏まえて、呼続出口~高辻出口間は舗装を基層まで切削した上で複合床版防水工を行い、名古屋南JCT~呼続出口間は表層のみ切削オーバーレイして打替えることを基本とし、劣化部のみ基層まで打替えることにした。そのため舗装面積と比べ、床版防水まで行う面積は約21,600㎡、床版補修面積は1,087㎡となっている。

 施工はまず切削機で舗装を切削し、バックホウで舗装を撤去した後、ビーストなど乗用タイプの大型剥がし機を用いて、アスファルト舗装撤去後に残ったタックコートや接着防水層を除去した。その後、ショットブラスト(投射密度100g/㎡)で研掃した。次に目視および打音検査で損傷箇所を確認する。

 はつり以降は、2020年度以前のリニューアル工事と大きく様相が変わっている。現在の損傷状況に沿った新しい補修マニュアル(『コンクリート床版上面の補修要領(案)』2021年10月作成)を策定したためだ。新しいマニュアルでは、①マイクロクラックの抑制に主眼を置いた床版劣化部の撤去フロー、②撤去工具の規定(制限)、③WJの採用、④断面修復材料の規定について定められている。
 まず、増加している再劣化の主要因は、劣化部を撤去する際にマイクロクラックが生じる補修部界面の脆弱層の形成にある。これは本来マイクロクラックを生じせしめない、WJによる撤去することが望ましいが、時間的制約がある中では不可能なためパワーツールを併用せざるを得ない。マイクロクラックの発生を最小限にするため、電動ブレーカー(4.5kg以下)の使用を標準として衝撃力を弱め、エアーブレーカーも電動ブレーカーと同等以下の衝撃力となるようにベビーチッパーのみ使用を認めた。また、たたき点検によって、床版の浮きが確認されても、明確なひび割れやたたきによる浮き個所の振動が生じない場合は、無理にはつり取らないことにした。
断面修復材は、NEXCOや首都高速が採用している考え方を導入した。既設床版と静弾数係数が等しい(25N/㎟)低弾性材料の使用を規定した。現在のところ、ゴムラテモルタル(太平洋マテリアル)やリフレモルセット(住友大阪セメント)が使われている。


たたき点検および点検後のマーキング


人力はつり工法断面イメージ図

WJ対象は「たたき点検時に1㎡以上の異音が生じた箇所」 
 断面修復材は低弾性の補修材を用いて施工

 さて、以前のマニュアルとの最大の変化がWJの床版上面はつりへの導入である。マイクロクラックの抑制にWJの採用が最善であることは同公社も認識していた。しかし、通行止めや車線規制による時間的制約条件や水の漏出による安全性の懸念からWJの採用には二の足を踏んでいた。今回の工事では、施工対象と水養生対策を明確化することで、WJの採用を行うことにした。

 まずWJによる除去対象を「たたき点検時に1㎡以上の異音が生じた箇所」とした。WJの施工にははつり機本体のみでなく、超高圧水発生装置車、散水車、バキューム車が必要で、作業ヤードとして60mの延長を確保する必要がある。さらに施工箇所を大きく移動する場合は、機器の盛替えに1時間半程度必要と見込まれる。そのため、舗装のポットホールが頻発しており、床版の劣化が著しいと予測された箇所で配置し、施工している。
 同公社では車線規制時のWJの使用も想定して、WJの要求性能を定めた。施工で生じた水が、隣接車線に漏れ出すことがないことや、床版のひび割れを通じた床版下面からの漏水を防ぐため、使用した水を可能な限り同時回収できること、削孔深さの管理が可能であること、はつり時のガラが飛散しないこと、騒音が最小限に抑制できること、小規模補修へ対応可能であること――などだ。現場ではサーフェステクノロジーが開発したオートチッパーというWJが使われていた。オートチッパーははつり面を鋼製の枠で多い、ガラの飛散を防ぐとともにバキュームによりはつりと同時にガラや水を吸い込んでいく、また負圧装置を積んでおり、はつり空間に負圧を発生させることで、漏水を防止しており、本現場でも隣接車線の水の流出や床版下面への漏水は殆どなかった。移動装置はミニバックホウの駆動部を利用しており、機動性にも優れている。騒音も従来のブレーカーによるはつりに比べて10%程度(dB)低減している。

オートチッパーの構成および作業配置図

オートチッパーシステム概要図

WJ施工状況写真

 はつり機構は衝突噴流による減衰効果の原理を利用したWJを採用しており、脆弱化した床版でも水を貫通させることなく、脆弱部だけをはつり取ることができる。現場では水量60l/分、水圧240MPaで主鉄筋裏側まで70mm程度をはつるよう設定した。1時間に4~5㎡、1日で25㎡ほどはつり取ることができる性能を有している。オートチッパーは今回、1、2、4工区、で使用されている。また、3工区のWJはフタミ(同社とスギノマシンが共同開発したツインノズルを使用)が施工した。

 こうしたはつり作業後、腐食した鉄筋はさびを落とし、防錆剤を塗布し、鉄筋防錆を行った。

 断面修復材は新マニュアルに沿って低弾性の補修材を用いて施工する。

路肩コンクリートは静的破砕剤を用いて撤去
 複合床版防水工法はデッキコートとドーロガードを採用

 次いで複合床版防水工を行うが、名古屋高速道路は建設時に路肩部をコンクリートとすることを標準としており、これが防水工をはじめとして床版の長期耐久性に悪影響を与えている。本現場では、一部の路肩コンクリートで、規制前にカッターで路肩コンクリートに10mm幅の溝を2本作成し、規制開始後に静的破砕剤『太平洋ブライスター』を流し込む。1夜間でコンクリートにひび割れが生じ、その後はバックホウで軽く取ることができる。路肩コンクリートを除去した個所は、防水層を敷設することができるため、床版の長期耐久性を大幅に向上させることができる。最後に基層(密粒度As(13)改質Ⅲ型-W)40mm、表層(排水性舗装)40mmを舗設した。本現場では端部は立ち上げまで塗膜防水し、成形目地を設置し、防水を実施した。

路肩コンクリートに静的破砕剤を入れるための溝を入れる(左、中写真)/静的破砕剤による割れ状況①

静的破砕剤による割れ状況②/バックホウによる撤去/撤去ガラ

路肩コンクリート撤去状況/撤去箇所と非撤去箇所の違い


ショットブラスト施工状況(フタミが施工した)

 複合床版防水は、今回全体で約21,600㎡施工するが、そのうち9割弱にあたる約19,000㎡でデンカの「デッキコート複合防水工法」、約1割強の約2,600㎡で三菱ケミカルインフラテックの「ドーロガード工法」を使用している。いずれも、まず床版コンクリート上面及び地覆立ち上がり部までアクリル樹脂系の浸透材を塗布し、次いでその上にアスファルト加熱型塗膜系防水材を設置する工法だ。

複合床版防水工法(デッキコート)

複合床版防水工法(ドーロガード)

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